多くのライダーを魅了してきたヤマハVMAXは、Vブーストシステムを採用したことで登場から145馬力を発生するモンスターバイクとなりました。そして、スポーツネイキッドバイクとアメリカンテイスト漂うクルーザーバイクの要素を足し合わせたデザインも、多くのライダーから支持されて世界中で大ヒットとなったレジェンド級の1台です。そんなVMAXの詳細や魅力について振り返ってみましょう。
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長い歴史に幕がおろされた!2017年ヤマハVMAXの生産を終了
ヤマハは2017年8月をもってVMAXの生産を終了。
現在もヤマハのホームページ上での二輪車ラインナップの中にVMAXが含まれていますが、実質は在庫のみの販売で、根強い人気モデルだったにも関わらず、2016年10月に欧州で施行された排ガス規制『EURO4』をクリアさせることが難しくなり、1985年の登場から約32年の歴史に幕を下ろしました。
新ジャンルを確立させたヤマハVMAX
VMAXは、ヤマハがアメリカ市場を狙って開発された輸出専用モデルでした。
エンジンはヤマハ・ベンチャーロイヤルの1,198cc水冷4ストローク70°V型4気筒DOHCをベースに開発され、車体はアメリカンクルーザーとスポーツネイキッドを掛け合わせたような唯一無二のスタイルで話題騒然。
ヤマハはVMAXのコンセプトを『ゼロヨン10秒台を目標とする』とし、最高出力145PS、最大トルク12.4kg/mを実現。
当時のハーレーを圧倒する動力性能を発揮し、いつしか『マッスルバイク』と呼ばれるようになって二輪車業界に新ジャンルを確立する事に成功しました。
そんなVMAXを意識してか、ホンダはX4をリリース。
2011年に登場したドゥカティ・ディアベルもハイパワースポーツクルーザーという点で、VMAXと同じジャンルに属するライバル車となりました。
唯一無二のデザインは工業デザインの巨匠により生み出された
[120Tweet]デザイナーの榮久庵憲司が逝去、代表作にキッコーマンのしょうゆ卓上瓶など http://t.co/1qtREggXuF pic.twitter.com/XDDSTY8zeg
— CINRA.NET (@CINRANET) 2015年2月9日
初代VMAXのデザインは、日本工業デザイン界の巨匠である榮久庵憲司(えくあん けんじ)氏によるものでした。
榮久庵氏はJRA(日本中央競馬会)のロゴや東京都のシンボルマーク、秋田新幹線『こまち』などをデザインし、日本の工業デザインに多大なる影響を与えたデザイナーです。
そんな榮久庵氏の最も有名な代表作は、キッコーマンの卓上醤油瓶!
キッコーマンは榮久庵氏がデザインした卓上醤油瓶を採用したことで売上を急増させ、一般消費者に醤油といえばキッコーマンの醤油瓶を思い浮かばせるほど定着させました。
これはVMAXのデザインでも同様で、1985年の登場からデザインを一度も変更せず、どのライダーも『VMAXはこうあるべき!』と確信させるほどVMAXのデザインを定着させたのです。
これにより1985~2007年までの間、初代VMAXはデザインを変更することなく総生産台数93,196台に達しました。
だれもがアクセル全開をためらったVブースト加速
VMAXの強烈なパワーは、Vブーストシステムにより生み出されました。
インテークマニホールドの前後を繋ぐバタフライバルブがエンジン回転数6,000rpmから開き始め8,000rpmあたりで全開になります。
これにより1気筒あたりが2つのキャブレターを連結させたツインキャブの状態になって多くの混合気をシリンダー内に送り込み、強烈な加速を生み出すのです。
23年ぶりのフルモデルチェンジで2代目モデル登場
初代VMAXの国内仕様は1990~2000年の間、北米仕様の海外モデルは2007年まで販売されました。
そして、2008年6月5日にフルモデルチェンジされた2代目モデルが登場。
フレーム・フロントフォークをアルミ製にし、ラジアルマウント式6ポッドフロントキャリパーやABSブレーキなど最新技術が搭載され、エンジンはVバンクを65°に変更して1,679ccまで排気量をアップ、最高出力は海外仕様で200PSを実現しました。
また、Vブーストシステムは廃止されましたが、YCC-T(ヤマハ電子制御スロットル)とYCC-I(ヤマハ電子制御インテーク)を採用することで、リニアなスロットルレスポンスを実現。
国内の排ガス規制や騒音規制もクリアし、最高出力を151PSまでデチューンされた国内仕様も発売されています。
ヤマハVMAX初代/2代目スペック
1985年式 VMAX(カナダ仕様) | 2017年式 VMAX(カナダ仕様) | |
---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 2,300×785×1,175 | 2,395×820×1,190 |
ホイールベース(mm) | 1,590 | 1,700 |
シート高(mm) | 765 | 775 |
乗車定員(名) | 2 | 2 |
