自動車とは、その生産・販売している現行の時期ですら魅力的な存在ではありますが、その中でも特に多くの人気を集めた車は生産終了後も長く愛されます。それが「名車」の域に達し、生産終了から何十年も経ると、それはもはや「自動車」という枠を超えた「文化遺産」と言っても良いでしょう。それでは、そんな車にかつてと同じ輝きを与える場所、たとえば「レース」などがあれば…そこは車好きにだけにタイムスリップの許された、楽園かもしれません。
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ただ集まるだけではない、ヒストリックカーレースを行うJCCA
JCCA(Japan Classic Car Association・日本クラシックカー協会)とは、クラシックカーが好きならば誰でも入会できるという、意外にも敷居の低い旧車を愛する人々の団体です。
旧車の所有を条件とせず、むしろ旧車ファンを増やすことで憧れの存在を身近なものとして、さらにそのオーナーを増やしたり、何らかの事情で維持が困難になった場合は後継者を探すキッカケとなる場所と考えると良いのかもしれません。
年始のニューイヤーミーティングはまさにそうした「所有こそしていないものの旧車好き」という人間にとって天国のようなイベントで、全国から集まる約500台の旧車の展示やパレード、各種コンクールにフリーマーケットなどが開催されます。
そして、それらの展示イベントとはまた別に「熱く輝く場所」として開催されているのが、富士ジャンボリーや筑波ミーティングでのヒストリックカーレースイベントです。
そこでは、かつての旧車やレーシングカーが、現役時代と同様の輝きを放ち本気で競い合う、昔のレースシーンにタイムスリップしたかのような世界が繰り広げられています。
5つのクラスで戦われるヒストリックカーレース
「2017JCCAクラシックカーレース特別車両規定」によれば、参加可能な車両は原則として
“1975 年までに生産された車両およびその同型車(マイナーチェンジを含む、エンジンも同型車)に限り、1979 年までに生産された車両”
であり、車両規定では「主な参加可能車両」として何台か掲載されている以外は、クラス分けも含めて最終的な判断は事務局に委ねられているようです。
以下、特別車両規定および2017年4月9日に開催される「富士ジャンボリー」の概要から、それぞれのクラス概要と、どのような車両が実際に参戦しているかをご紹介しましょう。
ヒストリックグランプリ
”1969年までのGr.6スポーツプロトタイプカー及びGr.4量産スポーツカーによるレース。”
1969年にグループ4規定が緩和され、ポルシェ917などポルシェの独壇場になる前の世代でグループ4(5リッター以下)やグループ6(3リッター)以下のマシンで戦われ、マシンの生産台数義務も年間50台だった時期のマシンです。
たとえば2016年のJCCAのレースで参戦しているのは、以下のようなマシンでした。
フォード GT40 Mk-2B
言わずと知れた、フォードがル・マン24時間レースなどでフェラーリを打倒するべく開発されたレーシングカーで、最近はスポーツカーとして復刻されています。
マクランサ
ホンダ S800ベースのレーシングカーで、かつて故・浮谷 東次郎が駆ったS600ベースの”カラス”の系譜に属するモデルです。
ジネッタ G4
このクラスではジネッタは定番なのか、G4やG12の複数台参加が見られます。
アルピーヌ M63
ひと目で1960年代のアルピーヌとわかるこのマシンは1963年のル・マンに投入された、アルピーヌ初のスポーツカーレース用モデルで、1リッター直4OHVエンジンながら実に100馬力を発揮した、耐久レース向けの軽量レーシングカーでした。
FLレース
“1979年までのFJ360およびFL-B/FL500/FL550によるレース”
今でも地方で開催されているジュニアフォーミュラ、FJ1600よりはるか昔に開催されていた、軽自動車用エンジンを用いたジュニアフォーミュラ達の競演です。
ベルコ96A
FJ360およびFL500で初のセミモノコックフレームを採用して数々の活躍を成し遂げたベルコのフォーミュラカーで、ほかにもベルコ97Cなどが参戦しています。
ハヤシ712
アルミホイールで有名なハヤシレーシングがレーシングカーコンストラクターとして1978年に投入、Fl550を席巻したのがこのハヤシ712です。
P68/75レース
“ノーマル車両によるレース 年式により [68]と[75]の2クラスに分かれている。”
上記に加え、排気量でさらにクラスが分かれるこのレース。どんな車が参加しているかと言いますと?
