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R33スカイラインと言えばデビュー当初はボディの大型化からあまり人気がなく、GT-R以外はスポーツイメージを失ったとの評価を受けましたが、現在ではR32の国内中古車タマ数不足、ロングホイールベースによる安定した乗り味から、遅ればせながらFRスポーツとして再評価されつつあります。今回はそんな、あえてGT-Rを除いたR33スカイラインをご紹介します。

日産 R33 スカイラインクーペ(後期) / Photo by Slambox Media
バブル時代の傑作、R32にテコ入れ!したはずだったR33

日産 R33スカイラインセダン(前期) / Photo by FotoSleuth
バブル時代真っ只中の1989年に登場、それまでの基本的にはハイソカー路線で2代続けてカクカクした四角い印象のR30 / R31から一転、フロントに向かうほど絞り込まれてシャープながら、角を落としてスマートなデザインとなったR32スカイライン。
1990年代に世界一の技術を目指した日産の901運動が生んだ申し子というべき優れたハンドリングから、クーペ / セダンともにスポーティ路線としては絶大な支持を受けますが、その一方でトヨタのマークII3兄弟に対抗するには車内が狭すぎる、という指摘もありました。
当時の日産ではまだ複数の販売チャネルごとに別車種を販売しており、スカイラインも日産プリンス店でグロリアとプリメーラの中間にあるセダンとしての重要な役割があったのです。
これがトヨタであればスープラやソアラといった形で2ドアクーペを別車種にしていたところですが、当時の日産は1992年に2代目レパードを廃止してミドルクラス以上の2ドアクーペはスカイラインクーペとフェアレディZのみ。
双方とも(フェアレディZは当時のZ32のみ)プリンス店で販売していましたが、GT-Rの絡みもあって、スカイラインクーペを廃止するわけにもいきません。
そのため次期R33スカイライン開発初期にはプラットフォームを共用するローレルと同じホイールベースを持つ4ドアセダンと、ショートホイールベースの2ドアクーペで作り分ける予定でした。
これが実現していれば、引き続きスポーツイメージの強いスカイラインクーペと、そのイメージを引き継ぎながら後席の快適性も高いスカイラインセダンが誕生し、販売のテコ入れに成功して傑作が2代続いたかもしれません。
しかし開発末期にバブルが崩壊、急坂を転げ落ちるように日本経済が転落していく中でデビューせざるをえなかったR33スカイラインはコストダウンを迫られ、基本的に同一とはいえ、ホイールベースの異なるプラットフォームなど使い分けていられなくなったのです。
そのため1993年8月にデビューしたR33スカイラインはセダンこそ車内スペースが広くなる正常進化と言えたものの、クーペについては間延びして少々大きすぎ、重すぎという印象が強くなってしまいます。
そしてクーペのスポーツイメージ低下の煽りを受け、正常進化したはずのセダンまで人気が低調となってしまい、「典型的なモデルチェンジ失敗例」となってしまったのです。
もっとも、この時代の新型車のモデルチェンジは大なり小なり開発コスト削減の影響を受けており、スカイラインばかりが失敗となったわけではありません。
それでも進化していたからこそ、後年の再評価がある!

日産 R33スカイラインクーペ(前期) / Photo by Cook24v
デザイン面では酷評を受け、マイナーチェンジでは同じくモデルチェンジに失敗したS14同様、精悍さを取り戻すべく大きくイメージチェンジを図ったデザイン変更が行われました。
しかし、ただ「大きく重くなった」というだけでは、後年の再評価、それに伴うドリフト競技などでの復権はありえません。
R33の再評価でよく話題に上がるのは「ロングホイールベース化による直進安定性の向上」であり、実際ドリフトでも3ナンバーサイズ化によるワイドトレッドと併せて滑り出しからのコントロールのしやすさといった利点に繋がっています。
それだけではなく、日産独自の4WS機構であるHICASが、R32の油圧式SUPER HICASから応答時間を向上させた電動SUPER HICASへ進化。
クーペのトップグレードには電子制御アクティブLSDも採用され、熟成された上で継続採用された4輪マルチリンクサスと併せ、車重増加に関わらず走行性能はむしろ向上していたのです。
そしてエンジンはサイズアップによる3ナンバー化と車重増加に合わせ、先代の1.8リッター直4SOHCのCA18Iを搭載したGXiが廃止され、2リッター直6SOHCのRB20Eを搭載したGTSが廉価版に。
中核モデルは2.5リッター直6DOHCのRB25DE搭載GTS25系、GT-Rを除くトップモデルは同ターボのRB25DET搭載のGTS25t系となり、スポーツイメージから外れる動力性能のエンジンは廉価版を除き排除されました。
ビッグマイナーチェンジでのデザイン変更を除けば、ABSなど装備面の充実やNISMOなどのエアロを装着した特別仕様車の設定に留まり、RB25DETのパワーアップも次期型R34に持ち越されたとはいえ、チューニングベースとしての基盤は出来上がっていたのです。
R33スカイラインのモータースポーツ実績

