かつて航空機の整備士だったという、少し変わった経歴を持つ村井さんが代表を務める「ムライケ・スピード・ファクトリー(以降:ムライケ流)」は、コペンの専門店ですが、2013年の東京モーターショーでホンダS660を見かけ、「これは航空機のようにデザインできる」と直感。お得意のコペンに続き、S660のアフターパーツの開発にも着手します。

掲載日:2019/07/09

Photo : Yukio YOSHIMI / Text : Takayuki KIMURA

マクロスをデザインモチーフに


「航空機風にS660をイメージするにあたり、他のブランドではやっていないものを、と考え、自分が大好きだったアニメのマクロスをデザインモチーフにしました」と村井代表。




マクロスとは80年代初頭の人気テレビアニメ、「超時空要塞マクロス」のことで、実在する戦闘機に酷似した飛行形態から、巨大ロボットに変形するという斬新なコンセプトのSFアニメです。

村井代表が大好きだという同作に登場する可変戦闘機、「VF-1Sバルキリー」が、このS660のイメージソースだそう。

「S660を初めて見たときに、このバルキリー化が似合うなと。自分と同年代の40~50代の方にササリそうなこの素材を、いかにそのものズバリなキャラクターをボディに貼らずに思い起こしてもらえるか、それが製作時のテーマでした」と村井代表は語ります。

さらにマクロスの中でも、特に再現したかったのが主人公、「一条 輝」、ではなく通称スカルリーダーの「ロイ・フォッカー機」で、白いボディ全体に黄色と黒で表現されるロイ・フォッカーの愛機、「VF-1S」がそのモチーフです。

識別番号001など、細部まで再現されており、このS660を製作するにあたり、35年振りくらいにマクロスをジックリと鑑賞したとのことでした。

幌・天井のスカルデザインはプリント。


マクロス統合軍の前後エンブレムなどは、3D形状のドームシールで表現されています。

灯火類、オーディオ、室内…随所に“ワンオフの匠”ムライケ流が光る!

プレミアムなものを少数で展開するのがムライケ流ということで、このS660には数多くのワンオフパーツが施されています。

もちろんワンオフとはいえ、希望すれば購入は可能です。





まずは灯火類。
ヘッドライトとテールランプは純正のように見えますが、実は純正をベースにしたオリジナル加工品で、通常は真ん中2灯のロービームですが、ボディ中央側にHi-Loの切り替えイカリング付きプロジェクターを装着。

さらに、ウインカーの両端をポジション化し、4灯が全点灯する仕様に変更されています。


また、ライト下にはシーケンシャルウインカーも装備され、リアも上部がシーケンシャルウインカーに変更され、純正のウインカー部分をブレーキランプ化。



さらにドアミラーも、ミラー側はシルクブレイズのウイングミラーを装着し、アウター側はオリジナルのLEDで加工されています。



また、左右のテールランプをつなぐセンター部分も点灯させ、リアバンパーダクト内の左右リフレクターもLED化。

純正ルックを保持しながらも、点灯パターンは激変させたスペシャルな仕様となっています。



内装は、赤と白をキーカラーにし、外装と差別化。

さらに右と左を左右非対称とすることで、他では見ない特別な仕様となっています。



また、Aピラー部にアルパインのツイーターを埋め込み、ドアには17cm口径のアルパイン製スピーカーをアウターバッフル化。

ロックフォードのアンプは、助手席下にインストールされています。

ちなみに、Aピラーのツイーターは当初、もっと上部に装着されていたそうなのですが、ピラーの傾斜角が寝ているために高音がうるさく、現在の位置で落ち着いたのだそうです。


