角田 裕毅選手により日本国籍ドライバーでは7年ぶりにレギュラー参戦を実現している2021シーズンのF1(フォーミュラ1)。ひさびさの日本人ドライバー参戦で話題となりみなさんも注目しているのではないでしょうか。しかし、日本やアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどの「自動車大国」だけがF1ドライバーを輩出している国ではありません。長いF1の歴史でわずか1名しかドライバーを輩出していないにもかかわらずレースで優勝を達成している国もあります。今回は、みなさんも耳にした経験があるかもしれないF1ドライバーの「出身国」について、珍しい例をご紹介していきましょう。

©長谷川 優人

実に39ヵ国がF1ドライバーを生み出している!

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みなさんは、F1ドライバーを生み出した国の数を想像できますか。

39の国々で、F1参戦経験のあるドライバーを生み出しているのです。

日本が承認している世界の国数が196ヵ国(2011年当時)ですから、全世界の20%で1人はF1ドライバーが誕生している計算になります。

自動車大国のイギリスやアメリカ、イタリア、フランス、ドイツを中心に多くの国々でドライバーが誕生し、70年以上の長いF1の歴史を支えているのです。

日本国籍ドライバーはF1で勝てていない

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日本国籍のドライバーは、レギュラー参戦およびスポット参戦(1戦のみなど)をすべて合計して、21名が挑戦しています。

レースでの最高成績は、3位表彰台。

鈴木 亜久里氏(1990年日本GP)、佐藤 琢磨選手(2004年アメリカGP)、小林 可夢偉選手(2012年日本GP)がそれぞれ獲得しています。

21名も輩出しているにも関わらず、いまだに日本人はF1でチャンピオンを獲得できていないどころか、レースで優勝を挙げられていないのです。

2021シーズン、日本国籍では実に7年振りのレギュラー参戦を実現した角田 裕毅(ゆうき)選手には、日本人がいまだ未踏の地であるレース優勝とチャンピオン獲得を期待されています。

珍しい出身国で優勝経験のあるF1ドライバーとは

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それでは、日本国籍ドライバーが未踏の地となっているレース優勝を達成しているドライバーをご紹介していきましょう。

F1やモータースポーツファンのみなさんには、もしかすると聞き馴染みのある名前かもしれません。

ファン・パブロ・モントーヤ選手(コロンビア)

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ファン・パブロ・モントーヤ選手は、2001シーズンから2006シーズン途中まで6年弱、F1に参戦したコロンビア出身のレーシングドライバーです。

アメリカに存在したトップフォーミュラカテゴリー「CART」のチャンピオンと、長い歴史を持つレース「インディ500」で優勝経験を持ち、2001シーズンからの4年間をウイリアムズ、2005シーズンから1年半をマクラーレンより参戦。

「暴れん坊」のニックネームを持ち、豪快かつ攻めの姿勢を体現したドライビングで、ミハエル・シューマッハー選手やキミ・ライコネン選手など同年代に競い合ったライバルたちと激しいデットヒートを繰り広げています。

ルーキーイヤーとなった2001シーズン、第15戦イタリアGPでポールポジションから初優勝を挙げると、2002シーズンと2003シーズンはそれぞれシリーズ3位。

通算で7勝を挙げる活躍を魅せて、2006シーズン途中を最後にF1から退きます。

F1を去ったあとは、アメリカのNASCARレースやインディカー、デイトナ24時間レース(IMSA)などで活躍を続けており、2020年にはフランスでおこなわれる「ル・マン24時間レース」に参戦するなどいまだ一線で活躍中です。

パストール・マルドナード選手(ベネズエラ)

パストール・マルドナード選手は、2011シーズンから2015シーズンまで5年間、F1で戦い続けたベネズエラ出身のF1ドライバーです。

日本でも「師匠」「マルド師匠」などのニックネームで愛されてきた、アグレッシブで攻撃志向なドライビングで数々のバトルを繰り広げているドライバー。

2010年の「GP2」(F1の傘下カテゴリー、現:「FIA-F2」)チャンピオンに輝き、大きな期待を持って2011年よりウイリアムズからF1デビューを実現します。

