軽スポーツのみならず小排気量スポーツにまで衝撃を与えた、初代アルトワークスのデビュー(1987年5月)でしたが、既にモデルチェンジを控えていた2代目アルトにとってはあくまでモデル末期の追加車種。ライバルと数々の激闘を繰り広げ、660cc旧規格時代前半まで活躍したのは、2代目アルトワークスでした。
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550cc時代末期から660cc時代前半へまたいで活躍した2代目アルトワークス
1988年9月にスズキ アルトは3代目にモデルチェンジし、派生車種のアルトワークスも2代目へと移行します。
結果的にわずか1年4か月ほどのみ生産・販売された初代アルトワークスは、軽自動車初のDOHC4バルブターボを搭載した衝撃的なマシンでしたが、デザイン上も通常のアルトから大きく変わり、そのイメージを確立したのは2代目でした。
また、3代目アルト / 2代目アルトワークスは1990年1月に旧規格軽自動車が14年ぶりに550ccから660ccへ排気量アップすると同時に全長0.1mの拡大が許される直前に発表されたため、前後バンパーを延長した程度のボディに660ccエンジンを搭載して対応。
これは、軽商用車に対する排ガス規制の強化で大排気量化が図られる一方、衝突安全基準の強化までは行われなかったため、軽乗用車にとっては『ほぼ同サイズで大幅な重量増加を伴わず、ハイパワーなエンジンを搭載可能』ということを意味しました。
しかし、そうはいっても既に64馬力の自主規制は存在したため、スポーツエンジンでも7kgf台だったトルクを8kgf台へ、さらに10kgf台へと向上していくことになりますが、このトルクアップでより車重が重い車両でも十分な動力性能を得られるようになります。
結果としてAZ-1 / キャラ、ビート、カプチーノといったオープンスポーツも成立していきますが、その中で快適性と走行性能を両立した軽ホットハッチの人気No.1の座を手にしたのが2代目アルトワークスでした。
「アルトワークスといえばこの顔」が成立、独立デザインの2代目
廉価グレードを除けばエアロパーツで武装したのみだった初代とは異なり、2代目アルトワークスの魅力であり大きな特徴となったのが、ベース車のアルトから独立デザインとなった内外装でした。
異形2灯式の平凡な、しかし誰にとっても受け入れやすいデザインのアルトとは異なり、アルトワークスは丸目2灯ヘッドライトにフォグランプを組みこんだバンパー、サイドステップやスポイラーつきリアハッチなど、独自のデザインを採用。
『WORKS』ロゴを持つ2トーンカラーも合わせてアルトとはかなり異なるイメージを持ち、基本的には同ボディでありながらも、アルトワークスが単なるアルトの1グレードではなく、独立車種であることをユーザーへ認識させたのです。
そして3代目までは細部を変えつつ踏襲されたことで、この丸目2灯ヘッドライトと2トーンカラーが「アルトワークスといえばこのデザイン」というイメージを確立させていきました。
また、DOHC4バルブICターボはF5AからF5Bへのマイナーチェンジ程度で大きな変更はありませんでしたが、新たにSOHC2バルブICターボ版F5B(61馬力)を搭載した廉価版のS/X(後にターボi・e.)グレードを設定。
660cc時代に入ってF6AとなってからもこのSOHC2バルブICターボ版は長らく継続され、一部ディーラーで限定販売されたNAモデル『ワークスi』とともに「高価な動力性能は必要無いものの、安価でカッコイイモデルが欲しい。」という需要に応え続けました。
一方、本格派軽ホットハッチを求めるユーザーに応じるDOHC4バルブICターボは、550ccのF5Bから660ccのF6Aへ変更するにあたり、最高出力64馬力は不変ながら最大トルクを7.8kgfから8.7kgfへと向上。
途中、1991年9月のマイナーチェンジで内外装が一部改良されていますが、整理すると2代目アルトワークスの型式は以下のようになります。
【2代目アルトワークス・型式の変化】
550cc時代:CL11V(FF) / CM11V(4WD)
660cc時代前期:CN21S(FF) / CP21S(4WD)
660cc時代後期:CR22S(FF) / CS22S(4WD) / CM22V(4WD “ワークスR”)
※DOHCのRS系とSOHCのS系、i・e.系での型式差異は無し。
※660cc時代はワークスRのみ商用登録(4ナンバー)で、他は乗用登録(5ナンバー)。
モータースポーツではワークスR投入までやや苦戦
内外装デザインをアルトから独立、動力性能も強化した2代目アルトワークスは、以下のように分かれました。
