イタリアンバイクメーカー・ドゥカティが新型モデル『パニガーレV4』。パニガーレといえば、V型2気筒1,285ccエンジンを搭載した1299パニガーレをラインナップしていますが、最新モデルは『ファイナルエディション』となり、2018年11月末に最後の1台が出荷されました。そんな1299に代わるであろうパニガーレV4は、その名の通り、V型4気筒エンジンを搭載したモデル。MotoGPマシンの技術を惜しげも無く搭載し、214馬力も発揮するモンスターマシン!その正体は!?
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263万円で購入できるデスモセディチ!?ドゥカティがパニガーレV4を発売
ドゥカティの新型スポーツバイク『パニガーレ V4(PANIGALE V4)』。
ドゥカティといえばL型2気筒エンジンのイメージが強いと思いますが、今回はV型4気筒しています。
さらに、排気量は1,103ccでスーパーバイク世界選手権のレギュレーションには沿わない大排気量。
ちなみに、現在のスーパーバイク世界選手権のレギュレーションでは、排気量が4気筒で1,000ccまで、2気筒で1,200ccまでとなっています。
また、今回のパニガーレV4は、ドゥカティのMotoGPマシン・デスモセディチ(Desmosedici)をかなり意識した作りになっており、いたるところにMotoGP™で培われた技術が盛り込まれている事が最大の特徴。
過去に、ドゥカティは公道走行可能な『デスモセディチRR』を発売した経緯がありますが、その時とはターゲットが全く違い、しかも263万円から購入可能。
デスモセディチRRが825万円の限定発売だったため、それに比べれば現実味のある価格設定で、しかもパニガーレV4は国産2輪メーカーが驚愕するような機能と性能をもったバイクとなっているのです。
カウルにデュアル・レイヤーを採用したパニガーレV4の外装は?
カウルのデザインには『デュアル・レイヤー』と呼ばれる手法を採用。
それはインナーカウルとメインカウルを組み合わせて、インナーカウルはエンジンやフレームを覆うように配置されている事が特徴で、一見通常のカウルより重くて幅をとってしまうかのように思えますが、デュアル・レイヤーはカウルをギリギリまで内側にはわすことができ、一体成型のカウルより幅を狭くすることに成功しています。
エンジンもフレームの一部!
ドゥカティのMotoGPマシンやスーパースポーツバイクは、フレームを一つの骨格とせず、エンジンとフレームを繋ぎ合わせたユニットをフレームと同じ役割を果たすものとしており、フレームと呼ばれる部分は極端に小さくなっています。
そして、パニガーレV4のフレームにはピボットがなく、スイングアームはクランク後方に取り付けられており、リアサスペンションもエンジンにマウント。
これは、車体の軽量コンパクト化とマスの集中化にも貢献し、パニガーレ1299やMotoGPマシンでも共通です。
次に、スイングアームの長さはパニガーレ1299より約70mm延長された600mmになっており、コーナリング時のスタビリティを向上させています。
とはいえ、スイングアームを長くするのは近年のスーパースポーツバイクのトレンドですが、その分ホイールベースが長くなってしまうのがネックでした。
しかし、パニガーレV4のホイールベースはパニガーレより32mm長い1,469mmと最小限に抑えられており、スイングアームをクランクケース後方に結合させたことが、これを実現。
そんな設計で車体剛性は大丈夫なのかと不安になりますが、それは既にMotoGP™やSBKの活躍で実証されています。
パワーウェイトレシオ0.91を現実にさせた214馬力のエンジン
パニガーレV4のエンジンは『デスモセディチストラダーレ』と名付けられ、シリンダー挟み角が90°となっている事やセミドライサンプ潤滑システムを採用しているのもMotoGPマシンと同じです。
今までは『L型』としておなじみでしたが、今回はそれより45°後方に傾けてあえてV型と表現し、今までのドゥカティのスーパースポーツバイクから一線を画すイメージを感じさせます。
そして、最高出力は驚異の214馬力。
装備重量わずか195kgの車体であるため、パワーウェイトレシオは0.91kg/ps!まさに、モンスターバイクと言えるのではないでしょうか。
逆回転クランクシャフトによりクイックなハンドリング
エンジンはMotoGPマシンと共通点が非常に多くなっています。
まず、パニガーレV4のクランクにはウンター・ローテーティング・クランクシャフトと呼ばれる逆回転クランクシャフトを採用。
MotoGPマシンもKTMを除いては、ウンター・ローテーティング・クランクシャフトが採用されており、タイヤと逆方向にクランクシャフトが回転しています。
なぜなら、クランクシャフトがタイヤと同じ向きに回転すれば、ジャイロ効果が高くなり車体が正立しようとして安定性が増すのですが、逆にハンドリングが重くなり、切り返しでの荷重異動にも負担がかかるデメリットがあるのです。
それを、逆回転クランクシャフトを搭載する事によってホイールとクランクシャフトのジャイロ効果が打ち消し合って、クイックなハンドリングを実現。
また、ブレーキング中のリアタイヤの接地感にも作用するため、ブレーキングからコーナーに入るまでの操作性が向上しています。
ボア径はMotoGPマシンと同じ
パニガーレV4のピストン径はφ81mmで、MotoGPマシンの最大値と同じ大きさです。
そして、ストロークをMotoGPマシンよりも延長した53.5mmとし、1,103ccまで排気量アップされています。(MotoGPマシンは排気量1,000cc以下)
圧縮比は14:1と他のスーパースポーツバイクと比べてかなり高く、高回転域でパワーを出してストロークを増やしてトルクを稼ぐという意味で1,103ccという排気量になったことが考えられます。
至れり尽くせりの電子制御デバイス!
