現在は2002年に英国で始まったNew MINIのワンメイクレース”ミニチャレンジ”の日本開催ディレクター!かつてはスーパーGTやスーパー耐久ドライバーも務め、英国ジムラッセルレーシングスクールの講師を務めた過去を持つレーシングドライバー”壷林 貴也”を知っていますか?

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壷林貴也:プロフィール

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生年月日 1971年6月5日
出身地 神奈川県
身 長 171cm
体 重 65kg
血液型 RH+O

主なレース戦歴

1992* FJ1600東北シリーズ
1994 英国ジムラッセルシリーズ チャンピオン
1994 英国FVJシリーズ 最高位3位
1995 F4筑波シリーズ シリーズ2位
1996 F4筑波シリーズ シリーズチャンピオン
1997 全日本F3選手権
2000 VWニュービートルカップ シリーズ2位
2003 VWルポカップ シリーズチャンピオン
2003 スーパー耐久シリーズ クラス1シリーズ4位
2004 VWルポカップ シリーズチャンピオン
2004 ワールドシリーズbyニッサン
2004 全日本GT選手権GT300
2005 SUPER GT GT300
2006 SUPER GT GT300
2007 SUPER GT GT300

引用:http://supergt.net/archive/classic/supergt.net/supergt/2009/09team/index_j111.htm?d1

現在は、雑誌の企画でアマチュアのレースに出場したり、今年から日本での開催が決まっているミニチャレンジのディレクターとして、新たなモータースポーツの発展に日々奮闘中の壷林選手。

現在頑張っている若手ドライバーに、自分が若手だった頃の悔しい思いをして欲しくない。若手ドライバー達に新たな道を作りたいと語ってくれた壷林選手は、どんな思いを経て現在に至るのでしょうか。

 

壷林貴也インタビュー

モータースポーツの世界へ

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ーーーレースを始めたきっかけは?

始めたきっかけは、親とか別にレースに興味があったわけじゃなくて・・・

免許を取ってからバイト先の先輩とかそのあたりが当時走り屋で、箱根に行ったり大垂水に行ったりとか、いわゆる峠に行ってたんですよ。

そもそも、そんなにモータースポーツに興味はなかったんですけど、当時F1ブームだったんですよね。

で、峠行って走ってると、車の差ってあるじゃないですか?その頃18とか19とかで、あいつが速いとかいうのが納得いかなくて。

元々僕は、サッカーとか野球とかやってて、だいたい全部クラスで1番ぐらいの、運動神経には自信があったんですよ。

サッカーでも小学校の時、神奈川の決勝とか、湘南の選抜に選ばれたりとスポーツにはすごく自信を持ってたんですけど、車は何か理不尽だなって。

峠で走ってて、速い車が速いに決まってるじゃん。パワーが違うし。それが何か悔しくて。

元々スポーツをやってたから負けず嫌いな気質があって・・・。

その時F1を見てると、いわゆるレギュレーションがあって、ある程度統一して競ってるじゃないですか?

それでレースやりたくなっちゃって。

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ーーーそのまま勢いでレースの世界に?

一応大学行く為に浪人はしてたんだけど、いろいろ調べていくとお金がすごくかかるし。

こんなことやってるんじゃなくて、お金作ってレースをやろうと。

親に内緒で勝手に予備校やめて、バイトして・・・。それから、「絶対レーサーになる」って親にも言って。

でも、うちはサラリーマン家庭なんで、裕福な訳じゃないので・・・。

「まあ、やるって言うなら最後までやってみろ。応援はするけど金銭的な応援はできないから。」と親が言ってくれて。

そうやって言ってくれたことで、絶対なってやるって決めたんですよ。

 

ーーー絶対レーサーになる。そう決めてまず最初にした事は?

まず、お金が必要なんで、18から19の1年間で500万ぐらい貯金したの。

親戚が運送屋をやってたんで、いろんなバイトはしたんだけど・・・走るために休みを取るのに、やっぱり親戚なので、取らしてもらったりするということで。

しかも運送屋だからFJを始めるのに、FJをそこに置かせてもらったり、運ぶのにトラックを貸してもらったりというのを考えると親戚のところで仕事をさせてもらって。

それでFJ1600を、確か当時100万円ぐらいで中古のを買って始めたんですよ。


モータースポーツの世界に興味があった訳ではなく、ルール無用の走り屋の世界から、スポーツとしてレギュレーションに沿った戦いを望み、レースの世界に足を踏み入れた壷林選手。経歴を見ると、FJを始め、スーパーGTやスーパー耐久などのドライバーを務めるなど、とんとん拍子に『レーサー』という夢を叶えたかに見えますが、その道はかなり険しいものだったのです。


 

ドライバーからオーガナイザーへ

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ーーーミニチャレンジのディレクターというのはどんな仕事ですか?

