ホンダ・エイプはモンキーやゴリラと同じ4ストMINIでも、さらなる速さとカスタムの楽しさを生み出した原付の革命児!残念ながら2年前に生産終了になりましたが、4ストMINIレーシングバイクに多大な影響を与えてきた名車です!

ホンダ・エイプはミニバイクレースの新スタンダードに!

© Honda Motor Co., Ltd.

ホンダ・モンキーやゴリラ、スズキ・ギャグなど、4ストMINIといえば横型エンジンが主流でした。

ホンダ・エイプはモンキー/ゴリラと異なり縦型エンジンを採用し、新しいカスタムベース車両として人気モデルになった原付バイクです。

NSR50やTZM50など2ストミニバイクが生産終了して間もなくエイプが登場し、ミニバイクレースは2ストから4ストへ徐々に移り変わるなか、エイプはミニバイクレースの新たなスタンダードへなっていき、NSF100を生み出すきっかけにもなったバイクだったのです。

ホンダ・エイプとは

2001年モデル ホンダ・エイプ / © Honda Motor Co., Ltd.

2001年モデル ホンダ・エイプ100 /© Honda Motor Co., Ltd.

ホンダ・エイプ(Ape)は50ccの原付(~50cc)と100ccの原付二種モデル(51~125cc)である『エイプ100』の2車種が存在します。

2001年2月15日~2017年8月31日の間に販売され、街乗りからレースまで幅広い年齢層から人気を得たモデルでしたが、新たな排ガス規制に対応できなかったため生産終了になりました。

若手エンジニアが作り出したニュージェネレーションバイク

エイプはホンダの若手エンジニアが主体になって開発されました。

エイプは『Nプロジェクト』(若者のライフスタイルに合う魅力的な製品を開発するNEWプロジェクト)の第1弾モデルで、ちなみに、第2弾モデルはズーマー(Zoomer)、第3弾はバイト(Bite)、第4弾はソロ(solo)でした。

『The Basic Fifty』をキーワードに余分な装飾をそぎ落とたシンプルな設計ですが、エンジンを縦型に搭載したことは大きな話題になりました。

というのも、ホンダのミッション付き原付スポーツといえば、モンキー/ゴリラ、ベンリィ50S/90Sなど横型エンジンでしたが、エイプは1970年発売『CB50』や『XE50』以来の縦型エンジン採用車だったのです。

エイプの由来は

Apeとは「類人猿、猿人、尾のないサル」を意味し、人間に最も近い動物をさします。

この意味は、あらゆる人に身近な存在で親しみやすいバイクであることを表現しています。

さらに、類人猿とはホモ・サピエンスのなかでサルからヒトへ進化したとされているため、自分らしいカスタマイズ(進化)を楽しめることを表現。

よって、開発側もあらかじめカスタムしやすいようにシンプルな設計にしたということです。

エンジンはカスタムベースとして最良の素材

1986年モデル ホンダ・XR80R / © Honda Motor Co., Ltd.

エンジンはモトクロスレーサー『XR80R』のエンジンがベースになり、空冷4スト単気筒OHCエンジンは最高出力3.7PS、エイプ100で6.3PSを発揮。

絶対的なパワーは弱いと感じますが、もともと意図的にカスタムベースとして開発されたため、多くのパーツメーカーからはさまざまなカスタムパーツが販売され、モンキー/ゴリラと人気を二分するモデルにまでなっていきました。

前期型と後期型の違いは

左:前期型、右:後期型 / © Honda Motor Co., Ltd.

2007年12月4日にエイプは排ガス規制適合のためにマイナーチェンジされ、それに伴い後期型といわれています。

型式はBA-AC16からJBH-AC16に変更され、キャブからインジェクションへ変更、エキパイに新しい三元触媒を内蔵、点火方式をフルトランジスタ式バッテリー点火へ改良され、出力とトルクを落とさずに燃費は3km/リッターの向上を実現しています。

約1年遅れることエイプ100の方もマイナーチェンジを実施に、型式がBC-HC07kらEBJ-HC07へ変更し、こちらはインジェクション変更ではなくキャブレターのセッティング変更のみ。

さらに、エキゾーストパイプ内に3元触媒を内蔵、二次空気導入装置を追加、イリジウム製プラグの変更し、燃費の変化はないですが最高出力は7.0PSから6.3PSへ、最大トルクは0.71kgf・mから0.67kgf・mにダウンしています。

前後ディスクブレーキ搭載のタイプD登場

2008年モデル ホンダ・エイプ50タイプD (後期モデル) / © Honda Motor Co., Ltd.

前期型は前後スチールホイールとドラム式ブレーキを搭載していましたが、後期型では前後ディスクブレーキとアルミホイールを装着した『タイプD』が追加発売されています。

足回りを変更したことでタイプDでは通常モデルよりも2kgの軽量化を実現しています。

エンジンは横型派それとも縦型派

© Honda Motor Co., Ltd.

