直列6気筒エンジンを搭載したペリメーター式フレームの重厚なデザインの高級サルーン。それがかつてのトヨタ クラウンでしたが、いつしかモデルチェンジを繰り返すたびに『ユーザー層の若返り』を連呼するようになります。そしてクラウン自体にも大きな変革が行われ、全てを一新してゼロからの再出発を図ったのが12代目、通称『ゼロクラウン』でした。

 

12代目トヨタ クラウン アスリート / 出典:https://www.favcars.com/pictures-toyota-crown-athlete-s180-2005-08-186230-800×600.htm

 

かつての『いつかはクラウン』から『これからはクラウン』へ!

 

12代目トヨタ クラウン アスリート  / Photo by hans-johnson

 

トヨタが誇る伝統的な高級サルーン クラウンは、国産車全てのフラッグシップである『センチュリー』や、高級車ブランドのフラッグシップ『レクサスLS』とはまた異なる立場に立った、『トヨタブランドのフラッグシップサルーン』と言えます。

しかし1955年に初代トヨペット クラウンRS型がデビューした頃と21世紀では価値観が大きく異なり、その名前と重厚なデザインで発する威厳がユーザーの購買心を刺激するには、かなり物足りなくなっていました。

ましてやトヨタは1990年代後半に『セダンイノベーション』を掲げ、「ここらでもう一発セダンに踏ん張ってもらおう」という施策が大不発に終わったこともあり、クラウンのような鉄板・定番車も安穏としてはいられません。

そこで、さすがトヨタというべきか、国内販売シェアこそ落としたものの深刻な経営危機まで至らなかった余裕もあってか、2003年12月に発売した12代目クラウンは『ZERO CROWN~かつてゴールだったクルマが、いまスタートになる~』のキャッチコピーの元で再出発。

最後まで残った伝統のライバル、日産セドリック / グロリアも消え去る中、かつての伝統を全て投げ捨てて勝負に打って出たのです。

 

ロイヤル系も含めた全車スポーティ路線へ

 

12代目トヨタ クラウン アスリート  / Photo by Dmitriy

 

『ゼロクラウン』の所以は、ペリメーター式フレームからマークIIなどとプラットフォームを同じくするフルモノコックボディへの転換など段階的に進めてきた改革の集大成として、全車新しいV型6気筒エンジンを搭載した点に、まず求められました。

従来からの直列6気筒エンジンは、まだトヨタでも完全に廃止されたわけではなかったのですが(クラウンセダンの1G-FEを最後に消滅したのは2008年)、クラウンロイヤル系/アスリート系から思い切って廃止する事に。

とはいえ日本国内にもそのフィーリングを好む保守派ユーザーは多く、日産車のようにV6エンジン車を作りながら並行して直6エンジン搭載車を設定してユーザーを移行させきれないケースもありましたが、トヨタは前だけ向いていく決断をしたのです。

そしてV6エンジン化で生まれるスペースの余裕や衝突安全性能の向上、重量バランスの改善による走行性能の向上といったメリットを選択し、デザインそのものも重厚路線から軽快さを持つアスリート寄りのスポーティ路線へロイヤル系も統一。

4代目『クジラクラウン』の頃なら許されなかった変更も、21世紀ではもはや当たり前のように受け入れられ、かつての『いつかはクラウン』という価値観とは永久に決別しました。

エンジンが当初3リッターおよび2.5リッターのみだったので、先代で280馬力ターボエンジンも搭載したアスリート系にはやや迫力不足でしたが、2005年10月のマイナーチェンジで315馬力の3.5リッターエンジンをアスリートに与え、『ゼロクラウン』は完成を見たのです。

 

主なスペックと中古車相場

 

12代目トヨタ クラウン ロイヤルサルーンG  / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60005855/

 

トヨタ GRS182 クラウン ロイヤルサルーンG 2003年式

全長×全幅×全高(mm):4,840×1,780×1,470

ホイールベース(mm):2,850

車両重量(kg):1,610

エンジン仕様・型式:3GR-FSE 水冷V型6気筒DOHC24バルブ

総排気量(cc):2,994

最高出力:188kw(256ps)/6,200rpm

最大トルク:314N・m(32.0gm)/3,600rpm

トランスミッション:6AT

駆動方式:FR

中古車相場:1~288万円

 

まとめ

 

12代目トヨタ クラウン ロイヤルサルーン  ? 出典:https://www.favcars.com/toyota-crown-royal-s180-2005-08-photos-186225-800×600.htm

 

重厚感を残したデザインに強烈なパワーユニットを設定したのが『大迫力』だった先代とは異なり、12代目『ゼロクラウン』は過激過ぎた4代目や、軽すぎた9代目前期のデザインに近づきそうなギリギリの線で勝負してきました。

とすれば中途半端、あるいは凡庸一歩手前で保守路線一歩手前に後退しかけるところを、全体的に若々しくクリーンなイメージに収めてきたのは見事であり、後の13代目へのモデルチェンジで基本的には大きな変更を要しなかったほどです。

それでいて誰が見てもクラウンとわかるのも見事なところで、伝統の車名を思い切って捨て去ったり、あるいは車名こそ残ったものの全く違う車になってしまう事も無く、『クラウン』のままで再出発することができました。

もっとも、そのために以降のクラウンは毎回『クラウンらしさを保ちつついかに新しくしていくか』というプレッシャーと戦い続けることになりますが、その意味においては12代目クラウンは『ゼロ』になりきらなかったからこそ、素晴らしいのかもしれません。

 

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