今回は、ヤマハのフラグシップモデル YZF-R1の初代モデルをご紹介!サーキットではなく、ワイディングを楽しむスーパースポーツバイクを追求したあたりが斬新な1台でした。世界中のSSバイクに影響を与え、世界中のライダーに衝撃を与えたモデルです。
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ワイディング最速スーパースポーツ!ヤマハ・初代YZF-R1
1970年~1990年代にかけ、大型スーパースポーツバイクはサーキット最速主義、または世界最高速を狙ったモデルが市場でひしめき合っていました。
ロードレースの『TT-F1』や『スーパーバイク』といったクラスでは、4ストローク4気筒エンジンで排気量750cc以下、2気筒エンジンで1,000cc以下のレギュレーションだったため、4気筒エンジンで世界を席巻した日本メーカーは、ナナハン縛りの呪縛から逃れられなかったようにも思えます。
そんな中、ホンダは900cc並列4気筒エンジンを搭載した、CBR900RRファイヤーブレードを1992年に登場させ、ツアラーともレーサーレプリカとも違うスーパースポーツ時代の黎明期を迎えることに。
そして、4気筒スーパースポーツにおいて初めて1,000ccに到達したのが、ヤマハ YZF-R1でした。
とは言ってもレースレギュレーションがまだスーパーバイクのままだったため、出場可能なレースは限られていたのですが、ヤマハはYZF-R1のステージをサーキットではなくワイディングに重点をおいたのです。
ヤマハ・YZF-R1とは
ヤマハ YZF-R1は、1997年開催のミラノショーで発表され、1998年に発売を開始します。
それまでヤマハは、YZF1000Rサンダーエースというリッターバイクを販売しており、それはホンダ CBR1100XXブラックバードやカワサキ ZZR1100といったツアラーモデルでした。
その後、CBR900RRやカワサキ ZX-9Rなど751~1,000ccまでの4気筒スーパースポーツが登場し、ヤマハも対抗すべくYZF1000Rサンダーエースの後継モデルとして、YZF-R1を誕生させます。
そして、初代YZF-R1は排気量998ccの水冷4スト並列4気筒エンジンを搭載しながら、乾燥重量177kgを実現し、最高出力は150PSをマーク。
同時期に販売されていたホンダ 4代目CBR900R(SC33型)で128PS、カワサキ ZX-9R(C1)で143PSだったので、クラス最高のパワーを発揮します。
さらに、ヤマハ XJR400Rが179kgだったので、400cc並の車重にクラス最高パワーのエンジンを搭載し、パワーウエイトレシオ1.18だったことは、大きな注目を集めました。
開発コンセプトを『ツイスティロード最速』とし、普段走る市街地や高速道路、ワイディングでの楽しさや速さに注目したスーパースポーツの、誰もが経験したことのないハンドリング性能に、世界中のライダーが驚かされ、大型スーパースポーツバイク市場において、YZF-R1の登場は革命的な出来事となったのです。
デルタボックスシャシーとロングスイングアーム化
YZF-R1の魅力は、シャープなハンドリングで、コーナーリングの侵入から旋回、立ち上がりまでライダーが思い通りのラインをトレースできるよう、さまざまな試行錯誤が行われました。
そんなYZF-R1の車体は、デルタボックスと呼ばれるアルミ製ツインスパーフレームに、スイングアームは一般モデルより約60mm以上もロング。
ホイールベースのうち42%をスイングアームの長さが占めているにも関わらず、ホイールベースは通常のリッターバイクより短くなっています。
これは、GP500ワークスマシンのYZR500で得た技術で、スイングアームを長くしたことでリアタイヤの前後可動域を延長させ、路面追従性を向上させることが目的です。
また、フレームもガチガチに剛性を硬くすればハンドリングが重くなってしまうため、縦剛性は確保された上で横とねじれの剛性は最適化されています。
そのため、初代YZF-R1はライバルモデルより強力なトラクションを発揮し、コーナー時の速さは圧倒的でした。
コーナリングの秘密はコンパクトなエンジン
ホイールベースのうち、約半分をスイングアームにするのであれば、メインフレームを短くし、そこに収まるエンジンを作り出さなければなりません。
バイクのエンジンは通常、クランクシャフト、ミッションのメイン軸、ドライブ軸が直線的に並ぶ構造が一般的です。
しかしYZF-R1では、クランクシャフトとドライブ軸を並べ、ミッションのメイン軸はドライブ軸の上に配置。
三軸をなぞった軌跡をクランクシャフトとドライブ軸を底辺とした三角形になるように配置し、YZF1000Rサンダーエースよりエンジンの前後長を81mm、全高を20.9mm短縮。
エンジン単体は、74.8kgから65.3kgまでの軽量化を実現しました。
これによりエンジンは前側に搭載可能となり、マスの集中化にも貢献。
YZF-R1ならではのハンドリングを生み出せたのです。
公道レースの最高峰で優勝
TT legend David Jefferies was the first man to lap at over 125mph on his way to winning the 2000 Senior TT. 18 years on, Peter Hickman has raised that by 10mph, with his final lap in the 2018 Senior TT of 135.452mph#LoveTT #iomTT pic.twitter.com/07L5iBqCuk
— Isle of Man TT Races (@ttracesofficial) 2018年12月19日
YZF-R1が素晴らしいバイクであっても、出場できる公式レースはごくわずかでした。
1998年の鈴鹿8時間耐久レースでは、Xフォーミュラークラスに出場可能で、出場したYZF-R1の最高位は総合17位、クラス3位という結果。
しかし、YZF-R1の戦場はサーキットではなく公道です。
そんな公道レースの最高峰が、マン島TTレースです。
当時のマン島TTレースのシニアTTクラスでは、4気筒エンジンも1,000ccまで許されており、1999年と2000年のレースでYZF-R1に乗ったデビッド・ジェフリーズ氏が2年連続で優勝を獲得。
公道での速さは、マン島TTレースで証明されました。
スペック
1998年モデル ヤマハ・YZF-R1 | ||
---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 2,035×695×1,095 | |
軸距(mm) | 1,395 | |
シート高(mm) | 813 | |
乾燥重量(kg) | 177 | |
エンジン種類 | 水冷4ストローク並列4気筒DOHC5バルブ | |
総排気量(cm³) | 998 | |
ボア×ストローク(mm) | 74×58 | |
圧縮比 | 11.8:1 | |
最高出力(kw[PS]/rpm) | 109[150]/10,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 108.3[11.0]/8,500 | |
変速機形式 | 6速 | |
タンク容量(ℓ) | 18 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70-ZR17 |
後 | 190/50-ZR17 | |
燃費(km/L) | 17.8 |
まとめ
First team bike 99 yzf R1 she wont win the isle of man but we got to start somewhere ae converting to race only pic.twitter.com/9Ifvj9PTnl
— Team Maori Racing (@TeamMaoriRacing) 2013年3月11日
YZF-R1は登場してから今年で21年目となり、歴代ヤマハ車の中でもSR400に次ぐ記録的なロングセラーモデルになりました。
また、初代YZF-R1は多くのユーザーが楽しめるようにサーキットでなくワイディングに焦点を置き、世界中のライダーを虜にしたのです。
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