1984年、WRCのグループBクラスに「最強マシン」と呼ばれるマシンが参戦しました。それがプジョー205 ターボ16で、市販車 205のボディをベースとしながらも、ターボエンジンを搭載。駆動方式はミッドシップ4WDという、根っからの戦闘マシンです。
WRCに新たな風を呼んだ、プジョー205 ターボ16
1981年にWRCのコ・ドライバーを引退したジャン・トッド氏は、プジョー タルボスポーツのディレクターに就任し、次なるグループBマシンの開発に着手しました。
この開発プロジェクトはM24ラリーと呼ばれ、設計には、トヨタ F1でも活躍したアンドレ・ド・コルタンツ氏、エンジニアには後々シトロエン・クサラWRカーを作ったジャン・クラウド・ボカール氏が携わります。
このM24ラリーにおいて、ジャン・トッド氏は同時期にWRCで活躍していたアウディ クワトロを研究。
クワトロの駆動方式である4WDを、新開発の車に採用することを決定します。
同時にターボエンジンをフロントではなくリアに搭載すると決め、理想的なコーナリング性能を引き出せるミッドシップ化を画策。
当時のWRCではミッドシップ車は数あれど、“ミッドシップ4WD”という組み合わせは未知の領域であり、競技中の耐久性や、エンジンやギアボックスの配置スペースなどについて、プジョー社内を巻き込む大論議を巻き起こします。
そして1984年5月のツール ド コルスで、M24ラリーで開発したマシン、プジョー205 ターボ16がその姿を現しました。
外見はベース車両のプジョー 205と似てはいるものの、ボンネットにはラジエター冷却用の開口部が設けられ、その下にエンジンはなく、駆動方式は4WD。
1.8リッターの直列4気筒のターボエンジンは、ギアボックスと共にリアへ横向きされ、サスペンションは前後共にダブルウィッシュボーン式が採用されました。
これまでとは全く異なるレーシングマシンに対し、他のワークスチームが驚愕したことは、想像に難くありません。
“ミッドシップ4WDラリーカー”の性能はまさに未知数でしたが、初陣ではランチア ラリー037、アウディ クワトロA2を圧倒。
シーズン半ばでは、1000湖ラリー、サンレモラリー、RACラリーで3連勝し、タイトルはアウディに譲ったものの、WRCに新たな風を呼び起こすことに成功します。
プジョー、2年連続のタイトル獲得
翌年1985年からは、プジョー205 ターボ16が開幕戦から参戦し、初戦のモンテカルロ、続くスウェーデンで優勝します。
そしてポルトガル、アクロポリスから1000湖まで4連勝し、合計7勝したことにより、タイトルを獲得。5勝したティモ・サロネン氏もドライバーズチャンピオンの栄冠に輝きました。
続く1986年には、同じくミッドシップ4WDのランチア デルタS4と闘い、スウェーデンやアクロポリス、ニュージーランドで優勝を飾り、タイトルを獲得。
2年連続、WRCタイトル獲得という快挙を成し遂げました。
そして1987年以降、プジョー205 ターボ16はパリ ダカール ラリーに出場し、圧倒的な速さで2連覇を達成し。「砂漠のライオン」という名で呼ばれるほどの、強さを誇ります。
アメリカのコロラド州を舞台とした、パイクスピーク ヒルクライムでは、惜しくも2位になりますが、その技術は後継競技車の405ターボ16へと活かされることになりました。
プジョー205 ターボ16の基本スペックと中古車価格
プジョー205 ターボ16
全長×全幅×全高(mm):3825×1680×1405
ホイールベース(mm):2475
車両最低重量(kg):890
搭載エンジン:直列4気筒DOHC ターボエンジン
排気量(cc):1774.6
最大出力:450ps/8000rpm
最大トルク:490Nm/5500rpm
駆動方式:ミッドシップ4WD
サスペンション:前後共ダブルウイッシュボーン式中古車価格:応談
まとめ
WRCの歴史にミッドシップ4WDという概念を持ち込んだプジョー205 ターボ16は、最速のレースカテゴリーである、グループBクラスで活躍したマシンです。
そしてグループB最後の2年間にドライバーズタイトルとマニュファクチャラーズタイトルに輝いたプジョー205 ターボ16は、今もグループB最速のマシンとして語り継がれています。
Motorzではメールマガジンを配信しています。
編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?
配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!