2018年10月1日から、販売されるバイクにABS装着が義務化されました。この事はメディアで大きく取り上げられることがなかったので、あまり知られていないかもしれません。しかし国内二輪業界では、かなりのオオゴト!安全性は確保されるものの、バイクにABSは本当に必要なのでしょうか。なぜ義務化に至ったのでしょう。
掲載日:2019/02/22
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大型/普通自動二輪車にABS義務化!原付二種はCBSも可能
2018年10月1日から、バイクにも新車販売時にABSの搭載が義務化されました。
具体的には126cc以上の大型/普通自動二輪車にABSの搭載が、51~125cc以下の原付二種にはABSまたはCBSが搭載必須となります。
また、継続生産されている車両や輸入車については2021年10月1日からABS/CBS搭載が義務化される予定。
さらにABS/CBS搭載車にスイッチ一つでABS機能をキャンセルできる装置をつけることは禁止されています。
なお、エンデューロやトライアルマシンなどの競技車両や、50cc以下の原付一種は対象外です。
ABS搭載車と非搭載車では安全性と制動距離に圧倒な差
ABSとはブレーキを掛けたときに車輪がロックしないよう、適正な制動力を自動的に得ることができる装置ですが、CBSという装置については聞きなれない方もいると思います。
国土交通省の説明では『複数の車輪の制動装置を単一の操作装置によって作動させることができる装置』とされているのですが、わかりやすく言えば、ライダーがリアブレーキのみを掛けたときに、自動でフロントブレーキも制動し、フロントブレーキのみを掛ければリアブレーキも自動で制動するというシステムです。
ちなみにABSとCBSの搭載車と非搭載車を比べると、急ブレーキを掛けたときの制動力は圧倒的に搭載車のほうが上。
しかも、非搭載車はタイヤがロックしてしまい、時に大きな転倒リスクが生じます。
まして、濡れた路面や砂や泥が散らばった路面など、滑りやすい場面ではABS/CBSがあったほうが圧倒的に安全です。
下の動画は、濡れた路面上でのブレーキング制動距離の差について詳解しているのですが、ABS搭載車と非搭載車での制動距離と安全面の圧倒的な差がわかると思います。
バイクなら教習所で習ったポンピングブレーキは不要ではない!?
教習所でポンピングブレーキと呼ばれるブレーキ操作を教わったことを覚えていますか?
これはブレーキを一気にかけてから少し緩め、再び強くブレーキをかける動作を繰り返す技術で、ABS非搭載の車両には有効なブレーキング操作です。
二輪、四輪ともに教習で教わりますが、四輪車では当然のようにABSが装備されているので、ポンピングブレーキを行う必要は全くありません。
一方、二輪車では日本の道路を走っているバイクにまだまだABS未搭載の車両が多いため、ポンピングブレーキは、安全に減速するための有効なブレーキング方法なのです。
とはいえABSが搭載されればポンピングブレーキをする必要はなくなりますが、バイクという乗り物は、趣味の要素が大きいため、旧車を好むライダーの割合は四輪車より多く、ライダーにとってクルマよりもABS非搭載車に乗る機会は圧倒的に多いでしょう。
ABS開発では先端を行く欧州メーカー
バイクでABSが初めて搭載されたのは、1987年に登場したBMW・K100です。
1976年にホンダがレーシングバイクにABSを採用していたようですが、公道モデルではBMWが先。
クルマで初めてABSが搭載されたのも1978年発売のW126型メルセデスベンツSクラスにオプション搭載されたのが初で、バイクもクルマもABSの発祥はドイツ車からでした。
また欧州では2016年1月からABSの搭載を義務化しているため、バイクにおける安全性能は欧州が最先端ということになります。
その証拠に、ドイツの部品メーカーボッシュ(BOSCH)は1994年からABS開発に着手し、ABSユニットの高性能化かつ軽量化を進めていきました。
そして、今となっては前後連動制御や無段階制御などリニアなブレーキングを実現させ、精度はクルマと同等レベルまで追いついています。
当然、欧州のバイクメーカーはボッシュのABSブレーキシステムを採用し、BMWに至ってはABSはもとよりインテグラルシステムや電子サーボなどライダーに安心感を与えてくれる技術を多数搭載。
大型バイクをメインに販売するバイクメーカーが多いため、ほとんどが高額設定モデルなだけに、ABSを搭載してもコスト面に関しては大きな問題ではないのです。
ABS装着のコストアップが日本でABS義務化を遅らせる原因
一方、中国や東南アジア向けの小排気量で安価なモデルから、高性能な大型バイクまで幅広いラインナップを展開し、世界を牽引する日本メーカーにとっては、すべてのバイクにABSを搭載する事は、低価格車両での採算をとるのが難しくなります。
例えばホンダモンキー125のABS搭載車と非搭載車では、32,400円という価格差が発生。
20万円代のバイクにとってこの価格差は大きく、しかもいま最もバイクが売れている中国や東南アジア市場で販売されるバイクのほとんどが、低価格の小排気量モデルです。
しかもこれからは、日本だけではなくインドや台湾でもABSの搭載義務化が予定されており、日本メーカーが現地工場で生産している海外専用モデルでも、ABSを必ず搭載しなければならなくなる流れ。
そうなると、ABSを搭載しなければバイクを売ることはできませんが、価格を上げれば安価な現地メーカー製バイクに販売数で負けてしまうリスクもあるため、日本メーカーにとってABS装着義務は悩ましい課題です。
これが日本におけるABS装着義務化が遅れた要因とされています。
まとめ
日本はバイクの開発・生産では先進国でありながら、今回のABS装着義務化には『やっと……』という声が多く聞かれます。
また、ベテラン層のライダーが多い日本においては、ABSは不要だという声も少なくありません。
それほど、日本における二輪車に対するABSの必要性の認識が、薄れているということなのです。
今回のABS義務化では、原付一種は除外されていますが、これは二輪車メーカーが生産するうえでのコスト面を考慮した措置だと思われます。
しかし、ブレーキの安全基準が原付二種以上に劣るというのは、50ccバイクに乗るライダーの安全をないがしろにしているということ。
原付一種のライダーの安全性を考慮すれば、全ての排気量のバイクへABS/CBSの装着の義務化を推奨してほしいと思います。
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