ライダーにとっての不安要素である214馬力ものパワーを乗りこなせるかという問題。
しかし、パワーを制御する電子デバイスが凄いのもパニガーレV4の特徴です。
走行モードは、『RACE MODE』、『SPORT MODE』、『STREET MODE』の3つから選択可能で、他にもトラクションコントロールの装備はもちろんですが、スライドコントロールやウィリーコントロールなど、さまざまなバイクの挙動が制御可能となっています。
ドゥカティ・スライド・コントロール
スライドコントロールはバンク角やそこに至るまでの加速度に応じて、燃料噴射良やスロットル開度などを制御。
トルクを制御することでリアタイヤのスライド量をマシンがコントロールしてくれます。
これで、MotoGP™では当たり前となったスライド侵入も電子制御によって可能に!
スライドコントロールの調整幅は2段階とOFFの3パターンとなっています。
ドゥカティ・ウィリー・コントロールEVO
加速時にフロントタイヤがリフトしようとすると、それを検知し、ウィリー状態を抑止してスムーズな加速ができるよう制御します。
調整量は8段階+OFFと細かく調整可能です。
ドゥカティ・トラクション・コントロールEVO
リアタイヤの空転を検知し、燃料噴射量や点火時期を変更することで出力を制御して空転を抑制します。
スライドコントロールと連動しており、調整量は同じく8段階+OFF。
ドゥカティ・クラッチ・シフトEVO
クラッチ操作なしでシフトアップとシフトダウンが可能です。
また、コーナリング中のバンク角に連動し、スムーズなシフト操作を可能としています。
調整はONとOFFの2種類。
ドゥカティ・エンジンブレーキ・コントロールEVO
アクセルスロットルオフの状態で、エンジンブレーキの効きを3段階で調整が可能です。
アンチロック・ブレーキング・システム
コーナリング中のバンク状態で効率の良い減速域に制御してくれます。
他にシステム介入度を調整することでリアタイヤのみABSが効くようにする制御も可能で、調整量は3段階。
サスペンションの減衰力
パニガーレV4Sからオーリンズ製電子制御式サスペンションが搭載されており、減衰力を自動的に制御してくれるセミアクティブ式とマニュアル固定式の2パターンから選択可能です。
エンジン
スロットルレスポンスはライディングモードと連動していますが、任意で設定する事も可能。
調整量はHigh/Medium/Lowの3段階となっています。
ドゥカティパニガーレV4はSBKに出場できるのか?
