NSXとの出会い

自らも優れたドライバーだったマレーですが、究極のスーパーカーを作る為に片っ端からハイパフォーマンスカーをテストドライブしたと言われます。

Ferrari F40 、ブガッティEB110、ポルシェ911。未だ燦然と輝く名車たちです。

にもかかわらず、ステアリングを握った彼はどれもこれもを「違う」と言い放ったのです。

彼の求めた”スーパーカー”とは、「ストレスなしでロンドンから南仏までロングドライブしたくなるクルマ。信頼できて機能性の高いエアコンディショニングと高い居住性を備えている」いわば、完全無欠のまさしく”凄い乗用車”なのでした。

出典:http-//www.dailysportscar.com/2014/10/27/catching-up-with-gordon-murray-taking-steps-forward-by-looking-back.html

出典:http-//www.dailysportscar.com/

レーシングカーのロードゴーイングバージョンの様なF40は、血わき肉踊ったとしてもロングドライブしたら血管がきれてしまうでしょうし、911も優れた工業製品とはあれRR特有の挙動の不安定さはともするとストレス。マレーの描く究極のクルマは地上に存在していないと思われました。

しかしそんな最中、究極のお手本にある日出会うことになるのです。

ある日、アイルトン・セナと共にホンダのテストコースに赴いた彼は、一台の地味な開発車両を見つけます。

セナが開発に携わっていると聞いて、訝しげながらハンドルを握ることになったマレー。

そのマシンこそ、開発中のホンダ・NSXでした。

出典:http://www.carmagazine.co.uk/features/opinion/ben-whitworth/remembering-the-underdogs-the-1989-honda-nsx/

出典:http://www.pcauto.com.cn/

「F1が10点なら、NSXが7点、その他のスポーツカーはどれも2点か3点」と言わしめるほど、マレーはその素晴らしきドライバビリティに魅了されます。

NSXこそが我々の求めていた毎日使えるスーパーカーだったのです。

そのクルマのエア・コンディショニングは完璧、トランクの広さもリーズナブル、いうまでもなく、当然Honda車の高いクオリティと信頼性を備えていたからです。

出典:http://www.honda.co.jp/

ことさらマレーは、精度の高いドライビングを可能にするサスペンション構造に参考を得たと言います。

マレーにとって、運動性能と運転のしやすさ、快適さをも妥協しなかったNSXの究極のバランスは思い描く”スーパーカー”そのものだったのです。

強烈なインスピレーションと絶対的指標を得たマレー。

その美学とノウハウのすべてをつぎ込んだマシンの開発を進めつつ、NSXのステアリングを合間に握ることで、その仕上がりを比較し続けたといいます。

 

”究極の乗用車”McLaren F1

出典:http://www.autocar.co.uk/car-review/mclaren/f1-1992-1998

出典:http://khongthetinduoc.net/

そうして完成したMcLaren F1は、前代未聞尽くしの恐るべきマシンでした。

F40よりも一回り小さいボディに、627bhpを発揮するBMW製6.1リッターV型12気筒エンジンをミドシップにマウント。

重量配分を最適化するために市販車としては例を見ないセンターコクピットを採用。

素材の選定レベルも半端ではなく、市販車初のカーボンコンポジットモノコック、インコネル製マフラー、放熱性に優れる純金箔張りのエンジンルーム、チタン削り出しのウォッシャーキャップ、チタン合金製の車載工具(もはや笑える)など、地上に存在する最も優れた素材を惜しみなく、誠に惜しみなく使用。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/マクラーレン・F1#/media/File:1996_McLaren_F1_engine.jpg

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/

更に更に、例のブラバムBT46Bでマレーが採用したものと同じ原理の、車体下部のエアーをファンで吸い出しダウンフォースを得るアイディアまでもが採用されているのです。

卒倒しそうなスペックを有しながらも、BOSE製の最高級サウンドシステムや、30秒で車内の空気が入れ替わるという高性能のカーエアコンシステムを搭載するなど居住性も究極へのこだわりが貫かれています。

https://www.youtube.com/watch?v=zl47LB0h55w

そのドライブフィールは多くのレーシングドライバーやエンスージアストを魅了し、ステアリングを握った人々の賛美の声は今も途絶えることがありません。

当時のギネスワールドレコードを塗り替えたエンジン出力・最高速度390km/hを突破するポテンシャルを持ちながら、抜群の安定性・操縦性を持ち合わせていたのです。

自動車の枠を超え、工業製品として例を見ないほどのまさに「究極の乗用車」McLaren F1の登場により、1980年代までの「スーパーカー」はテクノロジーの上では一気に過去のものとなり、スーパーカー、ひいては自動車に求められる基準の多くを塗り替えました。

1億円と言う車体価格は世間の度肝を抜きましたが、1台を生産するのに3ヶ月半かかり、作った分だけ赤字が出るという商業ベースでは「・・・」な車ではありました。

しかし。McLaren F1と言うクルマは、工業デザイナーであるゴードン・マレーの血と哲学のすべてが妥協なく凝縮した「芸術」と言って過言はないでしょう。

何よりMcLarenのブランドを後世に渡り大きく高めた功績を無視することは出来ません。

 

まとめ

McLaren F1で、究極の乗用車を作り上げたゴードン・マレー。
今彼はどんな恐ろしい究極のクルマを作っているのか・・・・・

出典:http://www.bbc.co.uk/programmes/p00vm84l/p00vm81s

出典:http://audisrs.com/

と思いきや、なんと彼は現在「スマートカー」の開発に精を出しているというではありませんか。

生活の中のクルマの”究極”を突き詰めれば、燃費がよく、リーズナブルで取り回しがよく、更に荷物も人も可能な限り多く積める・・・マレーは今度はより多くの人の、社会の為になり得る究極のクルマを作ろうとしているわけです。

ゴードン・マレーは、現在TVRのチーフデザイナーとして久しぶりにスポーツカープロジェクトに参加しているとのこと。

2017年にベールを脱ぐマシンにも、鬼才ゴードン・マレーの血が一滴の妥協なく流れていることでしょう。

買えませんけど、買えませんけど、本当に楽しみです。

これからも自動車文化にエモーショナルな革命を起こし続けるであろう、ゴードン・マレーから目が離せません。

 

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