古くからスズキのスーパースポーツバイクとして君臨し続けるGSX-Rシリーズ。現行モデルでは600cc・750cc・1000ccとラインナップされており、さらにGSX1300R隼も初代GSX-Rの後継モデルです。これらの先代モデルとして、油冷エンジンを搭載したGSX-R1100やGSX-R750など伝説的なバイクが存在しました。その中でも伝説的な1台、GSX-R1100に注目してご紹介します。

 

SUZUKI_GSX-R1100-1986

出典:https://www.youtube.com/watch?v=mC-oIfwOULs

 

 

GSX-R1100とは

 

スズキGSX-R1100は1986年に初代モデルが発売され、1999年に生産を終了。

後継モデルとしてスズキGSX-1300R隼が誕生し、現行のスズキのフラッグシップモデルを生み出した名車として今尚国内および海外から人気のあるバイクです。

 

2ストから4ストに開発の舵を切ったスズキの傑作

1970年代中盤は海外で車に対する排ガス規制が厳しくなり始めた時期で、500ccや750ccといった大排気量2ストロークマシンの開発が厳しくなっていきます。

スズキはそれまで、GS550やGS1000といった大排気量の4ストロークエンジンを搭載したスポーツネイキッドバイクを海外で展開していましたが、1980年代に入るとホンダVF1000FやヤマハFZ750、カワサキGPZ900Rなど、ハーフカウルが取り付けられたスポーツバイクに人気が集中します。

当時のスズキには、それに対抗できるバイクとしてGSX1100S KATANAがありましたが、レースでの活躍はホンダ、ヤマハに劣るものでした。

そこでスズキはどのメーカーのものよりも速い、全く新しいスーパースポーツバイクとして、GSX-R750の開発に着手したのです。

そして1985年にスズキGSX-R750を発売。

それは400cc並みのサイズと車重に、100馬力ものハイパワーを発する1台でした。

また、海外向けのモデルとして排気量を1,052ccまでアップさせたGSX-R1100が登場。

当時のリッタークラスバイクで、最もハイパワーで最速のマシンとなりました。

 

どのメーカーよりも早くナナハンスーパースポーツを発売

スズキGSX-R750が発売された1985年は、まだどのメーカーにもナナハンスーパースポーツのラインナップはなく、GSX-R750が最初でした。

海外販売モデルでは、ホンダCB1100Rやドゥカティ900MHRは存在しましたが、どれも高額でユーザーが容易に購入できるものではありません。

そこにGSX-R750が登場したことで世界中が大注目し、海外でもナナハンでコンパクトなスーパースポーツは話題となりました。

発売直後から大ヒットとなり、さらに排気量が大きいGSX-R1100を登場させたことでこちらも話題に。

当時の世界最速バイクとして、多くのライダーが乗りたいと思う魅力あふれる憧れの1台となりました。

 

GSX-R1100の魅力

 

GSX-R750/GSX-R1100で初搭載となった油冷エンジン

GSX-R750/GSX-R1100は、油冷エンジンが世界で初めて搭載されたバイクです。

1980年代は、二輪メーカー各社がエンジンを空冷から水冷へと変えていった時期でしたが、油冷エンジンというのはスズキのみが採用した冷却システムでした。

スズキは、独自の油冷システム「SACS(Suzuki Advanced Cooling System)」を開発し、GSX-R750/GSX-R1100に初めて搭載。

当時は水冷と油冷のどちらが優れているのか、しばしば議論されることもありました。

スズキの油冷エンジンは、太いトルク感とゴリゴリとした独特のエンジンサウンド、また細かなフィンを刻む美しいエンジンのデザインなどが好まれ、スズキの油冷エンジンは未だに根強い人気を博しています。

 

油冷エンジンとは

油冷エンジンと聞くと、水冷エンジンのような冷却水でエンジンを冷ますことを、エンジンオイルに置き換えて行うものというイメージがあるかもしれません。

大まかには間違ってはいませんが、もっと詳細に説明をすると、水冷エンジンではエンジンオイルが潤滑しないシリンダーヘッドにエンジンオイルを噴射させてエンジンを冷却する仕組みです。

そしてスズキが開発したSACSでは、エンジンヘッドに大きなオイルが溜まるところを用意し、油冷専用のオイルポンプやオイル噴射によってエンジンヘッドを積極的に冷却するものでした。

これによって冷却用パーツがオイルクーラーのみとなり、冷却水や大きなラジエターを必要としない為、軽量化が測れる結果に。

しかし、オイルは水冷の冷却水よりも比熱が低いため冷却効果が低く、エンジン性能があがっていくにつれてヘッド周りの冷却が油冷ではまかなえなくなってしまい、1993年のフルモデルチェンジで水冷へと変更されました。

 

