スバル インプレッサの限定モデル22Bは、今では超がつくほどの希少車になっています。中古車市場に稀に流通していますが、その価格は家が買えてしまうほど高額。いったいどこに、そのような魅力があるのでしょうか。
22Bとは
22Bは簡単に言うと、スバル インプレッサの特別仕様車です。台数限定で販売され、正式なグレード名は、22B-STi バージョン。世界ラリー選手権(WRC)で、日本車初の3連覇を果たしたインプレッサのワールドラリーカー97の市販車モデルでもあります。
1998年3月に誕生し、限定生産台数は400台。新車時の販売価格は500万円でした。
高スペックなベース車両がさらにチューンナップされた22Bは、その少ない生産台数と高い性能から人気を集め、販売開始からたった2日で完売したという逸話も残っています。
ベース車両との比較
ベースとなった車両は、1992年〜2000年までの間に販売されていた初代インプレッサのE型クーペモデル、「WRX タイプR STiバージョンIV Vリミテッド」のE-GC8です。
元々ハイスペックなベースモデルに加え、22Bには更に専用の特別仕様パーツが多く装備されており、見掛け倒しではない高い運動性能を誇ります。
ここで、何がベース車両と違うのか、部位ごとにご紹介していきます。
ベースモデル VS 22B-STi バージョン
エンジン、足回り、インテリアの全てにおいて装備された専用パーツについて、ベースモデル「WRX タイプR STiバージョンIV Vリミテッド」と比較して詳しく見ていきます。
エクステリア
外観は、マクラーレンF1やジャガーXJR15のデザイナーが手がけた、「インプレッサ ワールドラリーカー 97」のビジュアルが、細部まで再現されています。
張り出した大きなブリスターフェンダーは、一台一台職人による手作業ですべてが仕上げられており、リクォーターはアウターパネルを溶接部から切り取って、ブリスターパネルを直接溶接するという、非常に高度な技術を必要とする工法で取り付けられました。
ベースモデルと比べると左右が80mm拡大されており、迫力ある顔つきとなっています。
この専用フェンダーは、部品単価1枚あたり約20万円!!ボディーカラーには、ベースモデルの色が再現された、ソニックブルー マイカ(#4F)が採用されました。
ベースモデル VS 22B ボディーサイズ比較(全長×全幅×全高)
ベースモデル:4340×1690×1405mm
22B:4365×1770×1390mm
インテリア
インテリアには、ベースモデルとは異なる専用パーツを多数装備。ステアリングホイールは、NARDI製の本革仕様で、ボディーカラーと合うようコーディネートされた色味のオリジナルシートが採用されました。
フロントコンソールにはシリアルナンバーが刻まれたプレートが付けられており、シリアルナンバーにより、400台中の何台目に作られたモデルかが判別できるようになっています。
エンジン
エンジンは、ベースモデルで苦手としていた低中回転域のトルク域から高い性能を発揮できるようセッティングされており、スポーツ走行だけではなく、街乗りも意識したトルク特性を持ちます。
2800〜5200rpmまではフラットなトルク曲線を描き、低中回転域のどこからでもアクセルを踏み込めば、鋭い加速を実現。ベースモデルに搭載された、水平対向4気筒DOHCのEJ20エンジンを元に、シリンダーは92mmから96.9mmにボアアップされ、総排気量を2212ccまで拡大。
耐久性を上げるために、鍛造ピストン、メタルガスケットなどが採用されました。
エンジンルームも、特別な塗装が施されており、インテークマニホールドとカムベルトカバーは、赤色のチヂミ塗装が採用されています。
・EJ20 VS EJ22改エンジンスペック比較
エンジン型式:EJ20
最高出力:280ps/6500rpm
最大トルク:36.0kgm/4000rpm
総排気量 1994cc
内径X行程 92.0mm×75.0mm
エンジン型式:EJ22改
最高出力:280ps/6000rpm
最大トルク:37.0kgm/3200rpm
総排気量:2212cc
内径X行程:96.9mm×75.0mm
スペックから見てもわかるように、最高出力は当時の自主規制上限値である280PSに達していますが、ベースモデルとはトルク特性が異なるため、より低回転域で高いトルクを発揮することができます。
ドライブトレーン
ベースモデルに比べ、ハードな走行と高いエンジントルクに耐え得るように、クラッチディスクにはセラミックメタルのツインプレートクラッチを採用。
クラッチ全体でベースモデルに比べ約10%軽く、慣性モーメントは約15%軽減されるなど、鋭いレスポンスと高い応答性が実現されました。
ミッションに関しても、ベースモデルでは強度面に弱点がありましたが、22Bではメインシャフトの強化と2速ギアの材質変更、各ギアに補強のためのスペシャルハードショットが追加されています。
足回り
足回りにはベースとなったラリーカーと同じブランドの22B専用に開発されたダンパーやスプリングと、ピレリP-zeroタイヤを採用。さまざまな路面状況において、高い走行性能を発揮します。
ベースモデルのタイヤサイズが、205/50R16なのに対し22Bでは235/40R17に変更されているなど、インチアップとタイヤ幅の拡大も行われました。
一方で、BBSの鍛造アルミホイールで、純正16インチとの重量差は殆どありません。
現在販売されている中古車
2021年4月現在、22Bは大手中古車販売サイトに1台だけ登録されており、その販売価格は驚きの3000万円!新車販売時の価格である500万円から、6倍もの値がついています。
今ではかなりの希少車で、過去の価格を見ても1,000万円は確実に超えているモデルです。
アメリカのオークションにて
また、つい先日のことですが、2021年4月20日に開催されたアメリカのBring a Trailerというオークションで、400台中の165台番目が落札されました。
走行距離約4万キロの車体は、落札価格312,555ドル!日本円に換算すると、約3,400万円で、海外でも高値で取引されていることがわかります。
まとめ
22Bは、かなり希少価値の高い一台で、400台の限定生産だったこともあり、街中で走っている姿を見られるのは、宝くじが当たるよな確率かもしれません。
なお、インプレッサは後に、限定特別車のS201 STiバージョンを発表し、22Bの系統がS209まで引き継がれました。