トールワゴンの売れ筋は、軽乗用車では後席両側スライドドアを持つハイルーフのスーパーハイトワゴンに移行したものの、コンパクトカーではなかなかその動きが見られませんでした。しかしスズキが2010年に両側スライドドアを持つコンパクト・スーパーハイトワゴンの3代目ソリオを発売するや当然のごとくヒット作へ。トヨタグループも6年遅れでダイハツ トールを中心としたトール4兄弟を投入して市場を奪還しました。そんな4兄弟のトヨタブランド車2台がタンクとルーミーです。

 

トヨタ タンクカスタム / ©1995-2019 TOYOTA MOTOR CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

ソリオからコンパクトトールワゴン市場を奪回したタンク/ルーミー

 

トヨタ ルーミーカスタム  / ©1995-2019 TOYOTA MOTOR CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

 

1993年に発売されるや大ヒットとなった初代スズキ ワゴンR以降、軽乗用車の売れ筋はトールワゴンへと急速に移行していき、やがてその波はコンパクトカーへも到達。

各社からベーシックカーをベースとした、1~1.5リッタークラスのトールワゴンが発売されました。

しかし2003年に初代ダイハツ タントが発売され、軽トールワゴンよりハイルーフのスーパーハイトワゴン、それも後席両側スライドドアつきが売れ筋へと軽乗用車は変わっていきましたが、コンパクトカーではなかなかそこまで踏み切れません。

それは『軽乗用車のフラッグシップモデル』的な軽スーパーハイトワゴンに対し、『登録車の低価格モデル』にすぎないコンパクトカーではコスト的に引き合わなかったからかもしれませんが、2010年にようやくスズキが3代目ソリオを発売。

当時のスイフトなど国際戦略車として通用するプレミアム・コンパクトカー路線にあったスズキらしく、単なる軽スーパーハイトワゴンの拡大版にとどまらなかった3代目ソリオはヒット作となりますが、市場があると読んだトヨタグループも追随します。

そして同グループで軽自動車や低価格コンパクトカーを得意とするダイハツにより、ブーン(トヨタ名はパッソ)をベースに後席両側スライドドアを持つコンパクト  スーパーハイトワゴンを開発。

2016年11月9日に本家『ダイハツ トール』および、OEM供給を受けたトヨタ版『タンク』および『ルーミー』を一斉発売し、スバルへのOEM供給版『ジャスティ』も11月21日に発売してソリオ包囲網を形成します。

おおむね145~200万円程度の価格帯はソリオもトール4兄弟も共通でしたが、販売力の差もあってトヨタ版タンク/ルーミーは月販台数でソリオを上回り、小型車の拡販へ再び力を入れ始めていたダイハツのトールとともに、同ジャンルの制圧に成功しました。

 

トヨペット店/ネッツ店向け『タンク』と、トヨタ店/カローラ店向けの『ルーミー』

 

トヨタ タンク 出典:https://toyota.jp/tank/grade/g_t/?padid=ag341_from_tank_grade_gt_detail_thumb

 

トール4兄弟の中でもタンク/ルーミーはレクサス店を除くトヨタ系全チャンネルで取り扱っており、タンクはトヨペット店とネッツ店で、ルーミーはトヨタ店とカローラ店で販売されています。

これにより、ヴィッツを販売しているネッツ店、パッソを販売しているカローラ店を除き、トヨタ店とトヨペット店ではそれぞれ最廉価のエントリーモデルとしての役割も担う事となりました。

デザインは『タンク』が『ダイハツ トール通常版』、『ルーミー』が『ダイハツ トールカスタム』をベースとしています。

また、それぞれ『タンク通常版』はトール通常版と、『ルーミーカスタム』はトールカスタムとほぼ同一デザインで、『タンクカスタム』はトール通常版にメッキ加飾、『ルーミー通常版』はトールカスタムからメッキ加飾を省略した外観です。

そして1リッター直列3気筒DOHC自然吸気の1KR-FEエンジンをベーシックモデルとして、ターボエンジン版の1KR-VETを搭載した上級グレードを設定。

1KR-VETは2019年1月現在トール4兄弟の専用エンジンとなっていますが、高出力をねらうというよりトルク増強型のダウンサイジングターボエンジンで、いずれもCVTとの組み合わせ。

ライバルのソリオがマイルドハイブリッドやフルハイブリッドといった『飛び道具』を持っているのに対し、単純に普通の自然吸気エンジンとターボエンジンのみという、開発元のダイハツらしいオーソドックスな作りで、排気量1リッター未満で自動車税の安さが魅力。

2018年11月には4兄弟全て予防安全パッケージが単眼カメラ+レーザーレーダー式の『SAII(スマートアシストII)』から、ステレオカメラ式の『SAIII(スマートアシストIII)』へ更新されています。

 

主なスペックと中古車相場

 

トヨタ ルーミー  / ©1995-2019 TOYOTA MOTOR CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

 

トヨタ M900A ルーミー G-T 2018年式

 

全長×全幅×全高(mm):3,700×1,670×1,735

ホイールベース(mm):2,490

車両重量(kg):1,100

エンジン仕様・型式:1KR-VET 水冷直列3気筒DOHC12バルブ ICターボ

総排気量(cc):996

最高出力:72kw(98ps)/6,000rpm

最大トルク:140N・m(14.3kgm)/4,400rpm

トランスミッション:CVT

駆動方式:FF

中古車相場:73万~220万円(タンク/ルーミー双方)

 

まとめ

 

トヨタ タンク/タンクカスタム  / ©1995-2019 TOYOTA MOTOR CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

 

2018年1~11月に平均月販台数がタンク約6,200台、ルーミー約7,300台。

加えて本家ダイハツ トールも約2,100台を販売しており、月販目標500台とささやかな販売規模に留まるスバル ジャスティを除いても、兄弟合わせて毎月平均15,600台を販売。

対してコンパクト スーパーハイトワゴン市場を切り開いた先駆車、スズキ ソリオは堅実ながら約3,700台に留まる事から、この市場はすっかりトヨタグループが制圧しています。

とはいえ元々ソリオの販売規模はそう大きくなかったので、単純にトール4兄弟がソリオの市場をちょっとつまんだ以外は、他のコンパクトカーや軽乗用車の市場を奪う形で拡販したと言えるのかもしれません。

軽自動車にせよコンパクトカーにせよミニバンにせよ、走りを重視するモデルとSUV以外はハイルーフで広々としているか、よほどコストパフォーマンスが高いと思わせるハイブリッドシステムでも搭載しなければ売れない時代はまだまだ続きそうです。

 

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