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ホンダCBR1100XXスーパーブラックバードはデビュー当時、最高速は約300km/hを記録する世界最速バイクでした。1.1リッターという大排気量でありながらミドルバイク並みのハンドリングと安定した高速クルージングを実現した1台。そんなCBR1100XXスーパーブラックバードについての詳細をご紹介します。

https://www.flickr.com/photos/gronshots/13938822284/
CBR1100XXスーパーブラックバードとは
CBR1100スーパーブラックバード(以下:CBR1100XX)は、ホンダが1996年に発売した大型バイクで、CBR1000Fの後継モデルとして登場しました。
世界最速をコンセプトに作られた、サブネーム「スーパーブラックバード」は、アメリカ空軍で世界最速の超音速・高高度戦略偵察機「SR-71」の愛称「ブラックバード」にちなんで名付けられています。
開発の経緯
1990年代前半、カワサキZZR1100が最高速度290km/hに達したことが海外および国内のメディアで注目され、それを皮切りに最高速を競う開発競走にバイクメーカー各社が力を注ぐようになります。
そして最高速が注目されたことで、カワサキZZR1100は輸出した各国で高セールスを記録しました。
その後ユーザーからはどのバイクより速い、さらなる最高速の絶対値を求める声が増えていき、他のホンダ、ヤマハ、スズキにとっても世界最速を目指したバイクの開発は急務になっていったのです。
そこでホンダはそれまで生産していたCBR1000Fの後継モデルとして、これまでよりも空力に優れ、エンジンの排気量/最高出力/最大トルクを向上させたバイクの開発を試みました。
開発コンセプト
ホンダはCBR1100XXの具体的な開発にあたって、次の10項目を開発目標としました。
1.空力性能と動力性能の高さが瞬時に感じられるデザインを持つこと。
2.感動を呼ぶ加速性能を有すること。
3.高速クルージングでもスムーズかつ安定したコントロール性を有すること。
4.ミドルクラスマシンに匹敵するシャープかつコントローラブルなハンドリング特性を有すること。
5.先進のDual Combined Brake Systemを採用し、高速走行性能に必要十分かつコントロールしやすいブレーキシステムを有すること。
6.新開発のデュアル・シャフト・バランサーを採用し、どの回転域でも上質な振動フィーリングとすること。
7.絶妙のウインドコントロールによって、高速走行時の卓越した快適性を有すること。
8.使うほどに、走り込むほどに誇りが持て愛着の湧く造り込みをしていること。
9.夜間走行においても最大限の視界を確保し、高い安心感が得られる灯火系を有すること。
10.量産バイク史上最速であること。
出典:http://www.honda.co.jp/factbook/motor/CBR1100/199607/cbr96-002.html
まさにZZR1100を意識した開発コンセプトですが、量産バイク史上最速という事にミドルクラスバイクのような軽快なハンドリング特性を加え、高速クルージングで安定したコントロール性と上質な振動フィーリングをもたらすことでZZR1100では弱点とされた部分をカバーし、優れた性能を目指したのです。
デュアルシャフト・バランサーを初採用

出典:http://www.honda.co.jp/factbook/motor/CBR1100/199607/cbr96-005.html
CBR1100XXのパワーユニットには、CBR600FおよびCBR900RRで採用されたホンダ独自のアッパークランクケースとシリンダーブロックが一体型デザインになった新設計エンジンが搭載されています。
先代モデルのCBR1000Fより約140ccの排気量を上げながら、エンジンだけで10kgも軽量化され、エンジンをフレームに搭載する際は、CBR600F/CBR900RRのようにシリンダーをやや前傾にしてフレームに取り付けました。
また、デュアルシャフトバランサーも採用してマスの集中化が図られ、CBR600F/CBR900RRのような軽快なハンドリング特性に貢献しています。
そして新エンジンの注目ポイントは、エンジンから発せられる高周波振動(2次振動)を解消するために2軸2次バランサーを採用した事。
2本のバランサーをクランクシャフトの前方と上部後方に搭載し、バランサー自身が持つ加振力をほぼ完全に打ち消して不快な振動を抑制しスムーズな加速を実現する事により、ライダーの快適性に寄与しました。
CBR1100XXスーパーブラックバードの魅力

