今でこそボディは大衆車ながらも、レースやラリーを見越して専用エンジンを積んだモデルというのは珍しくありません。しかし、ルノー5 ターボ2が登場した1978年当時は、その奇抜なコンセプトに誰もが驚愕。ベースはFFのホットハッチながらも、エンジンをリアに移動させて駆動方式はMR。唯一無二の存在として異彩を放っていた、5ターボを高性能な街乗り仕様に変えたのが、5ターボ2です。
WRCでの勝利を手にすべく開発された、ルノー5 ターボ2
1973年にWRC(世界ラリー選手権)が始まり、フランスのルノーは初年度こそアルピーヌ・ルノーA110で優勝したものの、以降はイタリアのフィアットに押されていました。
フィアットはランチア・ストラトス、フィアット 131アバルトラリーなど、WRCでの優勝を見据えたモデルを次々と投入し、ルノーは手も足も出ない状態にあったのです。
ルノーも、ル・マンやフォーミュラーなどでは何度も栄冠を手にしていたものの、欧州での人気の的はラリーでした。
そのためルノーは、ラリーにおいても活躍できるモデルを投入したいと思い、1976年にFFホットハッチの大衆車、5(サンク)のスポーツモデルであるアルピーヌを投入。
しかしモンテカルロで2位、3位を飾ったことを最後に、5アルピーヌが優勝の栄冠に輝くことはなく、前線を退きます。
それによりFFの限界を悟ったのか、ルノーの開発陣は5アルピーヌ・ターボのエンジンをパワーアッフさせ、なんとそれをトランスミッションごと“リアミッドシップに搭載”したのです。
さらに悪路を制覇するために太いタイヤを履かせるべく、前後フェンダーを広げることで、WRC制覇を念頭にしたマシン、5ターボを完成させました。
この5ターボは1978年のパリサロンに出展され、来場者の度肝を抜きます。
なぜなら、FFのホットハッチをMRにし、前後フェンダーも広がったスタイルは、元々の5とは大きく異なっていたからです。
この5ターボは1980年から1983年まで販売され、合計で1300台を生産。高い人気を誇ったことに加え、1981年のモンテカルロで優勝したことから、改良型の5ターボ2が生産されました。
ルノー5 ターボ2は街乗りを考慮したモデルでもあった
1982年に発売されたこのルノー5 ターボ2は、それまでの5ターボとは異なり、ボディの材質を一部アルミから通常のスチールへと変更。色彩の派手な内装は、大衆車の5同様の控えめなものになっていました。
そして実用性を重視た小物入れやスイッチ類なども装備され、日常での使い勝手を意識したモデルとして売り出されたのです。
しかし、街乗りを考慮したモデルでありながらも、5 ターボ2の最大出力は160ps/6000rpm、最大トルクは21.4kgm/3250rpmと高い性能を誇っており、駆動方式がMRであることも同じです。
この5 ターボ2は1985年までに3000台以上が生産され、日本にも少しだけ輸入されました。
5ターボが持つ独特のメカニズムを維持しながらも、街乗りを考慮した仕様が各国で大人気を博したことは想像に難くありません。
ルノー5 ターボ2の基本スペックと中古車価格
ルノー 5ターボ2 基本スペック
全長×全幅×全高(mm):3665×1750×1325
ホイールベース(mm):2430
重量(kg):920
エンジン:水冷直列4気筒 OHVターボ
排気量(cc):1397
最大出力:160ps/6000rpm
最大トルク:21.4kgm/3250rpm
トランスミッション:5段MT駆動方式:MR
中古車価格:660万円またはASK
まとめ
駆動方式をFFからMRに変え、街乗りも考慮した仕様となったルノー5 ターボ2。
その後、ルノーでは2代目クリオ(日本名:ルーテシア) スポーツV6という新たなMRスポーツモデルを販売します。
スペシャルモデルでないにも関わらず、ベース車両とは駆動方式の異なるモデルが市販車として世に出ることは珍しいものでした。
ホモロゲーション(競技出場のため最小生産台数をクリアするために生産する車)モデルを出した後に、こういったマシンを販売することも同じく珍しいので、5 ターボ2は非常に貴重な1台に数えられています。
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