かつてFR時代の初代TE27、4代目AE86が人気となったカローラ系スポーツモデル、トヨタ カローラレビン / スプリンタートレノは、FF化した後も3代にわたり販売され続けましたが、バブル崩壊後に台頭したミニバンやSUVが隆盛を極め、クーペやスポーツモデルの需要が低迷する中で、ついに7代目AE110系が最後となりました。そして市販車としては2000年を最後に販売を終了しますが、全日本ラリーでは2014年まで活躍を続けます。

 

全日本ラリー2007第1戦でJN-2クラス優勝のミツバ WM DL ラック レビン(高橋 悟志 / 高橋 浩子 組)  / 出典:http://www.jrca.gr.jp/event/2007_rd1_result.html

 

 

最後にして最強の”レビトレ”、AE110系

 

トヨタ AE110系カローラレビン(前期型)  / © 1998-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

 

FF化された5代目AE90系以降、1,500~1,600cc級FFスポーツクーペとして販売を続けられていたトヨタ カローラレビン / スプリンタートレノ(以下、『レビトレ』)ですが、1990年代初めのバブル崩壊以降は、急激にその存在感を薄めていきます。

そしてミニソアラ / ミニスープラ的存在でヤング層の手軽なデートカーとして、また軽快でスポーティな5ナンバーサイズのアシ車として人気のあった5代目AE90系を受け継いだ6代目AE100系も基本的に同じ路線を受け継いだのですが、それらの需要が失われてしまったのです。

手軽なアシ車を求める層は、より安価で実用性の高い軽自動車やコンパクトのハッチバック車やトールワゴンに流れていき、クーペのデートカー需要はSUVやミニバンがそれに取って代わりました。

従って、バブル時代に開発された豪勢なAE100系の人気は急激に下降していき、バブル崩壊以降の急激な経済情勢の悪化は、ベースとなるカローラ / スプリンター自体にも猛烈なコストダウンを迫ったのです。

そうなると、シリーズ各モデルはそれぞれのキャラクターにより特化しつつ、コスト削減のためにプラットフォームなど先代の基本コンポーネントを流用し、余計な装飾や装備は取り除かれて軽量化。

燃費を改善するのが唯一の生き残り策でした。

そうして誕生した7代目AE110系レビトレは、ボディサイズこそ先代とほぼ変わらないものの、軽量化でスポーツ性を強調したスマートなモデルに生まれ変わったのです。

凹凸の少ないスッキリとしたボディからは、かつての『ミニGTカー』や『やる気を感じさせるスポーツカールック』は影を潜めて存在感はさらに薄まったものの、清潔感や軽快感を感じさせるシンプルさで、レビトレはもう1度再起をかけた勝負を挑みました。

 

軽量かつシンプル、4A-Gと途中追加の6MTが特徴

 

全日本ラリー2009第7戦でJN-2クラス優勝のミツバWMDLラックMgレビン(高橋 悟志 / 箕作 裕子 組)  / 出典:http://mos.dunlop.co.jp/archives/rally/race-data/report_rally_7_20090925.html

 

AE110系レビトレのラインナップは、大きく分けて以下の3種です。

AE110(『FZ』グレード):1.5リッターハイメカツインカム5A-FE(100馬力)を搭載する廉価版

AE111(『XZ』グレード):同1.6リッター4A-FE(110馬力)を搭載する中間グレード

AE111(『BZ』系グレード):1.6リッター20バルブスポーツツインカム4A-GE(165馬力)を搭載する高性能版

既に先代AE100系でレビンとトレノでグレード名の差異は無くなっていましたが、ミニGT的な性格からの変化を表すように高性能版から『GT』や『GT APEX』といった名称は消え、『BZ』となっています。

ちなみに装備の充実した『BZ-G(後期はBZ-R)』がかつての『GT APEX』相当で、装備が簡素化された『BZーV(後期はBZ-R V仕様)』は『GT』相当になりますが、モータースポーツベース車としての役割のほか、安価なカスタムベース的なグレードという位置づけでした。

また、ボディを約70kg軽量化したことや、4A-GEの改良で若干ながらパワーアップを果たすなど走行性能は向上しています。

先代から引き続き選択可能なスーパーストラットやヘリカルLSD(先代はビスカスLSD)を除けばTEMS(電子制御サスペンション)などはカット、スピーカーのみで全車オーディオレス(純正オプションまたは社外品を装着)となるなど、装備も簡素化されました。

それに伴い、カタログ上の車両本体価格も約10~30万円ほど安価になっており、必要な快適装備を追加していけば結局は先代と同じような価格になるとはいえ、必要最低限の装備さえあればいいスポーツ派ユーザーにとっては歓迎すべき点ではないでしょうか。

