パトカーや消防車に代表される緊急車両は、道路交通法で定められている交通法規を無視して走ることができる唯一の車両です。しかしいくら交通法規を無視して走れるとはいえ、何でもできるというわけではありません。

掲載日:2020/03/15

埼玉県警のパトカー/出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8A%E6%80%A5%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A

緊急車両とは

交通機動隊のパトカー。フロントウインド右下のプレートに『八交機7』と書かれている。/ Photo by Ypy31

「緊急車両」は、災害対応や人命救助などの緊急業務に使われる車のことです。

道路交通法第39条では、緊急車両について次のように定義されています。

第三十九条 緊急自動車(消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう。以下同じ。)

出典:e-Gov 道路交通法

緊急車両の特徴は、サイレンや赤色警光灯を備えていることにありますが、それらについても道路交通法第39条および、道路交通法施行令第14条で以下のように定められています。

第十四条 前条第一項に規定する自動車は、緊急の用務のため運転するときは、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定(道路運送車両法の規定が適用されない自衛隊用自動車については、自衛隊法第百十四条第二項の規定による防衛大臣の定め。以下「車両の保安基準に関する規定」という。)により設けられるサイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけなければならない。

出典:e-Gov 道路交通法施行令

この道路交通法の第39条、および同施行令第14条の記述では、緊急車両に該当するのは“サイレンを鳴らしながら赤色警光灯をつけて、走行中の車両”ということになります。

つまり、“サイレンを鳴らさず、赤色警光灯をつけていない車両”は、法令上の緊急車両には当てはまらないのです。

ただし、警察車両が法定速度超過車両を取り締まる場合はこの限りではなく、特に必要があると認められる場合はサイレン(赤色警光灯は除く)を鳴らさなくてもよいとされています。

ただし、警察用自動車が法第二十二条の規定に違反する車両又は路面電車(以下「車両等」という。)を取り締まる場合において、特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らすことを要しない。

出典:e-Gov 道路交通法施行令 第十四条

緊急車両は任務を遂行するために、法令上の特例が適用される場合もあるのです。

緊急車両の特例規定

陸上自衛隊・化学防護車/出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8A%E6%80%A5%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A

緊急車両は急を要する業務に従事することから、法令上、数多くの特例が設けられています。

それは、限定的な場合にのみ右側通行を行えることや、赤信号や停止線の無視、横断歩道接近時の減速無視などです。

第十七条第五項に規定する場合のほか、追越しをするためその他やむを得ない必要があるときは、同条第四項の規定にかかわらず、道路の右側部分にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。
2 緊急自動車は、法令の規定により停止しなければならない場合においても、停止することを要しない。この場合においては、他の交通に注意して徐行しなければならない。
(緊急自動車の優先)
ほかにもシートベルト着用義務や、歩行者のそばを通るときの徐行義務、安全間隔維持の義務が免除されます。

緊急車両の速度制限

出典:写真AC

緊急車両にも、緊急走行時の速度制限がないわけではありません。

たとえば違反車両を捕まえるという名目で、パトカーが高速道路を300km/hで走行した場合は違反です。

緊急走行時の速度制限は一般道が80km/h、高速道路が100km/hとなっており、この速度を超過した場合は緊急車両でも速度超過で検挙されることになります。

まとめ

パトカーや消防車などは、“サイレンを鳴らして赤色警光灯も点けた状態”だからこそ、法令上の緊急車両として扱われます。

そしてその緊急走行時であっても、速度制限は存在しており、これを無視するとパトカーでも法定速度違反になります。

もしサイレンや赤色警光灯をつけずに猛スピードで走るパトカーがいたら、それは法律違反です。

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