550cc時代のS系(FFのS/Xと4WDのS/R)、その途中から登場したターボi・e.系(FF / 4WDでグレード名に差は無し)およびターボi.eをベースにした快適装備強化の特別仕様車Fリミテッド、地域限定のNA版ワークスiが主に街乗り用。
そして660cc時代まで一貫したRS系(FFのRS/Xと4WDのRS/R)、およびミラX4Rに対抗して投入されたワークスRが主にスポーツ走行用として活躍し、RS系は引き続きワンメイクレース『スズキスポーツ アルトワークスカップ』(筑波サーキット)で走り続けます。
全日本ラリーでは550cc時代に1989年の第1戦から4WDモデルが投入され、次第に初代CC72Vから2代目CM11Vへ移行。
ライバルの旧型ダイハツ L71V ミラターボ4WDに対して優位を得て、660cc時代のCP21Sもクラスを引っ張るリーダーとなりました。
しかしダイハツがL210SミラX4を投入した1991年とその翌年は苦戦し、1992年6月にメーカーチューンド版ワークスRを投入。
新参のスバル ヴィヴィオRX-RAの登場に苦戦しつつも、1993年とその翌年は全日本ラリーAクラスでチャンピオンに輝きます。
また、ワークスRは1993年から全日本ダートトライアルA1クラスにも投入され、ここでも2年連続チャンピオンを獲得。
そんなワークスRの投入により、2代目アルトワークスはようやく『軽自動車最強のホットハッチ』の座を得たのです。
2代目アルトワークス主要スペックと中古車相場
【550cc時代】
スズキ CM11V アルトワークス RS/R 1988年式
全長×全幅×全高(mm):3,195×1,395×1,400
ホイールベース(mm):2,335
車両重量(kg):660
エンジン仕様・型式:F5B 水冷直列3気筒DOHC12バルブ ICターボ
総排気量(cc):547cc
最高出力:64ps/7,500rpm
最大トルク:7.8kgm/4,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD
中古車相場:58万~77万円(550cc時代各型のみ)
【660cc時代】
スズキ CS21S アルトワークス RS/R 1991年式
全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,400
ホイールベース(mm):2,335
車両重量(kg):700
エンジン仕様・型式:F6A 水冷直列3気筒DOHC12バルブ ICターボ
総排気量(cc):657cc
最高出力:64ps/6,500rpm
最大トルク:8.7kgm/4,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD
中古車相場:4.9万~55万円(前期・後期各型含む)
【660cc時代ワークスR】
スズキ CM22V アルトワークスR 1992年式
全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,400
ホイールベース(mm):2,335
車両重量(kg):680
エンジン仕様・型式:F6A 水冷直列3気筒DOHC12バルブ ICターボ
総排気量(cc):657cc
最高出力:64ps/6,500rpm
最大トルク:8.7kgm/4,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD
中古車相場:極めて希少(ワークスRのみ)
まとめ
動力性能のみならず、フロントマスクを中心に思い切った独立デザインで『実質的にアルトからの独立車種』として認知されるようになり、軽ターボ時代のホットハッチにおける代名詞的存在になった、2代目アルトワークス。
ミラ・アヴァンツァートやミニカ・ダンガンとともに「ベース車とは違うのだよ!」という個性や独自の世界観を構築していきましたが、ライバルの巻き返しもあり、モータースポーツの世界でトップの座を得るためにはワークスRの追加を待たねばなりませんでした。
しかし、4WDターボモデルのラリーやダートトライアルでの活躍や、FFモデルも含めたレースや走行会での活躍、さらにはストリートでの利便性からも多くの若者に愛されます。
そして同時に廉価版ターボi.e.グレードの登場で、安くてカッコイイモデルに乗りたいユーザーへも浸透していく事に!
その後、次代の3代目アルトワークスが新エンジンK6Aを搭載して最強モデルとなるも、F6Aをより好むユーザーにとっては、「この2代目こそ至高のアルトワークス!」と考える人も多いのでは無いでしょうか?
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