さらに、純正オーディオはレスにして、インパネにメインで鎮座する9インチのiPadミニを使用。

Bluetoothで、オーディオをコントロールしています。

また、このiPadのステーもオリジナルで、空調操作をするときは縦に可変できるギミックも装備されています。


シフトノブは、純正の丸型(重さ:150g)に対して縦型(重さ:380g)をオリジナル製作。

重量感のあるシフトフィールが楽しめる仕様となっています。


さらには、オリジナルのヒッチメンバーまで装着され、GTウイングのステーとしても活躍しているこのアイテムは、実はヒッチの接合部分の加工により市販の自転車用キャリアも接続可能。


写真のような小径自転車からマウンテンバイク、ママチャリまで、運搬可能なユニークな仕様です。


そして、ワンオフのラストは運転席ドア上部にある、バルキリー仕様のコーションプレートで、このデモカーは数多くのマクロスマニアがジックリと細部を観察しにくるそうですが、意外とこのプレートの存在に気がつく人は少ないそうです。

細部にまでこだわり抜いた遊びゴコロがあるのも、ムライケ流の強みと言えるのではないでしょうか。

S660乗り必見のチューンド仕様の数々に注目!


インパクトの強いエクステリア&インテリアパーツに目を奪われがちですが、実はS660のチューニングに関しても非凡な才能を見せるのがムライケ流の真骨頂。

エンジンフードを開けると、まず目に飛び込んでくるのがエンジンヘッドカバーの上に張り巡らされた青いパーツで、実はこれ、ムライケ流の「トラスバー」なのです。


こちらは、ストラットとバックパネル、ロワアームをつなぐスチール製の補強バーで、ストラットの上部分はアルミ製。

強度を稼ぎつつ、リアからの衝突時には衝撃をうまく逃すようクラッシャブル構造も設けられた本格パーツです。

このトラスバーの効果は街乗りの際の段差などでも十分に体感できるほどで、愛知県のテクニカルな作手サーキットなら、装着前後で1.5秒もタイムが変わるというほどタイムアタックにも有効な実力派のパーツだそうです。


さらに溶接痕もレーシーなインテークパイプは、「S38FVプラス」としてブローオフバルブとセットでキット化。


純正位置のエアクリーナーはオリジナルの移設キットにより移動され、「サクションパイプキットS38」として設定(写真では非常に見えにくいのですが)されています。

そして、エンジンルーム内の高温になったエアーを吸い込むのではなく、運転席ドア後方のインテークから外気を取り込む仕組みに変更。

このエンジンルーム内と外では温度差が約50度近くにもなるということで、その効果は推して知るべし。エアクリーナーはUS製のランマックスを装着しています。

さらに、エンジンルーム内のブルー化は市販のブルーのシリコンホースとも馴染みが良く、エンジンルーム内がスッキリと綺麗に見せられるメリットも嬉しいポイントです。





また、タイヤ&ホイールについては、

「実はナローボディのS660がレースで勝てるタイヤサイズ、それがF:195/45-16(ディレッツァZ3)、R:215/40ZR-17(ゼスティノ)なんですね。このタイヤありきでホイールも設定しました。ホイールはSSR・MS1RをF:16×7/R:17×8でセッティングしています。

ピロアッパーのオリジナル車高調は減衰力12段調整で、F:8kg/mm+16kg/mmのツイン、R:10kg/mm+21kg/mm+ヘルパーのトリプル式です。」

とのことでした。

まずタイヤありきでホイールや足回りが決まっていくというところも、スポーツ派の多いS660乗りには嬉しい仕様ではないでしょうか。



コペン派、S660派、オーディオ派、さらにはカスタムからチューニングまで、あらゆる志向にヘビーに精通するムライケ流。

商売というよりは、好きなクルマをひとつずつカスタム&チューニングし、さらに遊びゴコロをプラスした、村井代表の思いが何よりも大きいと言えます。

このS660を展示するイベント時には、ロイ・フォッカーのヘルメットも併せて展示しているそうなので、是非気軽の声をかけてみてくださいね。

マクロスからS660のチューニングまで、話の尽きない濃厚な時間が過ごせることは間違いありません。

Motorzではメールマガジンを配信しています。

編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?

配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!