MotoGP™チャンピオンマシンであるホンダ RC213Vが公道で乗れると聞けばウソのように思えますが、それに限りなく近いことが可能になりました。それは、ホンダ RC213V-Sの登場です。RC213V-SはMotoGPクラスチャンピオンマシンRC213Vのレプリカバイクで、世界中のバイクを探しても、これほどMotoGPマシンに近い市販バイクはないでしょう。そんなRC213V-Sの正体とはいったい!?
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ホンダワークスマシンに最も近づけたRC213V-S
RC213V-Sは1992年に登場したホンダ NRによく似ています。
ホンダ NRとは500ccGPレーサー NR500と耐久レーサー NR750を再現するために楕円ピストンエンジンを搭載し、限定発売されたスペシャルバイクでした。
一方、RC213V-SはMotoGPマシン ホンダRC213Vを意識して製作されたスペシャルモデル。
RC213Vと全く同じとまではいきませんが、MotoGPクラスに参戦するプライベーター向けに登場した市販レーサー『RCV1000R』をベースに製作され、車体構成やジオメトリーなどはRCV1000R、またはRC213Vをそのまま踏襲しています。
ホンダ・RC213Vは世界一乗りやすいマシン
ホンダ RC213V-Sは2015年3月27日に開催された東京モーターサイクルショー2015で発表され、同年7月13日に予約が開始されました。
価格はなんと2,190万円!販売台数は明かされていませんが、約200台強を製作したとされています。
GPマシンのRC213Vを設計するうえで、ホンダが考える『世界一速く走るマシンとは世界一操りやすいマシン』であることを前提とし、市販レーサーRCV1000Rをベースに開発。
そのため、大型二輪車免許を取得していれば、だれでも乗ることは難しくありません。
さらにスピードレンジが高くなっても、扱いやすさやコントロール性能に変化はなく、公道からサーキットまでオールマイティに楽しめる、バイクの究極系がRC213V-Sといえるでしょう。
ホンダ・RC213Vとは
ホンダ RC213VはMotoGP™に参戦するホンダのワークスマシンです。
排気量1,000ccのV型4気筒エンジンを搭載し、現行モデルの馬力は250PSも発生するとされるプロトタイプのレーシングバイク。
ホンダはRC213VをMotoGP™に投入後、2012~2014年と2016~2017年のシーズンでマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得しているので、実質的に世界最速のバイクと言っても過言ではありません。
ホンダ・RV1000Rとは
RCV1000RはホンダがMotoGP™に参戦するプライベートチーム向けに開発した市販レーシングマシンです。
MotoGPクラスでは各メーカーが開発するマシンが参戦する『プロトタイプクラス』とは別に、『オープンカテゴリー』が作られており、RCV1000Rはそのオープンクラスに沿ったマシン作りがなされています。
オープンクラス設立初年度の2014年は、レオン・キャミア選手、ニッキー・ヘイデン選手、カレル・アブラハム選手、スコット・レディング選手、青山 博一選手がRCV1000Rに乗って参戦。
このうちRCV1000Rで2014年シーズン全戦参戦したスコット・レディング選手は81ポイントを獲得し、シリーズランキング12位となっています。
キットパーツ装着で215馬力
国内仕様のRC213V-Sは最高出力70馬力。
日本の道路交通法に合わせたセッティングとはいえ、かなりのデチューンです。
これを知ればがっかりする方もいると思いますが、実はキットパーツを搭載すれば215馬力を発揮する事も可能。
よって、RC213V-Sの本来のポテンシャルは公道仕様になったことで大部分を封印されているということになります。
しかしRC213V-Sのキットパーツ装備車であれば、サーキットの全開走行でRCV1000Rと同等タイムを出せるかもしれません。
RC213Vとの決定的な違いはエンジン/ミッションにあった
RC213V-SはRC213Vの公道バージョンといっても全く同じではなく、エンジンやトランスミッションなどは大きく変更されています。
RC213VとRC213V-Sの違い:エンジン
ワークスマシンRC213Vは、エンジンヘッド内のバルブ駆動に『ニューマチックバルブ』を採用。
ニューマチックバルブはバルブの開閉にスプリングを使わず、窒素を用いた気圧でバルブの開閉を行います。
なぜなら、気圧操作であれば高回転になってもバルブサージング(バルブを戻すバネがカムの速さに追いつけず正常に動作しない)がおこらず、エンジンヘッド内の軽量化にもつながるからです。
