バブルも絶頂の1990年。三菱自動車が鳴り物入りで投入した三菱GTOのことを、Motorz読者の方ならきっとご存知でしょう。ポルシェ928並みのワイドなボディ、スーパーカー然としたルックス、280馬力、ツインターボ、そして4WD…これだけキラキラとしたスペックを持ち合わせながら、なぜかレースでは見かけず、おまけにスポーツカーとしての評価も不遇なものだったといえます。しかし、90年代の三菱のフラッグシップとして飽くなき進化を続けたという事実、そしてなぜか無性に思い出してしまう、気になる存在。今回はそんなGTOの魅力を、振り返ってみたいと思います。

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Mitsubishi_GTO#/media/File:1991_Mitsubishi_GTO_Twin_Turbo.png

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/

バブルの申し子・その名はGTO

1990年といえば、F1には日本の企業スポンサーが溢れ、何より国産各社がこぞってスーパースポーツを発表した、今振り返ればクルマを愛する人にとっての「春の時代」だったといえます。

トヨタはスープラ、マツダはアンフィニRX-7、ホンダはNSX、そして日産はスカイラインGT-R。

それぞれが全く異なるアプローチで、強烈なそれぞれのキャラクターを持ち合わせていました。

そんな中、三菱は4WDのギャランやパジェロなど、どちらかというとオフロードのイメージが強かったところがあります。

実際、三菱は4WDをブランドの主軸として捉え、ラインナップすべてを4WDにすることすら考えていたようです。

三菱の当時のフラッグシップといえば80年代を席巻したスタリオンGSRでしたが、名車とはいえ発売からは8年が経過しており、次世代へのバトンタッチが望まれていました。

そこで、世界に羽ばたく(主に北米市場向け)グランド・ツアラーとして野心を持って企画されたのが、往年のギャランGTOの復活とも言えるその名も”GTO”なのです。

 

GTO TWIN TURBO (1990)

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/三菱・GTO#/media/File:Mitsu-3000GTVR4.jpg

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/

1990年式 GTO TWIN TURBO(E-Z16A)のスペック

全長×全幅×全高(mm):4555×1840×1285
ホイールベース(mm):2470
車両重量(kg):1700
エンジン型式:6G72
エンジン仕様:V型6気筒DOHC24バルブICツインターボ
総排気量(cc):2972
最高出力:280ps/6000rpm
最大トルク:42.5kgm/2500rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:フルタイム4WD
中古相場価格:680,000〜1,330,000 円

基本プラットフォームは高級サルーンであるディアマンテがベースとなっており、意外なことにFFベースの4WDディメンションを持っているGTO。

故に3.0L V6DOHCユニットは横置きに搭載されています。

しかし侮るなかれ、ハイエンドモデルであるその名も”GTO Twin Turbo”は自主規制スレスレの280馬力を余裕で達成し、そればかりか最大トルクは日本車史上例のない42.5kgm /2500rpmという強烈なものでした。

出典:http://gtcarlot.com/data/Mitsubishi/3000GT/1997/3132120/Engine.html

出典:http://gtcarlot.com/

当時の三菱らしいスーパーカー然とした流麗かつ力強いフォルムは、GT-Rにはない”スーパースポーツ”としての分かりやすい風格も備わっており、その上打倒GT−Rの思惑が見え隠れするハイテクデバイスもこれでもかと装備している点も見逃せません。

まずは”アクティブエアロシステム”、高速走行時にリップスポイラーとリアスポイラーが可変し、マイナスリフトを実現。

更に、スポーツサウンドと街乗り用の小音量を排気ルートの切り替えにより2パターンに変化させる”アクティブ・エキゾースト・システム”。

これにより妥協のないスポーツサウンドが演出されています。

そしてなんといっても最大の武器は、4WDのトラクションを最大限に生かす電子制御アクティブサスペンション”ECS”、そして全輪操舵システム”4WS”を組み合わせた4輪フルアクティブ制御機構でしょう。

ここではGT-Rを引き合いに出しましたが、先にも述べた通り”北米市場向けグランド・ツアラー”として開発されているため、ビッグパワーを安全に、誰にでも楽しめるものとして提供することを目的に、これらのデバイスが盛り込まれているのです。

当時はそれに加え、これだけのスペックを持ちながら400万円を僅かに下回る「リースナブルな」価格にも注目が集まったようです。

忘れてはいけません、時代はバブルだったのです。

 

1991年に登場したGTO。スペックだけを見ると夢のあるような仕様でしたが、そこには大きな罠が。

次のページでは、GTOの問題点と、レーシングカーや歴代車両をご紹介します。