現在でこそ主要市場である北米向けにかなり大柄となっているスバル レガシィですが、かつては日本市場でも扱いやすいジャストサイズの5ナンバーボディでありながら品質や使い勝手、走行性能などあらゆる面でライバルを超越した小型プレミアム・セダン / ワゴンとして大人気でした。そのレガシィの5ナンバーサイズ最終モデルとなる3代目では、スポーツセダン『B4』の独立や新型ボクサー6エンジン搭載で、高品質なポルシェ監修モデル『ブリッツェン』にSTI高性能モデルS401と、盛り沢山な内容になっていたことは知っていますか?
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最後の5ナンバーボディ、3代目は初代からのレガシィらしさを残す最終モデル
『レガシィを極める』というコンセプトの元に開発された3代目レガシィは、国産車においてナンバープレートの数字やかつての税額の差以上に『日本の大抵の場所で使いやすいサイズ』の基準となる5ナンバーサイズを最後まで堅持したモデルであり、同時に日本市場の基準を意識した最後のモデルとも言えます。
また、現在では全幅1,800mmを超えた車が普通に走り回るようになっていますが、全幅1,695mm以内が国産車の標準という時代が長く続いたこともあり、日本では心理的にも物理的にも5ナンバー車が使いやすい局面が多いのは事実です。
そして、自動車税の差が無くなったことで3ナンバー車が増え、デザインの自由度や内装の豪華さを競う中で、5ナンバーサイズを続けた3代目レガシィは、その姿勢が潔いとも日本市場向けに頑張っているとも讃えられ、2代目に続く大ヒットとなりました。
そんな3代目レガシィが奮闘していたのはそれだけではなく、初代ではインプレッサWRXの登場までWRCでも活躍。
2代目でも設定されてはいたとはいえ、かなり影の薄かった4ドアセダンがスポーツセダン『レガシィB4』として独立して、スポーツ走行や競技向けのインプレッサWRXセダンやライバルのランサーエボリューションとは異なった5ナンバーサイズの小型高級GT的スポーツセダンを求めたユーザー層へ強烈にアピールします。
さらにはポルシェ・デザイン社が監修したエアロをまとい、専用色プレミアムレッドでは塗膜が1層多い高品質塗装を施した『BLITZEN(ブリッツェン)』をセダン / ワゴン双方に設定。
かつてアルシオーネ2.7VX(ER27)やその後継アルシオーネSVX(EG33)に搭載されたものとは異なる、新型6気筒ボクサーエンジン『EZ30』搭載モデルや、B4 RSKをベースにSTIが開発した純正チューンド『S401』を発売しました。
このように5ナンバーサイズボディという限られた枠内で、まさに『レガシィを極め切った』のが3代目だったのです。
3代目レガシィの基本的なラインナップと特徴
3代目レガシィの国内向け基本バリエーションは先代同様、4ドアセダン、5ドアステーションワゴン、5ドアSUV風ステーションワゴンの3種類(SUV風モデルは海外仕様だと4ドアセダンにも設定あり)。
また、先代まで設定のあったFF仕様や1.8リッターエンジンは廃止され、全車AWD(4WD)でエンジンはボクサー(水平対向)4気筒が2リッターNA(SOHC / DOHC)またはDOHCツインターボ、あるいは2.5リッターNA(DOHC)、そして6気筒3リッターNAの3種類。
サスペンションは先代までの4輪ストラットから、リアサスペンションはラゲッジへの張り出しが少なく、ステーションワゴンではラゲッジスペースが、セダンではトランクスペースが拡大できる上に剛性も高いマルチリンクへと変更されました。
以上を踏まえた上で、各バリエーションの概要は以下の通りです。
4ドアセダン『B4』
2L DOHC NA搭載のRSと2L DOHCツインターボのRSKからなる、純然たるスポーツセダン『レガシィB4』として再出発し、ツーリングワゴンと並ぶレガシィの2本柱へ。
2001年5月に2.5L DOHC NAのRS2.5、2002年1月に3L DOHC NAのRS30、2002年5月に廉価版の2L SOHCエンジン搭載のSが順次追加されました。
5ドアステーションワゴン『ツーリングワゴン』
初代でスマッシュヒット、2代目で大ヒットとなって国産ステーションワゴンの定番中の定番となった、レガシィの主力モデル。
エンジンラインナップはB4同様ですが、モデルチェンジした時から2L SOHC NAと2.5L DOHC NA搭載車が設定されており、B4と同時に3L DOHC NAのGT30が追加されました。
5ドアSUV風ツーリングワゴン『ランカスター』
先代同様、大径タイヤを履いて最低地上高を上げ、フェンダーアーチなどボディ別色の樹脂製パーツ追加によりSUV風としたモデルで、車高を1,550mmに抑えたことで日本の機械式立体駐車場にも対応しました。
当初2.5L DOHC NAエンジンのみでしたが、他モデルに先駆け2000年5月に3L DOHC NA搭載グレード、ランカスター6を追加しています。
アウトドア志向のSUVルック車という性格上、2リッターエンジン搭載モデルはありません。