ミニチャレンジを日本で開催するにあたって、今ベースがGIOMICというBMW MINIのパーツを作って販売している会社がメインで活動しているのですが、代表の森下がレースで育った訳じゃないので、「レースをするから手伝ってほしい」と依頼されて、その手伝いをしています。

 

ーーーミニチャレンジの魅力はどんなところですか?

まず、イギリスで作ってる車ですけど、日本ではこういう車がそんなにないんです。

例えばワンメイクのスリックタイヤを履いた完全なレーシングカーで言うと、ポルシェのカレラカップとか、すごく高いじゃないですか。

手ごろにできるワンメイクだと、昔は三菱がやってたミラージュカップだとか、Hondaがやってたシビックのワンメイクとかあったんですけど・・・今は86とかあるけど、ナンバー付きでラジアルタイヤで本格的なレースカーではない。

ちゃんとしたレースカーで、シーケンシャルミッションを使ってる。だからノーマルじゃないんです。

完全に車の成り立ちとしては、GTカーとほとんど作りが一緒なんです。ただ、サイズとか小さかったり、エンジンのパワーが小さかったりするんですけど、作りそのものはGTクラス。

そんな作りにもかかわらず、車両価格が1000万以下で出来てるというところがすごい魅力ですね。

もしあの車を日本で全部作るとなると、おそらく1300万とかかかっちゃうと思うんですよ。パーツとかいろいろ考えると。それが1000万以下で販売できるところが、価格的にこの車の成り立ちからすると安い。

しかも、ちょうど今そういうワンメイクレースが存在しない。シビックもHondaがやめちゃったし、ちょうどその穴があるな~と思うんです。

いわゆるナンバー付きの86みたいなのが盛況ですけど、いわゆるそっからスリックタイヤを履くレーシングカーってなると、じゃあカレラカップ?ってなっちゃう。

一気に価格帯が上がっちゃうので、その中間がない。スリックタイヤでレースをするとなると、スーパー耐久になっちゃうんですよね。

いわゆるスプリントのレースっていうのがフォーミュラー以外だとカレラカップとかしかないので、ちょうどその中間のところがいま日本で開催されていないので、面白いだろうと。

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ーーーどんなドライバーに参加してほしいですか?

 

ありとあらゆるドライバーに参加して欲しいです。

もちろんプロのドライバーにも参加してもらいたいし、あとは、幅広い層ですよね。

これからレース始める人でもいいし。いきなりGTとかカレラカップというと敷居が高いと思うんですよ。

車すごい速いし、もちろんお金も高いし、ぶつけちゃったりエンジンを壊したりするとすぐに500万円とか飛んじゃうカテゴリーじゃないですか。

ミニチャレで使われる新型ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(John Cooper Works / JCW)は初心者でも扱えるパワーだし、車の動きが別に難しい訳じゃないし。だから初心者の人でも参加してもらいたい。

あとは、お金の問題ではなくて、ある程度年齢のいったシニアの方とかで、カレラカップとかフェラーリチャレンジとかレースカーに乗ってたけど、ちょっと速すぎて体力的にきつくなってきた60代70代の方とかにも参加してほしい。

そして、そのためにクラスを設けようと思っています。

例えばプロがいっぱい参加するようになればプロクラスを作って、あとはいわゆるジェントルマン、アマチュアの人たちのクラスも作って、もう1つ、シニアクラスというのも作って・・・。

まだ構想なんですけど、例えば60以上とか65歳以上とかいうクラスで、またシニアの方にも参加して競争してほしいと思ってます。


車でレースをするからには、本格的なレーシングカーでレースをして欲しい。そんな強いこだわりを見せると同時に、その為には、高性能だけど一般的なレーシングカーより安価に参戦できるミニチャレンジに力を入れて、その面白さを広めていきたいと語る壷林選手。そんな壷林選手には、ミニチャレを通して、もう1つ大きな目標がありました。


 

ミニチャレンジからその先へ

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ーーー今後の活動の展望は?