ドゥカティパニガーレV4は、SBKのレギュレーションを満たしておらず、なおかつL型2気筒のパニガーレがなくなればSBKに出場できるモデルがなくなってしまいます。
しかし、ドゥカティではSBK参戦のためのホモロゲーションモデルの開発が進行しており、パニガーレV4の排気量を1,000ccにしたモデルが登場する見込みで2019年シーズンからのSBKへの投入が予想されています。
モデル名は、『パニガーレV4 R』となるのではないでしょうか。
ドゥカティパニガーレV4のスペック
パニガーレ V4 | パニガーレ V4 S | パニガーレ V4 S スペシャル | |
---|---|---|---|
全長×全幅×全高 | 未発表 | 未発表 | 未発表 |
ホイールベース(mm) | 1,469 | 1,469 | 1,469 |
シート高(mm) | 830 | 830 | 830 |
乾燥重量(kg) | 175 | 174 | 174 |
エンジン種類 | 水冷90°V型4気筒デスモドロミック4バルブ | 水冷90°V型4気筒デスモドロミック4バルブ | 水冷90°V型4気筒デスモドロミック4バルブ |
排気量(cc) | 1,103 | 1,103 | 1,103 |
ボア×ストローク(mm) | 81×53.5 | 81×53.5 | 81×53.5 |
圧縮比 | 14.0:1 | 14.0:1 | 14.0:1 |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 157.5[214]/13,000 | 157.5[214]/13,000 | 166.3[226]/13,750 ※レーシングキット付 |
最大トルク(N・m[kgm]/rpm) | 124.0[12.6]/10,000 | 124.0[12.6]/10,000 | 133.6[13.6]/11,000 |
価格 | 2,639,000円 | 3,280,000円 | 4,550,000円 |
パニガーレ V4の装備
ブレーキ | 前 | ・ブレンド製 Stylema®︎ (M4.30) 4ピストン ラジアルマウント モノブロックキャリパー330mm径セミフローティング ・ダブルディスク ボッシュ製コーナリングABS EVO ユニット |
後 | ・2ピストンフローティングキャリパー ・245mm径ボッシュ製コーナリングABSユニット |
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サスペンション | 前 | ・ショーワ製43mm径フルアジャストBPFフロントフォーク ・クロームインナーチューブ |
後 | ・ザックス製フルアジャスタブル・モノショック ・アルミニウム製片持ち式スウィングアーム |
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ホイール | 前 | 鍛造アルミニウム製5本スポーク3.50×17 |
後 | 鍛造アルミニウム製5本スポーク 6.00×17 |
パニガーレ V4 Sの装備
ブレーキ | 前 | ・ブレンド製 Stylema®︎ (M4.30) 4ピストン ラジアルマウント モノブロックキャリパー330mm径セミフローティング ・ダブルディスク ボッシュ製コーナリングABS EVO ユニット |
後 | ・2ピストンフローティングキャリパー ・245mm径ボッシュ製コーナリングABSユニット |
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サスペンション | 前 | ・オーリンズ製43mm径 TiNコート NIX30 フルアジャスト倒立フォーク Smart EC 2.0システム搭載 ・電子制御コンプレッション リバウント調整機構 |
後 | ・オーリンズ製 TT×36 Tフルアジャスタブル モノショック Smart EC 2.0システム搭載 ・電子制御コンプレッション リバウント調整機構 ・アルミ製片持ちスイングアーム |
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ホイール | 前 | 鍛造アルミニウム製3本スポーク3.50×17 |
後 | 鍛造アルミニウム製3本スポーク 6.00×17 |
パニガーレ V4 S スペシャルの装備
ブレーキ | 前 | ・ブレンド製 Stylema®︎ (M4.30) 4ピストン ラジアルマウント モノブロックキャリパー330mm径セミフローティング ・ダブルディスク ボッシュ製コーナリングABS EVO ユニット |
後 | ・2ピストンフローティングキャリパー ・245mm径ボッシュ製コーナリングABSユニット |
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サスペンション | 前 | ・オーリンズ製43mm径 TiNコート NIX30 フルアジャスト倒立フォーク Smart EC 2.0システム搭載 ・電子制御コンプレッション リバウント調整機構 |
後 | ・オーリンズ製 TT×36 Tフルアジャスタブル モノショック Smart EC 2.0システム搭載 ・電子制御コンプレッション リバウント調整機構 ・アルミ製片持ちスイングアーム |
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ホイール | 前 | Marchesini Racing マグネシウム製鍛造 3本スポーク 3.50×17 |
後 | Marchesini Racing マグネシウム製鍛造 3本スポーク 6.00×17 |
まとめ
パニガーレV4のスペックや装備には驚かされますが、これから本格的にサーキットやワイディングに出てくると、国産スーパースポーツバイクを脅かす存在になるでしょう。
さらに、価格で比較してもホンダCBR1000RR SPが246万円、ヤマハYZF-R1/R1Mが226~307万円であるため、そこまで差はありません。
ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキもパニガーレV4の存在にうかうかしてられないはず!
はたして、パニガーレV4は最強のスーパースポーツバイクになるのでしょうか。
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