Γ(ガンマ)シリーズの末っ子となるスズキ RG50Γ。Γと言うと250や400/500を思い浮かべる方が多いと思いますが、50も原付スポーツクラスでライバル達と対当に速さを競ったメジャーモデルです。そんなRG50Γがユーザーから支持されてきたのは、偉大な先代モデルとスズキが50ccクラスに力を入れてきた結果でした。

掲載日:2019/02/25

 

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Another classic! #foldyfunz #foldyphones #suzuki #suzuka #schwantz #2stroke #twostroke #rg #gamma #sheene #rgv #rg500 #rg50 #rgv250

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あのヒーローも乗っていた!スズキ・RG50Γ

“ザ・エキサイティング・フィフティ”

これはRG50Γのカタログの表紙に載っていたキャッチコピーです。

当時のヒーローライダー、フランコ・ウンチー二がRG50Γの横で仁王立ち。

その後ろには、チャンピオンマシンのRG500が存在感を放ちます。

当時、レーサーレプリカマシンを販売する際、広告にGPライダーを起用することは珍しくなかったのですが、イタリア人らしい端正な顔立ちのウンチー二が登場したことで、女性ファンも大注目。

しかも、スズキはRG50Γに乗るウンチー二の姿を公開し、「RG50Γは私のチャンピオンマシンRG500Γと同等」と語っていたので(大袈裟な表現かもしれませんが)、RG50Γに当時の少年たちは胸をときめかせていました。

そんな当時、ホンダMBX50F、ヤマハRZ50、カワサキAR50などフルサイズ50ccロードレーサーが次々と登場。

性能は法定速度30km/h縛りなんて、全くお構い無し。

これら50ccスポーツバイクは、原付免許しか持っていないライダーでも十分楽しめ、普通自動二輪車免許を持っているライダーも練習用として購入したり、サーキットでレースに出たりと、誰もが楽しめるバイクでした。

そんなRG50Γには、MBX50、RZ50と同様に水冷2ストローク単気筒エンジンが搭載され、当時2ストローク最強とされたRZ50にも十分太刀打ちできるパワーをもっています。

そのため、免許を取得したばかりのスズキファンを獲得するために大きく貢献していきました。

フランコ・ウンチ―二は現在、FIM Grand Prix Safety Officer(安全管理者)に就任しています。現役時代から年齢を重ねてもカッコよさは変わっていません。 / 出典:http://www.motogp.com/it/video/2016/08/30/flashback-franco-uncini/208823

 

スズキ・RG50Γとは

 

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Don’t see any rg50s #rg #rg50 #50cc #motorcycle #motorbike #suzuki #suzukirg #twostroke #2stroke

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スズキRG50Γは1982年に発売された原付一種バイクです。

原付と聞けばちょっとした移動のためのコミューターに感じますが、RG50Γはクラッチ付き5速ミッションに俊敏な加速を実現する水冷2ストロークエンジンを搭載した本格派スポーツバイク。

しかも、70年代から50ccスポーツバイクは『ゼロハンスポーツ』と呼ばれるようになり、現在主流の12インチタイヤではなく、17または18インチのタイヤを装着されたフルサイズバイクでした。

さらに1962~1983年の間はWGP(ロードレース世界選手権|現在のMotoGP)に50ccクラスが存在し、50ccバイクの性能は著しく向上。

日本ではレーサーレプリカブームも相まって、1980年に入ったころからゼロハンスポーツの販売競走が激化していきます。

2スト4スト問わず多くのモデルが登場し、入れ替わりも激しい時代。

そんな中でもRG50Γは、82年から90年代中盤まで生産されるロングセラーモデルとなりました。

ちなみにRG50Γのベースモデルはアッパーカウルを装着したモデルでしたが、他にもハーフカウル仕様やフルカウル仕様、また500ccワークスマシンを彷彿させるウォルターウルフカラーなどさまざまな形やカラーリングが登場。

