ルノーの実質的なスポーツ部門のひとつといえるフランスのアルピーヌは、かつてチューニングされたルノーエンジンを載せた鋼管フレームに軽量ボディをかぶせたスポーツカーを得意としており、WRC初代王者となったA110でその名声を高めました。そこから次世代を担ったA310はGTカー色が強く、後世に残したインパクトはA110ほどではないとはいえ、これもまたアルピーヌ一族である事に間違いはありません。
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ラリーを制したA110の次世代、ポルシェ911を意識したA310
1973年に名機A110がWRC(世界ラリー選手権)初代チャンピオンマシンとなる2年前、1971年に発表・発売されたアルピーヌA310は、A110の後継車と言われる事もありますが、大型化されて2+2シーターのゆったりとしたボディの車で、どちらかといえばポルシェ911をライバル視したGT的な車でした。
鋼管バックボーンフレームのリヤにエンジンを載せ、後輪を駆動するRRレイアウトや、軽量なFRPボディという点はA110から踏襲していたものの、後席に実用性を持たせるためにホイールベースは170mmも延長。
125馬力の1.6リッター直4SOHCエンジンは、後にA110へも搭載された時には十分なパフォーマンスを発揮したものの、A310用としてはスポーツカーとしても、GTとしても十分な動力性能を提供しているとは言い難いものでした。
ただし、補助灯を含めた角目6灯式ヘッドライトをその奥に収め、プレクシグラス(アクリル)のカバーで覆われた横一面のヘッドランプユニットなど、鋭角的かつ優雅なフロントマスクや、上からエンジンルームがよく見える大型ガラスハッチのリアなど、そのデザインはA110とまた違った方向性で美しく、次世代アルピーヌにふさわしいものと言えます。
結局、ゆったりとしたキャビンや豪華な内装、美しい外観にふさわしいエンジンを得られなかった1.6リッター時代のA310は、販売不振で成功作とは言い難く、とてもポルシェ911には及ばなかったものの、その後、A610までの第2世代アルピーヌの原型として意義深いモデルでした。
V6のPRVエンジンにより本領を発揮したA310 V6
初期のA310がデザイン以外はかなり不本意な結果に終わった背景には、ラリーやレースで既にA110や他のレーシング・アルピーヌ、さらに後にはルノー5アルピーヌなどの大活躍に力を入れており、ルノーとしてA310のようなGTカーへ手が回りかねているという事情があったのかもしれません。
ただし、初期のA310で重大な懸念材料だった動力性能は、プジョーやボルボとの合弁で開発されていた新型V6エンジン「PRV」で解決の見通しが立っていました。
1976年には2.7リッターV6SOHCで最高出力150馬力、最大トルク20.8kgmへパワーアップされ、多少重くなったとはいえ相変わらず1tを切るボディで、最高速220km/hに達する「A310 V6」が登場。
ついにライバルたるポルシェ911(の自然吸気版)に対抗可能な動力性能を得て、販売も軌道に乗り出します。
このA310 V6では内外装、特にフロントマスクにも大幅に手が入れられ、中央にアルピーヌのバッチをつけ、左右独立した角目4灯式ヘッドランプやバンパー、スポイラー形状も大きく異なっているなど、1.6リッターモデルからの違いが鮮明です。
A310 V6には最終的にオーバーフェンダーや大型スポイラーで迫力を増し、エンジンも193馬力の2.8リッターへと強化されたホットモデルを追加。
1985年まで生産された後に、後継の「アルピーヌGTA(V6ターボ)」へバトンタッチしています。
なお、同車はA110とは異なり、WRCではツール・ド・コルスなど、フランスで開催されたイベントで3位入賞と健闘したのに留まりましたが、フランス国内選手権などのローカルイベントでは、A110を引き継ぐ形で走り続けました。
主要スペックと中古車価格
アルピーヌ A310 1600VE 1971年式
全長×全幅×全高(mm):4,180×1,640×1,143
ホイールベース(mm):2,270
車重(kg):840
エンジン:水冷直列4気筒OHV8バルブ
排気量:1,605cc
最高出力:93kw(127ps)/6,250rpm
最大トルク:147N・m(15.0kgm)/5,000rpm
燃費:-
乗車定員:4人
駆動方式:RR
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F・R)ダブルウィッシュボーン(中古車相場とタマ数)
※2021年2月現在
流通なし
第2世代アルピーヌ1番手に、A110リメイクの次に報われる日は来るか?
アルピーヌといえば、近年はA110のリメイクやF1での参戦がルノーF1からアルピーヌF1になるなど、ルノーの高性能スポーツ部門としてその存在感を高めています。
その一方でA310に始まり、A610へ至る第2世代アルピーヌのスポーツGT群が、今ひとつ影が薄くなっているのも事実です。
あるいはガソリン車時代の華々しい舞台の終わりをA110で閉め、A310リメイクで電動化時代への世代交代を、再び演出しようという意図があるやもしれませんが、ルノーのスポーツカーはA110など第1世代アルピーヌやルノースポールだけではないと、いつか知らしめる日が来ると、今は少し寂しい想いをしているA310ユーザーなども、喜ぶかもしれません。
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