4ストMINI愛好家にとっては、横型と縦型のどちらが良いのか永遠のテーマ。

横型派か縦型派か、それぞれ愛好家の好みが異なりますが、どちらが速いかというと明確な解答はありません。

というのも、どちらもそれぞれ良いところがあり、一般的にいわれているのが横型は軽量でトルクがあることからショートコースで速く、縦型は横型より重いがチューニングで高回転型にできて直線スピードを稼ぐことができまるため広いロードコースでは速いとされます。

ホンダのミッション付き原付バイクは、モンキー、ゴリラ、スーパーカブ、リトルカブ、マグナ50、ベンリィ、ダックス、シャリー等々多くのモデルが生産されたため、パーツが無数に流通していることと、カスタムのノウハウが多く出回っています。

しかし、最大の難点はシリンダーヘッドが横向きのためブレーキングの際にフロントタイヤとエンジンヘッドが当たってしまうことがあります。

一方、縦型はエンジン単体で横型より重いですが、ブレーキングでもシリンダーヘッドが干渉することはなく、エンジンをロングストロークまたはボアアップ化しやいところが利点。

エンジンはタンク下へスッポリと格納され、重量バランスが良く、腰下前部とフレームがマウントによって搭載されるため、エンジン自体がフレームの役目が担えます。

NSF100ができたのはエイプがあったからこそ実現できた

NSF100 / © Honda Motor Co., Ltd.

ホンダ・NSR50はミニバイクレースのスタンダードモデルでありましたが、1999年モデルを最後に生産終了となりレースも4スト化していったためミニバイクレースのライダーは新しいベース車両を模索していました。

そんな中で登場したエイプは50ccと100ccがあったことと、イジりやすい設計であったことからエイプに乗り換えるライダーもいました。

一部のライダーの間ではエイプのエンジンをNSR50のフレームにスワップして走っており、これが流行ってエンジンスワップのためパーツも多く販売されました。

また、2000年代からSUGOミニバイク6時間耐久や鈴鹿Mini-Moto4時間耐久など、大規模なミニバイク耐久レースが開催されるようになり、エイプ100で出場するチームのほかにNSR50にエイプ用エンジンをスワップしたマシンで出場するチームもあり、NSR50+エイプ用エンジンといく組み合わせが徐々に流行っていきます。

そして、HRCもNSR50のフレームにエイプ100のエンジンを搭載したNSF100を発売。

NSR50とエイプ用エンジンを組み合わせていたライダーが多かったからか、それともエイプ100を開発した時点でNSF100開発の構想があったか定かでないですが、エイプ100がNSF100を生み出したのは確かな事実。

エイプは4ストMINIレースの礎を築き上げてきたバイクなのです。

スペック

2008年モデル ホンダ・エイプ100 (後期モデル) / © Honda Motor Co., Ltd.

2008年モデル ホンダ・エイプ50 2008年モデル ホンダ・エイプ100
型式 HBH-AC16 EBJ-HC07
全長×全幅×全高(mm) 1,710×770×970 1,715×770×970
軸距(mm) 1,185 1,190
シート高(mm) 715 715
乾燥重量(kg) 84 90
エンジン型式 AC16E HC07E
エンジン種類 空冷4ストローク単気筒OHC 空冷4ストローク単気筒OHC
排気量(cm3) 49 99
内径×行程(mm) 42.0×35.6 53.0×45.0
圧縮比 9.2 9.4
最高出力(kW[PS]/rpm) 2.7[3.7]/8,000 4.6[6.3]/8,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 3.6[0.37]/6,000 6.6[0.67]/6,000
変速機 5速 5速
タイヤ 120/80-12 55J 120/80-12 55J
120/80-12 55J 120/80-12 55J
燃費(km/ℓ)
※60m/h定地走行テスト値
93.0 55.0
新車価格(円) 278,250 313,950

まとめ

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Honda_Ape

エイプはモンキー/ゴリラ同様に操る楽しさとイジる楽しさ両方を兼ね備えたバイクでした。

原付免許取得したばかりの10代からも支持され、いずれは自動二輪免許さらには大型自動二輪を取得するライダーのための入門車両としても最適なバイクでした。

ミッション付き原付二種バイクはエイプからグロムへバトンタッチされ、4ストミニバイクレースにおいてグロムのシェアを伸ばしていますが、一方で若手ライダーを育てるバイクではNSF100はまだまだ健在!

また、今もエイプでレースに出場するライダーも多いです。

4ストMINIを速く走れてサーキットでも楽しめるカテゴリーにできたのは、エイプあってからこそ成し遂げることができたのです。

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