乾燥重量(kg) | 254 | 311 |
エンジン種類 | 水冷4ストロークV型4気筒DOHC16バルブ | 水冷4ストロークV型4気筒DOHC16バルブ |
排気量(cc) | 1,198 | 1,679 |
ボア×ストローク(mm) | 76.0×66.0 | 90.0×66.0 |
圧縮比 | 10.5:1 | 11.3:1 |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 145[107]/9,000 | 147.2[200]/9,000 (国内仕様:111[151]/7,500) |
最大トルク(N・m[kgf-m]/rpm) | 121.6[12.4]/7,500 | 166.8[17.0]/6,500 (国内仕様:148[15.1]/6,000) |
トランスミッション | 5速 | 5速 |
タイヤサイズ | 前:110/90-18 後:150/90-15 |
前:120/70-18 後:200/50-18 |
中古車のタマ数は多数!ヤマハVMAX中古車相場価格
初代VMAXの中古車をマイナーチェンジごとのモデルで見ていくと、初代から5型まで安いものから高額なものまで、その値段は千差万別。
そして中古車は販売されていた国によって価格差が生じており、最もハイパワーなカナダ仕様が一番高い人気を誇っています。
最もタマ数が多いものは1995~2002年の5型であり、コンディションも5万km以上走行しているものから低走行の良質車までさまざまです。
2代目モデルになると、中古車価格相場は初代の2倍近くなっています。
新車価格が国内仕様で237万円と高額のため仕方ないとも言えますが、その分中古車全体のコンディションはたいていのものが良質車です。
ヤマハ初代VMAXの型式/特徴・変更内容/中古車価格
型式[年式] | 特徴・変更内容 | 中古車価格 |
---|---|---|
初期型[1985~1986年] | 前後2ポットキャリパー。5本スポークホイール。 1986年にVブースト未搭載の欧州仕様登場(最高出力100PS)。 |
29.8万円~応談 |
2型[1987~1989年] | フロントをディッシュホイール化。 | 25.9~79.9万円 |
3型[1990~1992年] | 点火時期の進角方式がアナログからデジタルへ変更。 Vブースト未搭載の国内仕様登場(最高出力100PS)。 |
22~62.6万円 |
4型[1993~1994年] | フロントブレーキを4ポッドキャリパーにしてディスク系をφ282mmからφ298mmへ変更。 | 26.8~45.2万円 |
5型[1995~2002年] | カートリッジ式オイルエレメントを採用。2000年に国内仕様が生産終了。 | 27.8~79.8万円 |
最終型[2003~2007年] | 排ガス規制対策のため北米仕様が135PSにパワーダウン。 | 49.8~125万円 |
ヤマハ2代目VMAX中古車価格
年式 | 中古車価格 |
---|---|
2008~2017年 | 129.6~226.8万円 |
ヤマハが新型VMAXの特許出願!?次期モデルは3輪バイクとなるのか
VMAXが生産終了となれば、次期モデルの登場が気になるところ。
ヤマハがVMAXを排ガス規制に適合させることを諦めてしまえば、それを継承するモデルは二度と登場しないかもしれません。
しかし、ヤマハが平成28年9月13日に出願し特許を取得した車両の図面にはVMAXにそっくりなモデルのスケッチが使われており、次期VMAXの登場を予感させると話題になりました。
そして、今年の3月22日に特許庁が公開したのは、ヤマハが開発したフロントにダブルウィッシュボーン式サスペンションを搭載した3輪バイクで、発明の名称は『傾斜車両』。
これは、現在販売されているヤマハの3輪バイク『NIKEN』とは全く違うもので、今後の新車にフロントダブルウィッシュボーンの3輪バイクが登場する事が予想されます。
この図面のまま新型モデルが開発されるのであれば、次期VMAXとなる可能性は高いのではないでしょうか。
3輪に進化したVMAXに違和感を感じるVMAXファンも多いと思いますが、近未来的な変貌を遂げた新型VMAXの登場を期待すせずにはいられません。
まとめ
近年、厳しくなる排ガス規制によってロングセラーのバイクが次々と生産終了となり、VMAXもその中の1台となってしまいました。
また、30年以上販売してきたSR400やセローも生産終了となり、定番のロングセラーモデルを多くラインナップしてきたヤマハとしては、苦渋の決断だったと思います。
しかし、ヤマハはセローの次期モデルを開発していることを発表しており、特許申請した傾斜車両も次期VMAXとなれば、これから新型モデルと共にヤマハの名車を彷彿させるバイクが続々と登場してくるのではないでしょうか。
また、VMAXが復活しなかったとしても、これからも語り継がれる名車であることは間違いありません。
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