出典:http://www.everystockphoto.com/photo.php?imageId=11343276&searchId=20b523869712be0eb73b06bc977c6c57&npos=7
CBR1100XXは時速300キロ近くまで到達する運動性能に高速クルージングでの安定性を兼ね備え、大型バイクにも関わらずワイディングでは軽快なハンドリングで、そこそこのペースで走っていても不安を感じさせません。
ホンダがCBR900RRやCBR600Fなど、大型バイクでありながら400ccバイクのようなコンパクトさと軽快なハンドリングを追求したモデルを登場させた事は、CBR1100XX開発における副産物!
大型バイクでありながらスーパースポーツのような運動性能も併せもつ、ハイスピードツアラーとしての存在を強く意識させた1台といえるのではないでしょうか。
CBR1100XXスーパーブラックバードのモータースポーツでの活躍

Photo by englishmeeting
CBR1100XXは発売当初に世界最高速バイクとして人気があったため、北米ではドラックレースで使われることが多々ありました。
そしてターボキットやロングスイングアームなど、多くのアフターパーツも販売されていたため、北米ユーザーの中にはドラックレース仕様のカスタムを楽しむ方も。
日本では軽快なハンドリング性能を活かして、大型バイクのレースにCBR1100XXを起用するライダーやレーシングチームも存在し、ツインリンクもてぎで開催されている世界最大の草レース”もてぎ7時間耐久レース”に1998年、CBR1100XXで出場したチームが予選5位・決勝7位という結果を残しています。
CBR1100XXスーパーブラックバードのスペック

© Honda Motor Co., Ltd.
1996年式[前期] | 1999年式[中期] | 2001年式[後期] | ||
---|---|---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 2,160×720×1,170 | 2,160×720×1,200 | 2,160×720×1,200 | |
ホイールベース(mm) | 1,490 | 1,490 | 1,490 | |
シート高(mm) | 810 | 810 | 810 | |
タンク容量(L) | 22 | 24 | 24 | |
乾燥重量(kg) | 223 | 223 | 225 | |
エンジン種類 | 直列4気筒DOHC16バルブ | 直列4気筒DOHC16バルブ | 直列4気筒DOHC16バルブ | |
内径×行程(mm) | 79.0×58.0 | 79.0×58.5 | 79.0×58.5 | |
総排気量(cc) | 1,137 | 1,137 | 1,137 | |
圧縮比 | 11.0 | 11.0 | 11.0 | |
燃料供給装置 | キャブレター | 電子制御噴射式(PGM-FI) | 電子制御噴射式(PGM-FI) | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 121[164]/10,000 | 121[164]/9,500 | 74(100)/8,500 【133.9(152)/9,500】 |
|
最大トルク(N・m[kg-m]/rpm) | 124[12.7]/7,250 | 124[12.7]/7,250 | 98(10.0)/6,500 【124(12.7)/7,250】 |
|
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | 常時噛合式6段リターン | 常時噛合式6段リターン | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70 ZR17 | 120/70 ZR17 | 120/70 ZR17 |
後 | 180/55 ZR17 | 180/55 ZR17 | 180/55 ZR17 |
※【 】内は海外仕様
CBR1100XXは、1996年のデビューから2度のモデルチェンジが行われています。
1999年の2代目モデルで燃料供給装置をキャブレターからインジェクションに変更し、マフラーをサイレンサー一本出しから二本出しに変更。
さらにヘッドライト下部にある開口部から空気を取り入れ、エアクリーナーまで届けるラムエアを導入するなど、外観の変更は少ないものの、中身はかなりモディファイされました。
2001年モデルからは日本国内仕様が登場し、最高出力100PSまでデチューンされてスクリーンが30mm上がったことで、車体の全高が若干上昇。
欧州でも自動車排ガス規制が見直された事に対応するため、排ガス浄化装置を追加したことにより海外仕様のCBX1100XXは最高出力が152PSまでパワーダウンしました。
まとめ

Photo by David Dawson
CBR1100XXは、ホンダ二輪車開発の伝説的な存在であった山中勲氏が最後に開発したバイクです。
山中勲氏はCBR900RR、NR750といったホンダを代表するマシンの開発現場や生産工程で指揮をとってきた方であり、その集大成と呼ばれる1台。
彼が作り出した最高傑作は、これからも語り継がれる名車になることは間違いないでしょう。
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