3代目レガシィ、3つのサプライズ
デザインやサイズは2代目を踏襲しつつ、装備面やメカニズムを一新して魅力を高めた3代目ですが、その後のスバルを占うような3つのサプライズモデルがありました。
BLITZEN(ブリッツェン)
セダン / ワゴンともに設定された、ポルシェデザイン社監修によるオリジナルエアロを装着した限定車で、2000年2月、2000年1月、2002年3月、2003年1月の4回にわたって期間限定で発売されたほか、2002年8月にも6気筒版BLITZEN6を期間限定発売しました。
また、『ポルシェが監修』と表現されることもありますが、厳密にはポルシェ創業者フェリー・ポルシェの長男、ヴッツィー・ポルシェが創業した、自動車メーカーのポルシェAGとデザイン会社のポルシェデザインは別会社です。
前後バンパーなど専用内外装により一目でBLITZENとわかるシンプルながら強烈な印象を持つデザインで、BLITZEN専用色のプレミアムレッドは1層多い非常に高品質の塗装がなされ、これも通常のレガシィとは全く異なるプレミアム感を放つ異才のモデルでした。
S401 STI version
スバルのモータースポーツ部門STI(スバルテクニカインターナショナル)が開発し、2002年11月に発売された純正チューンド・レガシィがS401です。
初代インプレッサベースのS201に続く『S』モデルで、レガシィB4 RSKをベースに手作業でバランス取りされて組み直され、吸排気系やECUチューンも施されたエンジンは純正280馬力に対して296馬力を発揮。
6速MTやクイックステアなど専用部品が多数装着されています。
こちらは限定で400台で販売したところ、ベース車より170万円ほど高価(264.3万円に対し453万円)なこともあってか286台の生産に留まったと言われていますが、レガシィ初のSTIスペシャルモデルとなりました。
ランカスターADA
1999年9月にランカスターへ追加されたグレードで、東京モーターショー1991で初公開された、世界初のステレオ画像認識装置によるドライバー支援システム『ADA(Active Driving Assist)』を搭載。
フロントウィンドウ上部内側、ルームミラー左右に設置された2基のCCDカメラでステレオ(立体)画像を認識して車両前方状況を監視。
必要とあらば車線逸脱と車間距離警報を発します。
さらに車間距離制御機能を持ったクルーズコントロールがカーナビと連動し、カーブ進入速度超過時に警報を鳴らすとともに状況によっては自動でシフトダウンまで行う仕様。
ドライバーの意思によらずとも自動車側で自動介入するのはクルーズコントロールの車間調整とカーブでのシフトダウンくらいですが、これにブレーキやステアリング操作まで加わると、どこかで聞いたような機能ではないでしょうか。
そう、ADAとは現在のスバルが盛んに宣伝している安全運転支援機能『アイサイト』の原型となる仕組みなのです!
この当時はまだ純粋にスバル独自の技術でしたが、2004年に日立オートモーティブズと提携して共同開発を進め、2008年に最初の『アイサイト』が登場する原型が既に約10年前には登場していたという意味で、ランカスターADAは歴史的意義の深いモデルとなっています。
主要スペックと中古車相場
スバル BH5 レガシィツーリングワゴン GT-B 1998年式
全長×全幅×全高(mm):4,680×1,695×1,485
ホイールベース(mm):2,650
車両重量(kg):1,480
エンジン仕様・型式:EJ20 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ ICツインターボ
総排気量(cc):1,994
最高出力:280ps/6,500rpm
最大トルク:35.0kgm/5,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD
中古車相場:1万~288万円(B4 / ツーリングワゴン / ランカスター / S401各型含む)
まとめ
「気がつけば全幅1,800mm程度の車ならそのへんを普通に走っている。」という現実を理解していても、やはり日本では5ナンバーサイズが一番扱いやすい、そう感じている人にとっては最高の車であり、その最高到達点と言えるのが3代目レガシィです。
5ナンバーサイズのプレミアムカーが欲しいと思ってもなかなか存在しなかったり、内外装は立派そうに見えてもいざ乗ると期待外れという車もある中、レガシィは国産車で数少ない『本物の5ナンバープレミアム』でした。
その後のレガシィが海外市場、特に北米重視で大型化の一途を辿る事になるだけに、3代目レガシィの『ちょうどよいサイズで高品質』を懐かしむ人は、今でも多いかと思います。
現在の日本市場はSUVとミニバン、ハイト系ワゴン全盛ですが、今後の日本で小型セダンやステーションワゴンの復権があるとすれば、それは3代目レガシィを復刻したような車になるかもしれません。
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