3月4・5日に鈴鹿サーキットで行われたモータースポーツファン感謝デー。そこで、一人の男が50年以上追い求めていた夢を叶えた。“元祖日本一速い男”として知られる星野一義だ。実は彼の夢というのは「マン島TTなどで活躍したホンダのRCを駆る、ホンダのワークスライダーになること」だった。今回の鈴鹿ファン感謝デーで、その夢を叶える舞台が出来上がったのだが、そこには様々なドラマとサプライズがあった。

©︎Tomohiro Yoshita

3月3日(金)17:40「夢のマシンに対面、早くも興奮」

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翌日からのイベントに先立ち、鈴鹿サーキットでは一足早く練習走行が行われた。

1960年代にマン島TTや世界選手権などで活躍したホンダのRCシリーズ。マシンはレストアされて走行できる状態となっているが、今のようにエンジンをかければすぐに走れるというものではない。このためマシンのチェックと、出演者たちの練習も兼ねての走行時間だった。

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いつもとは違い黒のライディングスーツに着替え、2輪用のヘルメットを用意。隣には自身がかつてホンダのワークスライダーを夢見た時に活躍していた高橋国光と北野元。乗る前から星野は早くも笑顔だったのが印象的だった。

この日はチェックラップのため2周ほどの走行。また、この日はスタンドにはほとんど観客がいない状態で、あくまで本番は4・5日のイベント当日。それでも念願のバイクでの走行を堪能していた。

 

3月4日(土)15:20「ついに、その瞬間が…」

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鈴鹿ファン感謝デー初日。ついにその瞬間がやってきた。グランドスタンドには超満員の観客に拍手で迎えられ、星野が登場。この時は「元祖日本一速い男」ではなく「夢を叶えるライダー」だった。

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トークショーでは、中学生の時にマン島TTに憧れ、ホンダワークス入りに憧れた時のエピソードを披露。すっかり気分は、2輪レーサー。ヘルメットをかぶる際には「マン島へ行ってきます!」とコメント。実際に場所は違うのだが、グランドスタンド前だけは50年前のマン島TTのような雰囲気になり始めていた。

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エンジンの暖気を終え、いよいよスタート。いざ走り出すと、一つ一つのコーナーをかみしめるように走り、ストレートでも全開。

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その光景を見守るファンも、ただただ釘付けになるだけで、まさに時が止まったような“夢の時間”を過ごしていた。

 

3月5日(日)11:00「諦めなければ、夢は叶う」

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鈴鹿ファン感謝デー2日目。まさかの事態が発生した。

星野が乗る予定だったRC166が、前日の走行後にトラブルが見つかり、2日目は走行できなくなってしまったのだ。

すでにRC166での夢のライディングは果たしているとはいえ、2日目しか来場していないファンは、その姿を見られていない。もちろん星野もファンの気持ちがわかっていたのと、「やっぱり乗りたい」という気持ちが強かったようで、少し元気がない様子。

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結局、高橋、北野の走りをコースサイドから観ることにした。

残る2台のバイク、RC142とRC164は好調で当時と変わらない迫力あるサウンドを披露。ファンを魅了した。

何周かした後、北野がメインストレートで停車…そして、星野を呼んだ。

「乗れよ!」

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なんと、彼の夢、そして来場したファンの夢を叶えるべく、北野が走行チャンスを与えようとしてくれたのだ。それを聞いた星野は、急いでヘルメットをかぶり、かつて自分が憧れたバイクのところへ。誰もが予想していなかったサプライズで、あまりに慌てていたため、間違えて4輪用グローブをつけてしまっていたほどだった。

北野から譲り受けたRC164に乗った星野がスタート。会場は、この日一番というほどの大歓声となった。

「星野くんが走るところが見られないと、ファンの皆さんも許してくれないでしょう」と語る北野。まさに先輩から後輩へ。夢をつなぐリレーが行われた。

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4輪でも2輪でも星野にとっては先輩にあたる北野。その先輩から譲り受けたチャンスを大事にするとともに、夢が叶ったことへの気持ちが走りにも出ており、昨日を上回るアグレッシブな走りを見せた。

 

まとめ

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デモランを終え、グランドスタンドに帰って来た星野は、北野らと握手。そして最後にこう叫んだ。

「ホンダさん、夢をありがとう!!」

こうして、星野一義の夢が叶った2日間は幕を閉じたのだが、彼自身にとっても、当日その場にいたファン・関係者にとっても、忘れられない2日間になったことは、言うまでもない。

そして、今回の北野と星野のような感動ストーリーが生まれるのも、鈴鹿ファン感謝デー最大の魅力だということを、改めて感じた。

“諦めなければ、夢は叶う”

通常のレースとは違う感動ストーリーが、この鈴鹿サーキットで生まれた。

 

 

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