レーサーレプリカ全盛時代、まだネイキッドブームが訪れる前に、中身はレーサーレプリカ、外見はネイキッドと言う異色の一台があったことをご存じでしょうか?時代を先取りし、先進技術を詰め込んだ異色のネイキッドモデル。TV250WOLFをご紹介します。
スズキの先見性?VJ21A TV250WOLF
時はレーサーレプリカ全盛時代1988年~1990年まだネイキッドモデルの人気はそれほど高くない時代。
いつも時代を先取りしすぎる感を持つスズキが、やはりやってくれた一台がTV250ウルフです。
当時2ストネイキッドモデルと言えば、RZ250Rや後継機のR1-Zと少し前にはなりますがNS250Fくらいしかない時代に、レーサーレプリカをネイキッドモデルとして投入してきたスズキのチャレンジングな一台でした。
もともとネイキッドと言う言葉は、フルカウルモデルを裸にするという意味から生まれています。
それを2ストレーサーレプリカに持ち込むという大胆な発想で作られたウルフは、ただカウルを外しただけではなく、カフェレーサースタイルとしても、魅力的で非常に優れたデザイン性を持っていました。
NS250RのネイキッドモデルNS250Fはすでに新型ではなく、RZやR1-ZはエンジンこそTZRと同じものでしたが、TZRは89年には後方排気になっており、RZ・R1‐Zは鉄フレームなので、どうしても戦闘力で言えば劣ってしまうので、最新モデルとしての魅力には欠けるものがありました。
そんな中、RGV250γの高い戦闘力と、ネイキッドとしての魅力を持ち合わせて発売されたのが、TV250WOLFです。
ほぼ中身はRGV250γであるWOLF
フレーム、エンジンはVガンマと共通でアルミフレームに、新型のV90度エンジン。
ガンマと比べてハンドル位置を20mm高くし、ステップ位置も下げ、街中に対応する比較的楽なポジショニングに変更してあります。
まだ89年までのNSRはラウンドラジエター(湾曲型のラジエター)を使用していない中で、ネイキッドであるにも関わらず、ラウンドラジエターを使用している迫力と豪華さ。
そして二次減速比をスプロケットで一丁落とし、出力のピーキーさをおとなしめにしてありますが、高回転域での加速はガンマ同様パワフルなものでした。
フロントブレーキはVガンマはダブルディスクとなっていましたが、大径シングルディスクに変更されていて、レプリカに要求される強力なストッピング能力よりもコントロール性にすぐれたものに変更されています。
カウルがない分ガンマより3㎏軽くなっており、街中をきびきびと走れる仕様となった為、街中、峠と限界性能よりも気持ちよく、かつ高回転域ではガンマ並みに速く走れるようになっていました。
ガンマと同じ特性の為、やはり体を入れていかないと曲がらないという部分は変わらなかったのですが、ネイキッドモデルでこれほどハングオフが決まる車種も珍しいかもしれません。
また、RGV250γがVJ22Aと進化した後も、ウルフはそのままのVJ21Jとして継続生産されました。
そして、2ストシングルモデルのWOLF200・WOLF125・WOLF50などが生まれ、他社にはみらねない2ストネイキッドモデルの充実ぶりは、やはりスズキならではだと言えるのではないでしょうか。
ただ、時代を先取りしすぎたのか、ネイキッドモデルの人気に火が付き始めるのはもう少し先であったため、人気車種とはならなかったのもスズキらしいと言えばスズキらしい面白いところです。
基本データ
型式:VJ21J
エンジン:水冷2ストV型2気筒
排気量:249cc
最高出力:45ps/9500rpm
最高トルク:3.8kg/8000rpm
全長×全幅×全高 1990×700×995
まとめ
レーサーレプリカ全盛期に、能力はそのままにネイキッドモデルとして発売されたTV250WOLF。
レーサーレプリカの人気に押され、一部のコアなファンにのみ受け入れられた一台でしたが、ネイキッドブームを先取りしたスズキの先見性はさすがと言うか、やっぱりスズキと言うかはわかれるところです。
そして、私はこういう一台を創るスズキだからこそ、根強いスズキファンがいるのだと思います。
本当に速い2ストネイキッドモデルに乗りたい方におすすめの一台です。
現在では状態の良い車両がほぼ残っていないのが、残念ではありますが。
最高の性能を持つ2スト ネイキッドモデル、TV250WOLF。
ある意味唯一無二と言ってもいい存在かもしれません。
こんな車両はもう二度と創られないと思うと、あれば手にいれたくなるのも、ファン心理というものではないでしょうか。
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