「ピュア・スポーツ」の名を欲しいままにした2代目RX-7FC3S。心地よいサウンド、扱い易いパワーと車両バランスを与えられたFC3Sは一般ユーザーから愛され、モータースポーツの世界でも大活躍を見せました。今回は「走る楽しさ」を教えてくれる2代目FC3S型RX-7をここに甦らせていきたいと思います。

Photo by Zach Zupancic

 

 

「Drivers, start your engines!」

©東所中華

 

RX-7のハイライトは、世界で唯一市販が実現されたロータリーエンジンの搭載といえるでしょう。

軽量でパワフルなロータリーエンジンを始動させると、ドライバーをやる気にさせてしまう車、それがRX-7。

 

 

そのRX-7シリーズの2代目となるFC3Sは、スポーツカーと呼ぶに相応しい内外装と性能を与えられ、1985年、世に放たれました。

スポーツカーが人気を誇った時代に登場したこのFC3Sは、瞬く間に大人気となり、人々を魅了したのです。

発売から30年以上が経ち、技術が進化した現代においてもその見た目と性能は引けを取っていません。

そんなFC3S型RX-7(以下FC3S)がどのような車なのか、紐解いていきましょう。

 

「理想的な運動性能」

 

©東所中華

 

FC3Sが持つ最大の武器は、限りなく50:50に近い重量配分といえます。

この理想的な重量配分が実現できたのは、軽量でコンパクトなロータリーエンジンを搭載していたからなのです。

レシプロエンジンの場合どうしてもエンジンの全長が長くなってしまうため、重量配分がフロント寄りになってしまいます。

しかし、エンジン本体がコンパクトなロータリーエンジンはエンジンの全長を抑え、エンジンルームの後方(フロント・ミッドシップ)に搭載することも可能であり、レシプロエンジン搭載車には不可能な搭載レイアウトを実現可能としたのです。

これにより車両の重量配分を限りなく50:50にすることが可能となったFC3Sは抜群の運動性能を誇り、当時最強のコーナリングマシンとして他車の追随を許しませんでした。

そして当時流行だったリトラクタブルライトを与えられたFC3Sは、ハッチバックテールだったこともあり最先端ともいえる流線型をしていましたが、ボディーサイズは特別なものとなっているわけではありません。

マツダ FC3S型 RX-7 ボディサイズ
全長×全幅×全高(mm):4335×1690×1270
ホイールベース(mm):2430

このように、当時の市販車としては平均並みのスペックを持っていました。

 

 

「4WS感覚」

 

©東所中華

 

ロータリーエンジンと新たに開発されたサスペンションを与えられ、数字だけでは語りきれない市販車となったFC3S。

そんなFC3Sを支えることとなった、新たなサスペンションにも注目してきたいと思います。

マツダ FC3S型 RX-7 サスペンションスペック

前:ストラット
後:セミトレーリングアーム マルチリンク

新たに開発された「FC」と名付けられたプラットホームは、独立懸架化されたリアサスペンションを採用。

セミトレーリングアーム・マルチリンクを採用したFCプラットホームは、セミトレーリングアームの欠点である操縦安定性の弱さを補うためハブ部分のリンクにブッシュを入れた「トーコントロールハブ」を与えられました。

このシステムにより走行時のトーをコントロールし、直線安定性とコーナリングの安定性を両立した足回りが完成したのです。

当時は前輪のみならずステアリング操作と連動して後輪も動く「4WS」というシステムが最先端の技術として流行しており、FC3Sもこのシステムを採用していました。

このシステムの採用によりコーナリング性能や小回りの性能は向上しましたが、ダイレクト感が失われるなどの弊害も。

そのため、スポーツ走行やサーキット走行に於いては不向きなシステムとなってしまい、このトーコントロールシステムをキャンセルするパーツも開発・販売されています。

このように、使用用途によりこのシステムの好き・嫌いは分かれるところですが、サスペンションの基本性能は抜群であり、FC3Sの運動性能に貢献していることは間違いないといえるでしょう。