さらに、派生モデルにネイキッドスタイルのウルフ50も登場し、多くのユーザーのニーズに応えたことがロングヒットの要因だったのかもしれません。

偉大なる先代のゼロハンスポーツがRG50Γを生み出した

スズキは他の日本メーカーよりもいち早く50ccレーサーバイクの開発とレース参戦に力を入れてきました。

日本人で初めてマン島TTレースで優勝を果たした伊藤光夫氏は、スズキRM50と呼ばれるマシンで50ccクラスに参戦。

これは1963年の事で、伊藤光夫氏が26才のときでした。

RM50は、50cc空冷2ストローク単気筒ロータリーディスクバルブエンジンで、最大出力11PS、最高速は150km/hを記録。

この記録は、当時のマン島TTレースはWGPシリーズの1戦だったので、WGPマン島GPで優勝した唯一の日本人として伝説となっています。

スズキはRM50の優勝からさらに改良を重ねてRK50とRP50といった後継モデルが登場し、50ccエンジンの多気筒化とトランスミッションの多段化されます。

そして最終的に50cc2ストロークのまま水冷3気筒化され、14速トランスミッションを搭載して19PS、180km/hまで出せるマシンに仕上がりました。

こうして50ccレーサーが過激になり、日本メーカーが上位を独占するようになってから、主催者側が車両規定を厳格化。

エンジンは単気筒で6速以下と定め、これがゼロハンスポーツの基本となって現在に至ります。

ΓはRG50シリーズの最終型

RG50Γの、RG50E後継モデル。

RG50Eは空冷エンジンでしたが、このときからRG50Γと同じ7.2PSを発揮し、先に水冷化されていたMBX50やRZ50とパワーは同等でした。

また、RG50Eで装備されていたANDF(アンチノーズダイブ機構)は、スズキのGPワークスマシンで開発されて、フロントブレーキを掛けた時にフロントフォークが縮まないようにするシステム。

このシステムはRG50Γにも継承され、名車GSX1100Sカタナにも搭載されていました。

また、RG50はシリーズ化されていて、RG50E以外でも『RG50』、『RG50T』も発売。

70年代後半にゼロハンスポーツを一番盛り上げていたのは、スズキだったのかもしれません。

サーキットから最高速チャレンジまでカスタムベースとして大人気

 

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Dragging shit with no lean angle. #kneedown #bucketracing #rg50 #suzuki #muppet

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ゼロハンスポーツによるメーカー間の競い合いは、街乗りやワイディングだけでなくサーキットでも激化。

50ccクラスのレースはショートコースで開催されることが多く、エントリー費用が安い上に、マシン維持も簡単だったため、普段は250ccや400ccに乗っていても、腕を磨くために50ccクラスでレースデビューするライダーが多数参加していました。

しかもRG50Γは、歴代のRG50シリーズのパーツが流用できたり、社外品パーツも豊富に販売されたので、レーシングマシンのベース車両として大人気!

ノーマル車両のN50クラス、チャンバー変更程度のSP50クラス、改造範囲が広いS50クラスまで、どのクラスをみてもRG50Γが多数参戦し、熾烈なトップ争いを繰り広げていました。

あるバイク雑誌では高速周回路テストコース、谷田部での最高速チャレンジも実施され、最高速100km/hは余裕で超えていたため、80年代ゼロハンスポーツの性能は侮れません。

スズキ・RG50Γのスペック

 

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稀に原チャリlongride WalterWolfの50ガンマって、世の中にどれくらい現存しているんだろ(^o^;) #RG50ガンマ #WalterWolf #スズ菌

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1982年モデル スズキ・RG50Γ
全長×全幅×全高(mm) 1,855×735×1,000
軸間距離(mm) 1,205
乾燥重量(kg) 71(ハーフカウルは70)
エンジン種類 水冷2ストローク単気筒
排気量(cc) 49
圧縮比 8.1
ボア×ストローク(mm) 41.0×37.8
最高出力(kW[P.S]/rpm) 5.2[7.2]/9,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 5.68[0.58]/8,000
ミッション 5速
タイヤサイズ 2.50-18
2.50-18
発売当時価格(円) 218,000(ハーフカウルは193,000)

 

まとめ


ロングセラーモデルだったら中古車市場でもタマ数は多く、安く購入できる!?と思われますが、実はRG50Γの中古はレア車となっており、新車以上の価格で売られていることも珍しくありません。

現在でも旧車や2ストフリークから高い人気を集め、購入者はレストアして楽しんでいるよう。

それほど、ライダーを惹きつける魅力がRG50Γにあるのです。

 

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