JTCC仕様(1994) 日産 R33スカイラインGTS / 出典:https://www.drive2.ru/l/5064662/
レースには無縁に思えるR33スカイラインですが、1994年から2リッター以下のNA(自然吸気エンジン)、4座4ドア以上の車で戦われたJTCC(全日本ツーリングカー選手権)に、星野 薫選手のドライブにより近藤レーシングからR33スカイラインセダンGTSが出走しています。
本来はR32で出場予定だったのが、既に生産の終了していた車種へ新たにホモロゲーションを出せない(R32のホモロゲはBNR32、すなわちGT-R限定だった)と言われ、日産がR33で出したホモロゲによってR33で出場できた、という紆余屈折を経ての参戦でした。
しかし、JTCCの規則でFR車はFFより100kg重い上に、元より大柄なR33スカイラインセダンでは戦闘力が低かった為、1994年に3戦6ラウンド(JTCCは1日2レース制)のみ出場し、完走は最終戦のインターTEC(富士スピードウェイ)での2戦のみに留まりました。

日産 R33スカイラインクーペ(後期) / Photo by Andrew Smith
それ以降目立った活躍の無いR33スカイラインでしたが、ドリフトが盛んになると「高速安定性に優れたハイパワーFRスポーツ」としてC33ローレルやA31セフィーロともども再評価を受けてセダン / クーペともに復権し、現役時代よりよほど注目を集める存在になりました。
そして2010年代に入ってR32スカイラインが北米の25年ルール(北米で正規販売されていなかった車種は、生産から25年たつまで輸入して公道を走らせられない)解禁により日本国内から流出すると、そのタマ数不足を補うようにR33が「現役復帰」。
中古車市場では元々の不人気が幸いしてR32やR34より割安だったために、S14シルビア同様「入門から上級者まで」活躍できるマシンとして見直されています。
R33スカイライン(GT-R以外)の主要スペックと中古車相場

日産 R33 スカイラインクーペ(後期) / Photo by Paul Otlewski
日産 ECR33 スカイラインクーペ GTS25t タイプM アクティブLSD仕様 1993年式
全長×全幅×全高(mm):4,640×1,720×1,340
ホイールベース(mm):2,720
車両重量(kg):1,390
エンジン仕様・型式:RB25DET 水冷直列6気筒DOHC24バルブ ICターボ
総排気量(cc):2,498cc
最高出力:250ps/6,400rpm
最大トルク:30.0kgm/4,800rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FR
中古車相場:34万~158万円(各型含む)
まとめ
「現役当時の不人気車種が、後に再評価されて中古車でヒットし、ドリフトでも大活躍!」と聞くと、なんだか本放映当時に低視聴率に苦戦しながらも、再放送で大ヒットして映画化までされたアニメのようです(宇宙戦艦ヤマトやガンダムがそうでした)。
R33スカイラインはその典型的車種で、特にデビュー当時はデブだカッコ悪いと散々にこき下ろされ、GT-Rはともかくそれ以外は鈍重で嫌だと言われたものでした。
それが今や「数少ない直6FRスポーツのチューニングベース!」ともてはやされ、北米25年ルール解禁が来年に迫ったこともあってか、いつの間にやら中古車市場でもタマ数が急激に少なくなっています。
それでもR32やR34よりまだ安いので、現役当時のイメージはともかく今や抵抗は無い!という人ならば、お手頃価格のうちに購入を急いだほうがいいのかもしれません。
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