 

最後の「サバンナ」

 

 

歴代のマツダ・スポーツカーの代名詞ともいえる「サバンナ」を名乗るのは、このFC3Sが最後となります。

その最後を名乗るに相応しい性能を誇ったFC3Sの心臓部は、いったいどのようなものだったのでしょうか。

 

前期型

1985年式 FC3S RX-7 GT-X スペック
エンジン型式・仕様:13B-T 水冷直列2ローター
排気量(cc):654×2
最大出力:185ps/6500rpm
最大トルク:25.0kg-m/3500rpm
トランスミッション:5MT or 4AT
新車時販売価格:約2,588,000円(5MT)

1985年、デビュー当初のFC3Sは先代のSA22型を上回る性能を見せ、0-100km/hを約7秒、最高速度はメーカーテストで238.5km/hを記録し周囲を驚かせました。

また、このハイパワーを受け止めるべく日本初採用となるアルミ製の対向4ポットキャリパーが採用され、ストッピングパワーも向上されたのです。

 

後期型

1989年式 FC3S RX-7 GT-X スペック
エンジン型式・仕様:13B-T 水冷直列2ローター
排気量(cc):654×2
最大出力:205ps/6500rpm
最大トルク:27.5kg-m/3500rpm
トランスミッション:5MT or 4AT
新車時販売価格:約2,471,000円(5MT)

前期型からの改良点としてサスペンションとタービンの見直しがされ、大幅なパワーアップが図られた後期型は、その改良に伴い空気流入のセンサーであるエアフロも見直されています。

また、インテリアとエクステリアも変更されており、見た目も時代に合わせた改良が成されました。

 

外装の相違

 

出典:http://zombdrive.com/mazda/1991/mazda-rx-7.html

 

前期型と後期型の大きな違いとして挙げられるのが、ストップランプの変更です。

横長だった前期型に対し後期型は4灯の丸型となっており、より近代的な見た目へと進化しています。

また、車体の横を飾っているモールも前期型では黒だったのに対し、後期型ではボディーと同色に。

好みが分かれる部分ではありますが、時代を物語っている変更ともいえるのではないでしょうか。

 

グレードの相違

 

出典:https://ja.wikipedia.org/

 

FC3Sは、用途に合わせたグレード設定が成されていました。

前期型のみに存在する廉価グレードとなる「GT」、ベーシックグレードとなる「GT-R」、ビスカス式LSDやアルミボンネットで武装した「GT-X」、サンルーフやオートクルーズなどを与えられたラグジュアリー仕様の「GT-Limited」、本革シートを与えられた最上級グレードとなる「GT-Limited・スペシャルエディション」という幅広いラインナップで人々の欲求を擽ったのです。

また、このFC3SではRX-7シリーズで唯一となるオープンモデルも存在しており、その人気に拍車を掛けました。

その「カブリオレ」と名付けられたFC3Cは、世界でも類を見ないロータリーエンジンを搭載した唯一のモデルでもあるのです。

 

無限大の可能性を秘めた∞

 

1991年式 FC3S RX-7 アンフィニ スペック
エンジン型式・仕様:13B-T 水冷直列2ローター
排気量(cc):654×2
最大出力:215ps/6500rpm
最大トルク:28.0kg-m/3500rpm
トランスミッション:5MT
新車時販売価格:約2,843,000円
ウイニングリミテッド 約2,298,000円

 

FC3Sのハイライトといっても過言ではないのが、∞(アンフィニ)と名付けられたモデルです。

この∞は乗車定員が最初から2名、そしてGT-Xよりパワーアップもされていて、よりスポーティーな仕様へと進化しました。

また、1991年のル・マン24時間レースでマツダが優勝したことに伴い「ウイニングリミテッド」と称された特別モデルも、1000台限定で登場。

この∞は、FC3Sにマツダが全精力を掛けたモデルと言え、まさに無限大(∞)の可能性を秘めた1台といえるでしょう。

 