P68-1 / 2クラス
2リッターのナローポルシェやベレットGT TypeR、トヨタ1600GTなどが参戦しています。
P75-1 / 2クラス
2.2リッター以上のナローポルシェやS30フェアレディZ、SB1シビックなどが参戦しています。
S65レース
“チューニング車両によるレース 1965年までの車両によって行なわれる。”
国産ではトヨタ スポーツ800やベレットGT、輸入車ではロータルコルチナMk-1やポルシェ356、ルノーR8ゴルディーニなど、戦後日本の草レース創期にも活躍したマシンが出ています。
S68 / 75レース
“チューニング車両によるレース 年式により [68]と[75]の2クラスに分かれている。”
顔ぶれが非常に多彩なのがこのレースの特徴ではないでしょうか。
ディーノ308GT4やアルファロメオ1600GTVなどイタリアンスポーツが走っているかと思えば、オースチンミニがそこに混ざっているのもご愛嬌。
国産車ではブルーバード1800SSSが一台勢力という構成です。
Fレース
“フルチューニング車両によるレース 1970年までの車両によって行なわれる。”
1970年までに生産された車のほかに、事務局から許可されている車が多いのがこのクラスの特徴です。
B110サニー
最多台数を誇るのはTSレースで全盛期を誇った2代目B110サニークーペGX-5。
往年のレースカーをそのままを再現したような数々のマシンは、それだけでも見ごたえがあります。
KP47スターレット
B110サニーと激闘を繰り広げたといえば、やはりこのKP47。
エンジンは、やはりワークス/セミワークス車が積んでいたDOHCの137E(通称3K-R)でしょうか?
KPGC10スカイラインGT-R
この時代のツーリングカーレースで欠かせないスカイラインGT-R。それも2ドアハードトップのKPGC10も複数参戦しています。
S122Aカペラロータリークーペ
GT-Rが出るならマツダロータリーも黙っちゃいない!というわけでサバンナなどと共に登場したのがカペラです。
GT-Rの連勝記録を阻止したのは結果的にサバンナでしたが、そのレースでリタイアするまで圧倒的な走りを見せていたのは実はカペラだったりもするのです。
TSレース
“KP61スターレットとB310サニーのフルチューニング車両によるレース。”
TSレースでも1970年代後半以降の比較的新しいマシンで戦われるこのクラス、B310にせよKP61にせよ、時代の過渡期でマイチェン前後の丸目・各モデルが混在しているため、実質的には4車種で戦っているようにも見えるカテゴリーです。
B310サニー
ダットサンブランドが残っていた時代最後のサニーである事から「ラスト・ダット」の異名も持つ最後のFRサニー。
TSレースと言えばB110のイメージが強いのですが、B310もレース屋には親しまれていたようで、現存台数はかなり多めです。
KP61スターレット
こちらもFR最後のスターレットで、4A-Gへのスワップチューンも流行りましたがTSカップ参加車は3Kおよび4Kエンジンに制限されています。
全長が短い故か、オバフェン(オーバーフェンダー)やブリフェン(ブリスターフェンダー)で武装した姿には塊感がありますね。
まとめ
いかがでしたか?
展示されている多数の旧車を眺めて楽しむイベントも良いのですが、往年のレーシングカーが往時の輝きを取り戻すようなレースイベントには、展示イベントでは味わえない魅力があります。
車好きで旧車好き、そしてレース好きまで高じていれば、これを見に行かない手はありません!
2017年も富士ジャンボリー(富士スピードウェイ)と筑波ミーティングサマー(筑波サーキット)で開催されますので、ぜひぜひ、会場まで足を運んでみてくださいね。
2017年のイベント日程
2017/01/29 ニューイヤーミーティング(お台場)
2017/04/09 JCCA富士ジャンボリー(富士スピードウェイ)
2017/07/02 筑波ミーティングサマー(筑波サーキット)
2017/10/22 エンデュランスミーティング(筑波サーキット)
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