まずは、ミニチャレンジを日本で成功させたいですね。きちんとしたモータースポーツの文化っていうのを、海外で、イギリスでもレースをやっていて、日本とヨーロッパではやっぱり環境にまだちょっと差があるなって思ってるんですよね。

モータースポーツが日本ではまだ暴走族の集まりみたいな感覚がちょっとあるじゃないですか。

でも、ヨーロッパに行くとイギリス人でF1でチャンピオンを取るとサー(男性に対する敬称)の称号をもらえたりとか、ドライバーという立場が確立してるんですよ。

日本だとまだマイナースポーツで、趣味の延長みたいな感じじゃないですか。

スポーツ選手というと、サッカー野球、相撲。だから、もう少しドライバーの地位があがるような環境になっていってほしいなと思ってるんですよね。

イギリスにいるころからそう思っていて、向こうでの取り巻く環境がステータスがあったんですよね。

僕なんかイギリスで底辺のフォーミュラーで若い時に戦ってたんですけど、日本人じゃないですか。

サーキットって田舎にあるので、メカとスタッフとその田舎のホテルに泊まったりすると、「レースで来たんだろ?」って言われて、メカニックかドライバーかって聞かれる訳ですよ。

こんなところに日本人が来るのはレースぐらいだから。それでドライバーって言うと、じゃあサインくれって。その代わりビールおごるよって。俺お前が将来F1とか有名になったらおごってやったんだぞって自慢したいからおごってやるよって。

そういう環境なんですよね。日本だと、底辺のドライバーだと言っても「ふーん。で、何キロでんの?」みたいな感じじゃないですか。

だからもう少しドライバーの地位が上がるような、ミニチャレンジをやって、日本全体のモータースポーツが盛り上がれば地位も上がっていくと思うんで、そこに少しでもモータースポーツに携わった以上は貢献したいと思います。

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ーーーミニチャレンジ以外にはやりたい事はありますか?

コーチングとかも、日本は遅れてると思うんですよ。

どんなスポーツでもコーチがいるじゃないですか?それでコーチが変わると、例えば錦織選手みたいに、マイケル・チャン氏のコーチについたら強くなったりとか、コーチの力ってすごく強いんです。

でも、やっぱりモータースポーツのコーチってまだ定着してないんですよね。そういうのも広めていきたい。

そういう活動もやってたんですけど、中々認めてくれないというか、「たまたまドライバーが速かっただけでしょ?」とか言われちゃうんですよ。

あとは、いまだにメカニックが経験豊富で新しいドライバーが来ると、とりあえずこれで走っとけよみたいな。

「どのドライバーがこのマシンで何秒出したから、そこまで文句言うな」みたいな根性論がまだあるんですよね。

だけど機械を使うスポーツなんで、もっと理論的にしっかりと教えれば車のセットアップも進むし、ドライバーも変な方向にいかないし・・・。

そういうとこを引き続き俺もやっていきたいので。

それもミニチャレンジを通じて、ここに若い子が来てGT乗りたいなってなったら、GTドライバーになれるぐらいにキッチリ育てたりもしていきたいです。

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ーーー現在レーシングドライバーを目指している若手に伝えたいことはありますか?

やっぱりモータースポーツってどうしても、どんなスポーツよりもお金がかかってしまうので、その間口ってすごく狭いんですよ。現実的に。

だけど、そういう若手が夢を持てるような環境に、日本の自動車メーカーなどが今若手を育てる活動をしてるじゃないですか。

だから無責任だけど、頑張ればなんとかなるみたいな。何とかなんないんですけどね、ぶっちゃけね。

結構今は難しいとは思うので。

僕が始めた頃ってバブルだったんですよ。

バブルでFJのカテゴリーから上にステップアップをする時に、F3とかチームがスポンサーを持ってたんですよね。

いっぱいスポンサーを抱えてたんで、ちょっと速そうな子がいると引き上げてくれたんですよ。

お金が余ってたって言うか、チームにお金がいっぱいあったので・・・。

そういう若手がいたら引き抜いてくれたりとかをチームがやってくれたのが、今はそれがなかなか無い状況じゃないですか。

スポンサーがつかないので。

自動車メーカーとかが支援をしてあげないと・・・。例えば僕なんかはサラリーマン家庭なので、今やろうと思っても、例えば僕が今18歳で、これからやろうって言っても多分結構厳しい。