ピュアスポーツの軌跡

 

 

FC3Sはその素性の良さが買われ、モータースポーツでも大活躍をしていました。

マイナーレースから世界的なレースまで、幅広いカテゴリーで活躍したFC3Sの軌跡を辿っていきたいと思います。

 

「ドリキン」の原点

 

 

JSS(ジャパン・スーパースポーツ・セダンレース)と呼ばれる富士グランチャンピオンレースの前座舞台で大活躍を見せたFC3S。

「ドリキン」の愛称で親しまれている土屋圭市氏も、このFC3SでJSSシリーズに参戦しており、パワーで勝るスカイラインを相手に激しいレースを展開していたのです。

土屋氏はこのJSSに於いて豪雨の中でも激しい走りを見せ、ドリフトしながら富士の100Rを駆け抜け優勝を飾ったことが「ドリフトキング(=ドリキン)」の愛称が定着するきかけともなりました。

 

全日本GT選手権

 

 

FC3Sは全日本GT選手権にも参戦していました。

GT2(現GT300 )クラスで強豪がひしめく中、善戦をしますが残念ながら勝利を挙げるには至らず、次期モデルとなるFD3Sへバトンタッチしていく流れとなったのです。

 

IMSA・GTOクラス

 

 

アメリカ版GT選手権ともいえるIMSAシリーズ。

FC3Sはこのシリーズにも参戦しており、目覚ましい活躍を見せていました。

1990年に同シリーズのGTO(現在のGT500クラス相当)に参戦を開始。

デビュー初年度にしてシリーズチャンピオンを獲得という快挙を成し遂げます。

そして、4ローターエンジンと超ワイドボディーで武装したIMSA・FC3Sは日本でも注目を集め、このワイドボディーを真似ねた車両も見受けられたといいます。

ピュアスポーツが目指した果ての姿が、このIMSA仕様なのかもしれません。

 

侍・FC

 

 

バランスの良さが売りであるFC3Sは、ドリフトにはやや不向きともいわれています。

しかし、ピーキーな挙動を見事に乗りこなし、現在でもFC3Sでドリフト大会に参戦し続けている選手がいるのです。

©Motorz

その選手とは「ドリフト侍」と呼ばれる今村隆弘選手。

まるで侍ブルーをイメージさせる青いFC3Sに乗って戦う今村選手は、まさに「ドリフト侍」なのかもしれません。

 

買うなら今!?FC3Sの中古市場

 

出典:http://theworldcars-tumuri.blogspot.jp/

 

販売開始から約30年が経過したFC3Sですが、当時人気だったこともあり、まだまだ現存する車両は多くあります。

しかし、経過年数を考えるとそろそろ状態の良い車両も少なくなってきているのが現実です。

また、アニメなどの影響もありグレードや色によっては値段の高騰も見られます。

そんな現在の中古市場は、どうなっているのでしょうか?

1988(S63)年式 GT-X         白 走行距離87000Km 950,000円

1989(H1)年式 アンフィニ  白 走行距離79000Km 2,500,000円

1990(H2)年式 カブリオレ  黒 走行距離41000Km 1,520,000円

1991(H3)年式 GT-R         赤 走行距離67000Km 1,590,000円

1991(H3)年式 GT-X         黒 走行距離26000Km 3,580,000円

※ノーマルに近い状態の車両で比較しています

チューニングなどの有無や状態、走行距離、人気などにより前期・後期やグレードに関わらず価格が大幅に変化しているようです。

ロータリーエンジンは日々のメンテナンスが重要であるため、整備記録簿や修理履歴などが明確な車両を選ぶのが正解かもしれません。

 

まとめ

 

©東所中華

 

FC3S型RX-7について振り返ってみましたが、いかがでしたか?

デビュー当時画期的だったFC3Sは、現在でもその輝きは衰えることなく走る楽しさを伝え続けています。

純粋に走りの性能だけを求めたFC3Sは、ピュアスポーツと呼ぶに相応しい存在といえるのではないでしょうか。

 

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