シーズン2年目となる2012年第5戦スペインGPでは、他者のペナルティによる助けはありましたが自身初のポールポジションを獲得。

レースではフェラーリを駆るチャンピオン経験者、フェルナンド・アロンソ選手(現・アルピーヌ)と激しいバトルを繰り広げて一旦はリードを許すものの、ピット作業で逆転しアロンソを抑えきって初優勝を達成します。

その後、2015年までF1参戦を続けて、通算1勝。

近年は2018年と2019年にル・マン24時間耐久レースに参戦しています。

ロバート・クビサ選手(ポーランド)

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ロバート・クビサ選手は、2006シーズンから2010シーズン、および2019シーズンの合計6シーズン、F1に参戦していたポーランド出身レーシングドライバーです。

2005年までレーシングカートやミドルフォーミュラで活躍したのち、2006年にBMWザウバーでシーズン途中にスポット参戦でF1デビュー。

デビューイヤーとなった2006年第15戦イタリアGPでは3位表彰台に上がるなど期待以上の活躍を遂げて、周囲の期待を一身に受けます。

参戦3年目となった2008年第7戦カナダGPで初優勝をつかみとり、シリーズランキング4位に輝く活躍。

現代まで歴代唯一のポーランド国籍ドライバーですが、レース優勝の偉業を成し遂げたドライバーでもあるのです。

2010シーズンまでF1レギュラー参戦を続けたのち、2011年にラリー競技中、不慮の事故で大怪我を負います。

その後懸命のリハビリとラリー競技やサーキット走行での実戦経験を養って、2019年にはウイリアムズより再びF1レギュラー参戦を実現した実績を持つドライバーです

チャールズ・ルクレール選手(モナコ公国)

出典:https://www.formula1.com/en/drivers/charles-leclerc.html

チャールズ・ルクレール選手は、F1で伝統の市街地レースとして有名である「モナコGP」が開かれるモナコ公国出身のレーシングドライバーであり、現役のF1参戦ドライバーです。

冷静かつ的確な判断力で安定した走りを魅せるクールなドライバー。

レーシングドライバーである父を持ち、幼少期からレーシングカートに触れて実力をつけていきます。

2015年にヨーロッパF3選手権、2016年に「GP3」(現・「FIA-F3」)、2017年には「FIA-F2」でチャンピオンを獲得。

2018シーズン、アルファロメオ・ザウバーよりF1デビューを達成し、1994年以来のモナコ国籍ドライバーとなります。

第4戦アゼルバイジャンGPでは6位初入賞を実現するなど、ルーキーイヤーから実力を発揮。

実力が認められ、2019シーズンよりフェラーリへ移籍します。

第2戦バーレーンGPで初のポールポジションを獲得すると、第13戦ベルギーGPではシーズン3度目のポールポジションスタートから見事レース初優勝を達成。

同じベルギーGPで併催されたFIA-F2のレース中に友人であったドライバー、アントワーヌ・ユベール選手が事故死するアクシデントが発生。

ベルギーGPでの優勝はモナコ国籍ドライバー初優勝だけでなく、ユベール選手にも捧げる勝利ともなったのです。

2021シーズンも引き続き、フェラーリよりF1にフル参戦を予定しています。

まとめ

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ここまで、珍しい出身国のF1ドライバーをご紹介しました。

コロンビアやベネズエラ、ポーランド、モナコ。

みなさんには普段馴染みが少ない国で生まれたドライバーたちがF1でレース優勝やチャンピオン争いを繰り広げているのです。

日本国籍のドライバーも、彼らに負けないようまずは、レースでの初優勝を掴んで欲しいもの。

角田裕毅選手のF1での活躍に注目していきましょう。