偉大なるカーデザイナー ゴードン・マレーが率いる『ゴードン マレー オートモーティブ』は、新型スーパーカー『T.50』のデザインを発表。しかも、F1チーム レーシングポイントと提携し、開発は2社の合作として送り出されます。そんなゴードン・マレーT.50についてご紹介します。
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名門ゴードン・マレーがスーパーカー『T.50』を発表
ゴードン マレー オートモーティブ(GMA)は、2019年12月10日に自社第一号のスーパーカーとなる、『T.50』のデザインを公開しました。
ゴードン・マレー氏は現在F1に参戦している『レーシングポイント フォーミュラー1』と提携し、空力性能とエアロダイナミクスの開発テストを行い、F1テクノロジーが詰まったスーパーカーを世に送り出します。
ゴードン・マレー氏は、かつて歴史的なスーパーカーであるマクラーレン F1を開発した人物でもあり、T.50はF1の第2世代的なモデルになる見込み。
シートもF1同様にセンターに運転席、その後方に2座席の3シートレイアウトが採用されています。
ゴードン・マレーとは
ゴードン・マレー氏は南アフリカ出身の自動車デザイナーで、2007年7月に自身のコンサルティング会社『ゴードン・マレー デザイン』を設立しました。
その後、多くのフォーミュラーマシンとロードカーの開発に携わり、数々の名車を生み出しています。
F1での業績
マレー氏はナタール工科大学(現:ダーバン工科大学)を卒業後、イギリスのブラバムに就職。
ブラバムの新オーナーに、後のF1グループ CEOとなるバーニー・エクレストン氏が就任すると同時にチーフデザイナーに任命されました。
そこからF1マシンの開発に着手し、斬新なマシンを次々と生み出します。
そして1981年にフィラスポーツ・ブラバム・BMWチームから出場したネルソン・ピケ氏は、マレー氏の開発したマシンでドライバーズチャンピオンを獲得。2年後の1983年にもシリーズタイトルを手にします。
1986年にマクラーレンへ移籍したマレー氏は、アイルトン・セナ氏とアラン・プロスト氏が乗っていた『MP4/4』の設計・開発に携わり、1988年にグランプリ全16戦中15勝の圧倒的な速さを見せ、セナ氏をドライバーズチャンピオン、マクラーレン・ホンダのコンストラクターズ・チャンピオンへと導きました。
ゴードン・マレーの作品
マレー氏は、フォーミュラーカーの開発後にマクラーレン・カーズへ移籍し、ロードカーの設計に回ります。
その時に開発したのが、マクラーレン・F1とメルセデスベンツSLRマクラーレンでした。
そして、ゴードン・マレー デザインを立ち上げてからは、1リッターのバイク用エンジンを搭載した1960年代のグランプリマシンをモチーフに設計した『ロケット』、コンパクトな車体のプロトタイプシティカー『T.25』、イギリスの自動車メーカー『カパロ(Caparo)』が製造したスポーツカー『カロパ・T1』の開発に携わり、日本メーカーではヤマハ『MOTIV』、東レの開発した電気自動車『TEEWAVE AR1』の開発に参加しています。
目を引く直径400mmのファン!驚異のエアロダイナミクス
T.50で一番目印象的なのは、車体後部に装備された直系400mmのファンです。
これは、マレー氏がブラバム時代に設計し、1978年にF1へ投入した『BT46B』のアイディアで、このマシンは通称『ファンカー』と呼ばれます。
そんなBT46BのファンをT.50にも採用し、大型ファンを回転させることにより、アンダーフロアの空気を強制的に車体後部へ吸い出し、強力なダウンフォースを獲得。
ファンは、可変式の車体下部ダクトとリアウィングにより6種類のエアロモードが選択可能で、ドライバーの操作と車速によって、ウィング、ファン、アンダーボディディフューザーを最適化させます。
また、ブレーキモードに切り替わり、ブレーキング時にファンが高速回転になると、ダウンフォースは2倍となりブレーキの制動距離を短縮。
ほかのエアロモードでも、それに沿ったダウンフォースに調整し、走行時のスタビリティーを高める設定がなされています。
しかし、まだこれは試作段階であるため、T.50の空力テストはまだまだ続けられており、レーシングポイントと提携したことでレーシングポイント本社ファクトリーにある風洞実験施設が利用可能になりました。
これにより、2020年初頭からは風洞施設で40%スケールの模型を使った物理的な試験を開始します。
F1マシンにおいて経験豊富なレーシングポイントのエンジニアが開発に携わることで、マレー氏が発明したファンと、現代のF1テクノロジーがT.50で上手く融合していくことでしょう。
コスワーズ製V12エンジン搭載にVmaxモードを装備
T.50のパワートレインは、コスワーズ製3.9リッターV型12気筒NA(自然吸気)エンジンとISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と呼ばれる48Vスタータージェネレーターを組み合わせたマイルドハイブリッド機構です。
ドライビングモードで設定された『Vmaxモード』では、ISGを作動させ最大3分間の追加ブーストを発動。
その間は約30馬力のパワーが上乗せされます。
これに、トランスミッションは英国Xtrax製の6速MTが組み合わされ、今ではスーパーカーには珍しいHパターンとなっています。
しかも、デュアルクラッチをあえて採用しないため、クラッチペダル付きのMTになるかもしれません。
フレームは独自開発のカーボンファイバー製モノコックを採用し、ほぼすべてのボディパネルもカーボン製。
また、ブレーキもカーボンセラミックが採用され、車両重量は980kgと他のスーパーカーより圧倒的に軽く、エンジンは650馬力を発揮するため、パワーウェイトレシオは驚愕の1.5を達成します。
スペック
GORDON MURRAY T.50 | ||
---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 4,329×1,850×1,152 | |
ホイールベース(mm) | 2,700 | |
車両重量(kg) | 980 | |
エンジン | 65°V型12気筒DOHC36バルブ | |
排気量(cc) | 3,994 | |
最高出力(hp) | 650 | |
最大トルク(Nm) | 450 | |
最大回転数(rpm) | 12,100 | |
トランスミッション | 6速MT | |
サスペンション | 前 | アンチロールバー付きダブルウィッシュボーン |
後 | ダブルウィッシュボーン |
発売時期と価格は
ゴードン・マレー・オートモーティブは2020年の第1四半期に、カスタマーセンターを開設する予定です。
同時に新しい本社と製造施設も併設され、ここでT.50を生産する予定。
2020年5月には完成版のT.50を発表し、顧客には2022年1月に納車する見通しとなっています。
価格は、200万ポンド(日本円で約2億7500万円)以上で、限定100台のみ納車する計画です。
まとめ
40年以上も前のF1テクノロジーがマレー氏とレーシングポイントにより蘇ることは、誰も想像できなかった夢のような話です。
過去に一世を風靡したF1マシンの技術が今となって現行車に採用されるのは、これまでのスーパーカーではあまりありません。
これは、コレクターやF1好きにとって非常に興味深い1台ですが、手にできるのは2億7,500万円以上を用意できる100人のみ。
はたしで、誰の手に渡るのでしょうか。
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