CONTENTS
TOYOTA TS030 HYBRID(2013年・総合2位)
2012年、トヨタは久しぶりにル・マンの舞台にカムバックします。
ル・マン24時間をシリーズ第3戦に抱え、新たなトップカテゴリーとして始まった世界耐久選手権(WEC)のレギュレーションでは、
モーターとバッテリーを用いたハイブリッドシステムの使用が許可されていました。
トヨタにとってハイブリッドレーシングカーの開発は、自らの技術力を鍛える上で意義のある挑戦だったのです。
こうしてトヨタは、3.4L V8 NAエンジンとレーシングハイブリッドシステム「THS-R」を搭載したニューマシン「TS030-HYBRID」を開発、WECへと投入します。
スーパーキャパシタと回生モーターによる強力なモーターアシストは、「ハイブリッド=エコ」という退屈なイメージを覆すには十分なインパクトを持っていました。
しかし2012年のル・マンでは結果を残せず、2台ともにクラッシュとマシントラブルでリタイアという結果に終わります。
リベンジを誓った2013年のル・マン。
絶対王者・アウディの壁は厚く、予選では1?3位を奪われてしまいます。
レースは序盤から大きく動き、4、5番手からスタートしたトヨタはアウディの一角を崩し、A・デビッドソンらが操る8号車が首位争いを展開します。
しかし、追撃は最後までアウディには届かず、結果はまたしても総合2位。
とはいえ、ハイブリッドマシンで手にした初の表彰台として、これは記念すべき結果だったと言えるでしょう。
TOYOTA TS040 HYBRID(2014年・総合3位)
2014年シーズン。トヨタはWEC、そしてル・マンを制覇するべく、TS030を発展させた「TS040 HYBRID」をシリーズに投入します。
前年型との大きな違いはエンジンを3.7Lに排気量アップしたことに加え、後輪にのみ搭載されていた回生モーターをフロントにも搭載。
これによってエネルギー解放時に4輪を駆動させることが可能となっていました。
搭載されていたハイブリッドユニット「THS-R」の生み出すパワーは、システム単体で480馬力を達成しており、V8 NAエンジンが生み出す520馬力と組み合わせると、総馬力は1000馬力にも及びます。
これだけ驚異的なスペックを持ったTS040は、WECが開幕すると、TS040は第1戦シルバーストン、第2戦スパ・フランコルシャンで開幕2連勝という快挙を成し遂げます。
そして迎えたル・マン、予選では中嶋一貴が3:21:789という脅威的なラップで日本人としては初のポールポジションを獲得。
この年からWECに復帰した宿命のライバル・ポルシェを2位に従え、3位にもトヨタが食い込みました。
決勝が始まると中嶋らの7号車はほぼ独走体制を築きレースをリード。過去2年の苦労が実ったともいえる、安定した走りを披露します。
しかし、またしてもルマンは彼らに牙をむくのです。
スタートから14時間後の219周目に、中嶋がドライビングするマシンは突如パワーを失いストップ。電気系統のトラブルにより、再びル・マン制覇の夢が潰えてしまいます。
結果は生き残った8号車がアウディ2台に次いで3位表彰台を獲得。
ル・マンで勝つことの難しさを再び思い知らされた彼らですが、WECでは計5勝を挙げ、念願のコンストラクターズ・チャンピオンに輝いています。
TOYOTA TS050 HYBRID(2016年・総合2位)
2014にWECシリーズチャンピオンを手にし、念願のル・マン制覇は目前と思われた2015年シーズンでいたが、この年のTS040は6位・8位と惨敗を喫してしまうのです。
通算17勝目となる1.2フィニッシュを飾ったポルシェと、これに続いたアウディの速さは、トヨタとは次元の違うものでした。
この結果を受け、トヨタ陣営は2017年投入予定だったニューマシンの投入を1年早めるべく、TMGと東富士研究所で不眠・不休の開発を進めることになります。
2016年シーズンに入り、4月の開幕戦までにどうにか形になった新型「TS050 HYBRID」は、エンジンとハイブリッドシステムを同時に一新。
コンパクトな2.4L V6 直噴ターボユニットに、スーパーキャパシタに比べ蓄電容量に優れるリチウムイオン・バッテリーを組み合わせた新型THS-Rを搭載し、エンジン500ps:モーター500psというパワーバランスを実現しています。