そのため近年のMotoGPマシンのほとんどにニューマチックバルブが採用されていますが、価格があまりにも高額になるため市販車には搭載されませんでした。
そんなRC213V-Sには、通常のバルブスプリングを使った機構が採用されています。
また、カムの駆動にはカムギアトレインが採用されており、高回転域まで正確にクランクの駆動をカムに伝えることができ、カムギア同軸のエキセントリック調整機構を採用してギアを交換することなくバックラッシュ調整を可能としました。
実は過去、ホンダのV4エンジンの多くにカムギアトレインが採用されていましたが、騒音規定に沿わなかったため消滅。
しかし、RC213V-Sではクランクからカムまでのギアに高耐久/高精度/小型を追求したことで騒音問題も解決しています。
RC213VとRC213V-Sの違い:トランスミッション
RC213V-Sはトランスミッションがコンベンショナル方式(常時噛合式ミッション)で通常のバイクと大きな変化はありません。
一方、RC213Vにはシームレス式ミッション(ドッグクラッチ式)が搭載されています。
1速から2速へシフトアップする際に、通常ニュートラルを間にはさみますが、シームレス式であれば、1速のドグが噛んだまま、2速のドグにも入っているため、ニュートラルを介さず1速から2速にシフトアップが可能。
さらに、2速と3速、3速と4速など常に2つのギアが噛み合った状態を生み出すため、とても効率的にシフトチェンジができるのです。
その最たるものがクラッチレスのシフトアップで、クラッチを握らずにシフトアップできるのでシフトチェンジする瞬間の空走時間は事実上ゼロ。
実際のRC213Vのシームレス式ミッションはブラックボックスで、中身はどうなっているのか明らかにされていませんが、トランスミッションのコンベンショナル式とシームレス式は明らかな違いで、RC213Vに搭載されるシームレス式ミッションだけで7,000~8,000万円とされる超高額パーツです。
ホンダ・RC213V-S【日本仕様/キット装着】のスペック
RC213V-S | RC213V-S(キット装着) | ||
---|---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 2,100×790×1,120 | 2,000×770×1,120 | |
シート高(mm) | 830 | 830 | |
軸間(mm) | 1,465 | 1,465 | |
車両重量(kg) | 170 | 160 | |
エンジン種類 | 水冷4ストロークV型4気筒DOHC16バルブ | 水冷4ストロークV型4気筒DOHC16バルブ | |
総排気量(cc) | 999 | 999 | |
内径×行程(mm) | 81.0×48.5 | 81.0×48.5 | |
圧縮比 | 13.0:1 | 13.0:1 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 117[159]/11,000 | 158[215]以上/13,000 | |
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) | 102[10.4]/10.500 | 118[12.1]以上/10,500 | |
始動方式 | セルフ式 | セルフ式 | |
燃料タンク容量(L) | 16.3 | 16.3 | |
変速機 | 常時噛合い式6段リターン | 常時噛合い式6段リターン | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17M/C | 120/70ZR17M/C |
後 | 190/55ZR17M/C | 190/55ZR17M/C |
まとめ
スーパースポーツバイク好きのライダーなら、一度はMotoGPで走るメーカーワークスマシンに乗ってみたいと望む方は少なくないはず。
しかし、憧れのワークスマシンに乗れるのは、ほんの一握り。
実際にRC213Vに乗る事ができるライダーは、マルク・マルケス選手とダニ・ペドロサ選手、そしてホンダのテストライダーだけです。
では、RCV1000Rはというとマシン2台とスペアエンジン2基で約1億3,000万円!RCV1000Rの後継モデルRC213V-RSなら約2億3800万円といわれています。
高額モデルは、多くのスポンサーを持つプライベートチームでなければ所有できません。
同価格帯であれば4輪で比較するをすると、ポルシェ911GT3が購入できてしまいます。
そんなバイクに一般ライダーが乗ることを可能にしてくれたのはRC213-S!
それを考えれば2,190万円は納得できる金額ではないでしょうか。
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