80年代中盤、400cc4気筒は一気に空冷から水冷へシフトしていき、自主規制上限59馬力時代を迎えました。そこでカワサキは、サーキットの速さが重視されていたマシン設計が主流となる中、ライバルに負けまいと自社製400ccバイクで初の水冷エンジンを搭載したGPZ400Rを投入。ライダー達が純粋に求めているものはなにかを見直し、街中やワインディングで楽しめる一台に仕上げました。
掲載日:2019/02/24
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400クラスが水冷エンジン時代へ突入!空冷zから水冷Zへシフト
カワサキではZ400FX/GP、GPz400Fなど、400cc空冷4気筒エンジンを搭載したモデルが安定した人気を獲得していましたが、空冷GPz400FのZX400-A2(1984年)、ZX400-A3(1985年)が販売されていた時期、他メーカーの400cc4気筒バイクは既に水冷エンジンへとシフトしていました。
さらに、純正のノーマルの状態からTT-F3マシンを思わせるフルカウルが装着されている事が一般的となり、公道走行仕様でありながらレース仕様に限りなく近い性能をもったマシンが続々と登場します。
最後まで空冷で堪えていたカワサキでしたが、1985年にZX400-A3の販売を終了。
400cc水冷4ストローク並列4気筒エンジンを搭載した、GPZ400Rを発売しました。
ここで、『ジーピーゼット』という呼び方は継承されつつ、表記は小文字の”z”から水冷エンジンを示す大文字の”Z”に変わります。
とはいえカワサキは400ccクラスにおいて水冷エンジンで出遅れたため、400ccZシリーズの人気はこれまでと思われていましたが、新型GPZ400Rも多くのライダーから支持され、瞬く間に大ヒットとなりました。
カワサキ・GPZ400Rとは
カワサキ GPZ400Rは1985年に発売された400ccスポーツバイクです。
当時のライバル車であるホンダVF400Fインテグラ/VFR400R、ヤマハFZ400R、スズキGSX-Rは1984年の段階で、全車エンジンは水冷化されていたため、1985年に登場したGPZ400Rが、このクラスでは最も水冷化が遅れたモデルでした。
エンジンは輸出専用車両のGPZ600Rのエンジンをベースに開発され、ロッカーアームやバルブステムの軽量化、バルブスプリングの強化、コネクティングロッドの特殊表面処理といった、多くの部分でGPZ400R専用に設計されていました。
そのため開発・生産コストは、600より圧倒的に400の方が高騰。
GPZ400Rの最高出力は自己規制上限の59馬力に達し、最高速度は205km/hを実現しています。
レーサーレプリカに対抗したスポーツツアラーだったGPZ400Rが販売数No.1
GPZ400Rが発売された時期、400ccクラスのフレームはスチール製ダブルクレードルフレームから、アルミ製クレードルフレームまたはツインスパーフレームへと変わりつつありました。
GPZ400Rもアルミを用い、アルミ角パイプをフレームの中心で交差させるアルミクロスフレームを搭載。
また、当時は400ccクラスのハイパワー化に対応できる高剛性フレームの開発も急速に進み、アルミクロスフレームはボディをクロスさせることでエンジンを完全にホールドし、車体全体をがっちりさせることを目的としています。
ちなみに、この方法を用いたのは400ccクラスでカワサキだけでした。
しかも、アルミを用いたことで軽量化にも貢献。
左右二本出しマフラーやセンタースタンドなどが装着されていても、同じクラスのライバル車と同等の乾燥重量176kgに抑えています。
軽量ハイパワーが絶対条件だったレーサーレプリカにおいて、それをクリアしたGPZ400Rはサーキットや峠でライバルより速く走れるバイクとして売り出されると思いきや、カワサキから消費者への提案は、レーサーレプリカではなく街乗りや峠、高速ツーリングで楽しく乗れて快適なツアラー志向の強いもので、大げさに言えばアンチレーサーレプリカであり、流行りに逆行する形。
後部座席まで重厚感ある厚手のシートに、セパレートハンドル位置は若干高めにセッティングされたスポーツツアラーになっていました。
しかし、発売初年度で約1万8千台、翌年も約1万1千台のセールスを記録し、クラス別の販売台数で1位を獲得しています。
TT-F3で多くのコンストラクターがGPZ400Rを仕様
福本選手のGPZ400のこれも好き pic.twitter.com/yJmBAtKNQE
— ニューハルピン (@new_halpin) 2019年1月26日
GPZ400Rが記録的なセールスとなったこともあり、多くのレーシングチームがGPZ400Rでレースに出場していました。
その中にはモリワキやBEET、月木レーシングなど有名カスタムパーツメーカーの姿も!
カワサキが有力チームのみにGPZ400R F-3仕様を109万5千円で限定30台のみデリバリーしていましたが、GPZ400Rでのエントリーが非常に多かったため、社外メーカーからTT-F3用キットパーツが多く販売され、GPZ400RはTT-F3レーサーのベースマシンとして高い人気を得ていました。
スペック
1985年モデル カワサキ・GPZ400R | ||
---|---|---|
車体型式 | ZX400-D1 | |
全長×全幅×全高(mm) | 2,095×675×1,180 | |
軸間距離(mm) | 1,430 | |
シート高(mm) | 770 | |
乾燥重量(kg) | 176 | |
エンジン種類 | 水冷4ストローク並列4気筒DOHC16バルブ | |
排気量(cc) | 398 | |
圧縮比 | 11.4 | |
ボア×ストローク(mm) | 56.0×40.4 | |
最高出力(kW[P.S]/rpm) | 43.3[59]/12,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 35.3[3.6]/10,500 | |
ミッション | 6速 | |
タイヤサイズ | 前 | 100/90-16 |
後 | 130/90-16 | |
発売当時価格(円) | 629,000 |
まとめ
GPZ400Rは毎年改良が行われ、型式で1985年式のZX400-D1から1989年のZX400-D4Aまで生産されました。
後継モデルのGPX400Rが登場以降も、GPZ400Rが好調なセールスを記録していたので1987~1989年までは、2台並行して販売されることに。
しかし、後継モデルのGPX400Rは不人気モデルとなり、結局GPZ400Rと同時に生産を終了。
2台の後継モデルに、ZZR400が登場したわけです。
この理由がモデル名に”Z”が付くか付かないかという単純な理由ではないと思われますが、後継モデルがGPZ400Rの人気に劣ってしまったほど、”ジーピーゼット(GPZ)”というネーミングは偉大であることが示された結果になったのは言うまでもありません。
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