振るいにかけられる年が下がっちゃったってのもあるし、「カートもやってなかったの?」って多分言われちゃう。

自分が始めた時だって、カートもやってなかったのって言われてたし。

だから、若者が夢を持てるような環境に日本全体の車業界レース業界がなってほしいなと思いますね。

僕なんか夢があったから、やっぱりFJでなんとか頑張れば上のカテゴリーに乗れるかもしれないっていう夢があったんですよ。昔は。

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僕のちょっと上の人たちでFJやってた人たちは、「1000万円までは借金じゃねえよ!」って感じでみんな車で寝泊まりしたりして朝車で起きて、サーキットの水道で頭洗ったりとかって人たちがいっぱいいたんだけどね〜。そうやって節約したり働いたりしてお金作ってなんとかFJ頑張ろうとかあったんですけど、今はないもんな~。

F1を目指すドライバーってのはどうしてもそうやって限られてきちゃうので・・・。

でも例えばミニチャレンジを入り口にして、ミニチャレンジ自体が盛り上がって若手が頑張ってきて、そしたらそこにいるジェントルマンドライバーやシニアドライバーが、こいつちょっと育ててあげたいなって思わせるような環境ができたらすごくいいなと思うんですよ。

そしたら、そういう人たちって今までカレラカップとかGTとか乗ってた人たちがいて、そういうの見ててくれたら、チャンスはあるじゃないですか?チャンスは。

もしかしたら、気に入ってもらえたら、こいつGTドライバーにしてやろうぜ!ミニチャレンジからGTドライバーが出るかもしれないぜ!っていうそういう楽しみができてくれるとすごくうれしいな。

そういう事に当然僕も協力したい。

今まで中々それができなかったので・・・。

FJとかF4のドライバーを育てて、その次のステップに僕が引き上げてあげられなかったんですよ。

自分自身もスポンサーを取るのが苦手だってのもあるし、チャンピオン取っても次がなかったんです。

そういう環境を僕が作ってあげられていれば、例えばスポンサーを持てて、若い子がチャンピオンを取ったら次のステップに引き上げてあげるっていう環境があればもう少しよかったんですけど、チャンピオンを作って次がない、チャンピオンを作って次がない。そんな若手を見てるとちょっとやりきれなくなっちゃった部分があって。

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自分もそうだったんですけど、F4でチャンピオン取ったけどなにもなかった。もちろん営業してフォーミュラーニッポンにエントリーできたけど出れなくて、スポンサーがいないとステップアップできなくて・・・。

なんで俺全部予選ポール取って全部勝ったのにそれでチャンピオン取っても駄目だったっていう悔しい思いをしたので、それをまた自分が作り上げちゃってると思うと、できなくなっちゃって・・・。

僕はF4で完璧に開幕から全部ポールトゥウィンでチャンピオンを取ったんですよ。全勝で。だけど次に行けなかったっていう・・・。

まあ、そのあと色々縁があって、スーパー耐久、GTとか出れるようになったんですけど、その時に行きたかったなって。

F4でチャンピオンとってFポン乗って・・・って。そこでいけなかったのがすごい悔しくて。

他に営業しても「お金は?お金は?」って言われて、「速くてもね~お金が無いと今レースできないよ?」って感じで・・・それをまた僕が作り上げちゃって・・・そういうドライバーを。

ちょっといたたまれないというか、自分がそういうステップアップさせてあげられる環境を作るまではちょっと休もうかな?っていう感じになっちゃって。それであんまりやらなくなっちゃったの。

ただ、自分たちで完結してくれる人達はそれで満足してくれるから例えばカレラカップを教えたりとか、そういう趣味のレースとかは教えてたんですけど、その人たちってそれが趣味だからそこで完結してくれるから、「ありがとう!チャンピオン取れたよ!」みたいな。

だけど、チャンピオンとっても次が無いと逆に悔しくなっちゃうからここでチャンピオン取ったのにな~って。
それを今後ミニチャレンジをうまく活用しながらそういう環境を作っていきたいな~って。

だから、まあ待っててください。僕も頑張ります。

 

まとめ

現在の若手ドライバー、そしてレース業界を見ていると、自分の悔しかった思い出が蘇り、いたたまれなくなると語る壷林さん。

その姿から、壷林さんの優しさと、モータースポーツ業界への熱い想いが伝わってきます。

チャンピオンを獲ってもその先が無いという、レーサー界の厳しい現実。その、「夢」がないという事実を少しでも改善できるように、まずは、「ミニチャレ」という新たな挑戦を成功させて欲しいと思います。

 

ミニチャレンジジャパン公式サイト

 

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