シーズン開幕後の2戦は結果を残せず終わりますが、この年のトヨタは当初から「ル・マン制覇が最優先」であることを公言していました。
そして迎えた運命のル・マンは、トヨタだけでなく、すべてのモータースポーツファンにとって、決して忘れることの出来ない1戦となるのです。
レース序盤、ポールポジションのポルシェから首位を奪ったトヨタが、コンスタントな速さと燃費の良さを武器にマージンを築くという展開でレースは進みます。
中盤から終盤にかけてポルシェ2号車、トヨタ5、6号車がスプリント並の秒差で激しい首位争いを演じる中、小林可夢偉がステアリングを握る6号車がスピンを喫してトップグループから脱落。
5号車の中嶋は懸命に首位をキープし、プレッシャーをかけ続けたポルシェ2号車はスローパンクチャーで残り11分で予定外のピットイン。これでポルシェは万事休す…トヨタのル・マン初勝利は盤石と思われました。
しかし、レース終了まであと6分38秒、というその瞬間。
コクピットから、中嶋の「I have No Power, No Power !!」という悲痛な叫び声がピットに届くのです。
この時、ターボチャージャーのマニホールドが破損し片方のバンクが突如機能を停止。致命的なエンジントラブルが発生していました。
ステアリングを握りながら中嶋は必死の復旧作業を試みますが、残酷にもマシンはファイナルラップを迎えるピット前…大観衆とトヨタのクルーの前で、完全に停止してしまうのです。
結局、勝利を諦めかけていたポルシェが、歓喜と同情の入り混じった複雑な感情を伴いながら、ル・マン通算18勝目となるトップチェッカーを受けます。
繰り上がる形で2位表彰台となった、トヨタ6号車の小林可夢偉たちに、ほとんど笑顔はありませんでした。
まとめ:伝説になるリベンジマッチ。2017年、トヨタは3台体制でルマンに挑む
ファイナルラップ寸前まで首位をキープし、耐久王・ポルシェが勝利を諦めるところまで追い詰めた、トヨタ・TS050ハイブリッド。
史上稀に見る僅差のレースで悲劇に見舞われたトヨタに、ポルシェはレース後、下記のような熱いメッセージを届けました。
24時間、互いに競い、 24時間、しのぎを削った。
そして、語り継がれるリスペクトが残った。
ポルシェ、2016年ル・マン24時間耐久レース総合優勝。
熱き闘いを共にしたトヨタへの敬意を表して。
遂に迎える、2017年のル・マン24時間耐久レース。
トヨタは3台のTS050をスターティング・グリッドに送り込みます。
モノコック以外、すべてのコンポーネントを徹底的に見直し、今までならば”必要以上”だった過酷なテストを繰り返したといいます。
ポルシェのメッセージを見てわかる通り、今や彼らは、世界から敬意を抱かれる真の「戦う自動車メーカー」に成長を遂げたのです。
今年こそは偉大なライバル・ポルシェを下し、ル・マンのポディウムに”君が代”が流れることを期待しましょう。
あわせて読みたい
ルマンに挑戦するためにサードが作ったレーシングカーとは?設立から1年で参戦開始したルマン歴代マシン一挙振り返り!
佐藤琢磨に続け!ルマン24時間レースに挑む6人の日本人ドライバーたち
ルマン24時間をもっと楽しむために!マシン&ドライバーのルールをおさらい!
100年以上の歴史を持つサルトサーキットは何回レイアウトが変わった!?ルマン24時間を楽しむために知りたい!
ルマン24時間に参戦した日産の名車とは?1986年から続く、日産の挑戦を、レーシングカーから一挙振り返ります!
[amazonjs asin=”B01M0OFW0U” locale=”JP” title=”スパーク 1/43 トヨタ GAZOO Racing TS050ハイブリッド ロールアウトスペック2016 5号車 デビッドソン、ブエミ、中嶋一貴 TOYOTA GAZOO Racingチーム別注”]
Motorzではメールマガジンを始めました!
編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?
気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!