ライトウェイトスポーツの究極系とも呼べる、ヤマハSDR。GP125ccクラスマシンのような車体に200cc単気筒エンジンを搭載し、直線ではなくコーナーで勝負する!そんな作りのバイクでした。2輪市場ではあまり人気を得ることができず、わずか2年しか販売されませんでしたが、今一度振り返ってみると、素晴らしいコンセプトや車体設計、こだわり抜かれたデザインを併せ持った究極の1台だと感じることができます。
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ヤマハSDRとは
1987年7月に発売されたヤマハSDRは、レプリカブームだった当時の流行りから逸脱したデザインが印象的なモデルです。
このSDRはヤマハがあえて挑んだスタイルであり、誰にでも乗りこなせるバイクではなく、多くのバイクを乗り継いできた玄人向けの1台でした。
車体は市販レーサーTZ125と同じぐらいの大きさでしたが、搭載するエンジンは200cc水冷2ストローク単気筒を採用。
一部からは、『街乗り仕様のTZ200』と呼ばれることもあり、エンジン特性は低回転からもトルクがあって、コンパクトで軽量な車体と相まって峠の下りでは2ストローク250ccレーサーレプリカやナナハンバイクと対等に勝負ができるポテンシャルを誇っていたそうです。
速さと美しさを兼ね備えた究極のライトウェイトスポーツ
最新の技術が詰め込まれたエンジン
搭載エンジンには、クランク室リードバルブを採用し、リードバルブを樹脂で製作。
ヤマハ独自の技術である『Y.P.V.S.(ヤマハ・パワー・バルブ・システム)』を使用して適切な排気コントロールを維持することにより、全回転域でアクセル操作のクイックレスポンスとトルクあるパワー特性が生み出される事に!
キャブレターは板状のスロットルバルブを持つフラットバルブタイプ。
瞬時にシリンダー内の圧力変化に反応し、アクセルを開けてからエンジン回転数が上がるまでのレスポンスが良くなり、低燃費にも貢献しています。
美しくしなやかなTCメッキ・フレーム
SDRのフレームは、トラス構造となっており、『TCメッキ・フレーム』と呼ばれるNi(ニッケル)、Sn(スズ)、Co(コバルト)の3元素を用いたメッキ加工を採用。
通常の鉄製フレームとは違い、表面に光沢があり軽量でしなやかなフレームとなっています。
また、スイングアームもTCメッキを用いて製作され、フレームからスイングアームまでの美しい造形美を実現。
1980年代中盤からレプリカバイクがハイパワーになるに従い、アルミ製のツインスパーフレームが導入され始め、高い剛性が求められるようになりました。
そこにあえてのトラスフレームという選択は、34馬力のパワーと105kgという軽量な車体の全体バランスを考えたうえで最適なものでした。
フレームと一体になったアルミ製エアクリーナーボックス
タンク後端の下部にある『SDR』のロゴが入ったサイドカバーは、フレームと一体になったアルミ製エアクリーナーです。
通常エアクリーナーは樹脂製の箱がタンクの下あたりに装着されていますが、SDRの場合はエアクリーナーをアルミ製でフレームと一体化することにより、ストレートな吸気通路レイアウトを実現。
また、フレームの剛性を高め、横から見た時のデザイン性を良くすることにも寄与しています。
他車種のパーツを流用しレース出場するユーザーが多数
先日のテイストオブツクバの来場者のカスタムバイクのコンテスト優勝車。ベースのバイクはヤマハSDR200。やっぱりUSインターカラーはイイネ! pic.twitter.com/ZslRZRyGg0
— ミヤバラ マサトシ (@masatosing) 2014年11月13日
SDRは玄人向けのかなりマニアックな路線で売り出された、ヤマハの新しい試みでした。
しかし、レーサーレプリカバイク全盛期だった事もあり、TZRやFZRのような人気を得ることができず、販売台数も少数に留まりますが、現在は一部の熱狂的なファンがおり、草レースや2ストオンリーのレースにSDRで出場するライダーも少なからず存在します。
また、SDRは社外チューニングパーツが少ないものの、構造がシンプルなため、いくつか他車種から流用できるパーツもあり、車体の大きさがTZ125とほぼ同じなため、カウルや足回りのパーツをTZ125から流用している方も!!
他には250cc2ストロークのモトクロスエンジンや、ホンダCR500など、別車両の500cc2ストローク単気筒エンジンを搭載している方もいる程で、SDRオーナーは、それぞれ思い思いのチューニングでレースを楽しんでいます。
ヤマハSDRのスペック
1987年式 ヤマハSDR | |
---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1,945×680×1,005 |
軸間距離(mm) | 1,335 |
シート高(mm) | 770 |
乾燥重量(kg) | 105 |
乗車定員(名) | 1 |
エンジン種類 | 水冷2ストローク単気筒 クランク式リードバルブ |
排気量(cc) | 195 |
ボア×ストローク(mm) | 66.0×57.0 |
圧縮比 | 5.9:1 |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 25[34]/9,000 |
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) | 27[2.8]/8,000 |
トランスミッション | 6速 |
エンジン始動方式 | キック式 |
燃費(km/L)50km/h定地走行テスト 運輸省届出値 |
58 |
前タイヤサイズ | 90/80-17 46S |
後タイヤサイズ | 110/80-17 57S |
新車販売価格 | 379,000円 |
価格は新車以上?ヤマハSDRの中古車相場価格
SDRは1年しか販売されなかったため、中古車の数は生産終了直後から少数です。
そして2ストロークが消滅したことにより、SDRにも希少性が!!
また、カフェレーサー車両やカスタムが人気となったことで、カフェレーサー風スタイルなSDRをカスタムベースとして購入する方も増えてきました。
よって中古車市場では徐々に人気が出てきており、今では新車時の販売価格以上で売られているものも。
一時は10万円以下で販売されていたほど人気のないバイクでしたが、現在の中古車相場価格は20~45万円であり、ここ数年でかなり高騰しています。
まとめ
SDRは、1987~1988年のわずか1年間のみ販売され生産終了となりました。
やはり、レーサーレプリカ全盛期の市場では受け入れられなかったようです。
しかし現存するSDRは少なくなっているにも関わらず、バイク雑誌やWebサイトで特集されるほ、その価値が見直されています。
あと数年発売が後だったら売れていたという声もあり、たった1年で生産終了となったことを惜しむ方も少なくないようです。
あえて流行りにとらわれずに独自路線で登場したSDRは、約30年経った今になって注目され、名車といえる1台となりました。
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