どのスーパースポーツにも採用されていない、ツインダブルクレードルフレーム

GSX-R1100の特徴は油冷エンジンともうひとつ、ツインダブルクレードルフレームを採用していたことです。

スズキは他のGSX-Rシリーズにもこのフレームを使っており、タンクの下とカウルの間からキャブレターをのぞかせるスタイルは、一目でGSX-Rであることが判るチャームポイントとなっていましたが、1993年のフルモデルチェンジでカバーが装着される事に。

また、GSX-R750は1996年のフルモデルチェンジでツインスパーフレームに変更されましたが、GSX-R1100は生産終了までツインダブルクレードルフレームが採用され続けました。

 

GSX-R1100のモータースポーツでの活躍

 

Waiting for the 2018 drag racing season like… #quistracing #dhra #dragracing #gsxr #gsxr1100 #gixxer1100

Joopさん(@joop_n)がシェアした投稿 –

意外かもしれませんが、GSX-R1100での目立ったモータースポーツの活動はありません。

理由としては、1980年代中盤からのビッグバイクレースは、ほとんどTT-F1クラスで争われており、4気筒マシンは最大排気量750ccまででした。

よって、GSX-R750では多くのレースでタイトルを獲得しましたが、GSX-R1100は公道での高速ツアラーマシンという一般的な意識が強く、この辺りのコンセプトはGSX-1300R隼と変わりありません。

ドラッグレースが盛んなアメリカでは、GSX-R1100にターボチャージャーやNos噴射などを取り付けたチューニングを施してレースに出るライダーが多く、中には最高出力370kW(500PS)を発揮したマシンもありました。

 

ヨシムラのコンプリートマシン トルネード1200ボンネビル

 


GSX-R1100のレース活動での実績はあまりありませんが、当時最強といわれたスズキ系名門レーシングチーム”ヨシムラ”のコンプリートマシン「ヨシムラ トルネード1200ボンネビル」が存在していました。

トルネード1200ボンネビルは、ヨシムラが一番最初に作ったコンプリートマシンであり、1987年型GSX-R1100をベースに制作されています。

また、ヨシムラはGSX-R750で1985~1987年までの全日本ロードレース選手権TT-F1クラスを3連覇しており、そのノウハウのすべてをトルネード1200ボンネビルに注ぎ込みました。

そしてトルネード1200ボンネビルの排気量を1108ccまで拡大し、最高出力は170~185psまでアップ。

最高速度は290km/h以上で、0-400m加速で9.8秒を実測し、わずか3台のみ制作・販売されました。

 

GSX-R1100のスペック

 

1986年式 スズキ GSX-R1100 (北米仕様)
全長×全幅×全高(mm) 2,115×720×1,235
ホイールベース(mm) 1,460
シート高(mm) 795
乾燥車重(kg) 197
エンジン種類 油冷4ストローク直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc) 1,052
ボア×ストローク(mm) 76×58
圧縮比 10.0
最高出力(kW[PS]/rpm) 92[125]/9,500
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) 103[10.5]/8,000
タンク容量(L) 19
トランスミッション 5速
フロントタイヤサイズ 110/80-18
リアタイヤサイズ 150/70-18
最高速度(km/h) 249
燃費 6.8L/100km

 

GSX-R1100の中古車価格は

 

Come stop by if you’d like to see a 1986 GSXR1100 again! #fontana #motorcycle #suzuki #gsxr1100

SoCal Motorcycle Dismantlersさん(@scmotorcycledismantlers)がシェアした投稿 –


GSX-R1100は13年間も販売された人気車であるため、中古車のタマ数はそれなりに多いと思われがちですが、実はそこまで多くなく価格もリッタークラスの中古車としては高額な方です。

なぜならGSX-R1100はすべて海外への輸入車であり、日本に入っているのは逆輸入車のみ。

さらに、日本で大型免許が教習所で取れるようなったのが1996年であったため、GSX-R1100の初期型は乗れる方が少なかったので日本で購入できる人があまりいなかったようです。

GSX-R1100の中古車では1990年以降のモデルが比較的多いですが、価格は最安値で40万円ぐらいです。

状態の良いものになると、60万円以上します。

さらに1986~1990年のものはプレミアが付いており、70~100万円する中古車も多々あるため、初期モデルへのこだわりがなければ1990年代の後期型をおすすめします。

 

まとめ

 


GSX-R1100の存在は、スズキにとって非常に重要なマイルストーンです。

世界最高速マシンを長く牽引してきたGSX-1300R隼もGSX-R1100があってこそ誕生したバイク。

スズキが思い切って作り上げた最強モンスターマシンは、スズキの高性能マシンを生み出す土台となった傑作といえるでしょう。

 

あわせて読みたい

[amazonjs asin=”B01MQ1OU5G” locale=”JP” title=”バイク バッテリー MB14L-A2 一年保証 メンテナンスフリー GPZ900R Ninja 型式 ZX900A / CB750 FOUR 型式 CB750F / GSX1100 KATANA / ZZ-R1100 C 型式 ZXT10C / Z1 Series / GSX-R1100 型式 GV73A”]

Motorzではメールマガジンを始めました!

編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?

気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!