しかし1997年4月のマイナーチェンジでは衝撃吸収安全ボディ『GOA』化でやや重くなるとともに、BZ系の5Mが6速MTに進化、それゆえやや価格は上昇することに。

なお、レビトレの販売台数が少なかったゆえか、『4A-GE+6MT』はカローラ / スプリンターGT、カローラセレス / スプリンターマリノ、スプリンターカリブ、カローラワゴンとライトバンを除くカローラ系全シリーズに採用が拡大したほか、カリーナGTにも搭載。

日産の280馬力仕様RB25DETなどと同じく、「せっかくの高性能メカなので、とにかく載せられる車種には全部載せる。」という現象がトヨタでも起きていました。

 

ワンメイクレースのほか、ラリーでは2014年まで優勝するなど長く活躍

 

全日本ラリー2014第1戦でJN-5クラス優勝のエナペタルADVAN久與レビン(山口 清司 / 島津 雅彦 組)  / 出典:http://www.jrca.gr.jp/3224

 

最後のレビトレ、AE110系の中でもモータースポーツで活躍したのはもちろん高性能版のBZ系AE111ですが、先代AE101まで奮闘したグループAレース(JTC全日本ツーリングカー選手権)は既に無く、後継のJTCCは4ドア車レースのため出番無し。

AE111のメジャーなレース参戦で目立つのは、1995年にN1耐久でバーディクラブが走らせたレビン(三原 じゅん子 / 松永 雅博 組)や、1998年にスーパー耐久に出場した記録があるくらいです。

一方、ワンメイクレースではトヨタ自身が支援するC/SNC(カローラ/スプリンター・ノーマルカップ)こそ1999年で終了しましたが、ヴィッツおよびアルテッツァのネッツカップに移行してしまったものの、以後も地方限定レースのような形で継続。

西日本フレッシュマンレースなどではAE111ワンメイクレースが続き、富士チャンピオンレースなど台数こそ激減しましたが、2018年現在でもリザルト上ではAE111ワンメイクレース(実際にはクラス分けされて混走)が続いています。

その他の競技でもジムカーナこそ全日本級のイベント参戦は無いものの、全日本ダートトライアルでは2002年以前のA車両、2003年以降のN車両で数は少ないながらもAE111での参戦が見られます。

EK9シビックRやCJ4AミラージュRSを相手に大柄なAE111では少々辛いところでしたが、それでも2007年第5戦コスモスパークでは黒木 陽介が4位入賞を果たすなど、トヨタ最後のテンロクスポーツとして意地を見せることも!

そんなAE111がもっとも活躍したのが全日本ラリーで、1995年6月の発売直後から参戦していていましたが、基本的には『軽量版AE101』のためノウハウを生かしながらも戦闘力を上げていったことや、2BOXハッチバックのライバル達よりボディ剛性にも優れた3BOXノッチバッククーペなのも有利だったので、時代が流れてクラス区分が変わっても、格上のパワフルなマシン相手にAE111は戦い続けます。

そして2014年4月11~13日に開催された第1戦『ツール・ド・九州 2014 in 唐津』でエナペタルADVAN久興レビン(山口 清司 / 島津 雅彦 組)がJN-5クラス優勝するなど、生産・販売終了後も長らく戦い続けましたが、全日本ラリーへの参戦も同年が最後となりました。

 

主要スペックと中古車相場

 

全日本ラリー2008第3戦でJN-2クラス優勝のエナペタルADVAN久與レビン(山口 清司 / 船木 一祥 組)  / 出典:http://www.jrca.gr.jp/event/2008_rd03_result.html

 

トヨタ AE111 カローラレビン BZ-R 1998年式

全長×全幅×全高(mm):4,305×1,695×1,305

ホイールベース(mm):2,465

車両重量(kg):1,080

エンジン仕様・型式:4A-GE 水冷直列4気筒DOHC20バルブ VVT

総排気量(cc):1,587

最高出力:165ps/7,800rpm

最大トルク:16.5kgm/5,600rpm

トランスミッション:6MT

駆動方式:FF

中古車相場:19.8万~158万円(カローラレビン / スプリンタートレノ双方)

 

まとめ

 

トヨタ AE110系 スプリンタートレノ / © 1998-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

 

AE110系の新車販売当時は『もはやクーペが売れない時代』であり、主力となる4A-GEエンジンも排ガス規制強化に対応できず2002年に消滅する運命となってしまい、後継はT230系セリカやE120H系カローラランクス / アレックスなど1.8リッターの2ZZ-GE搭載車が担いました。

そして最後まで4A-GE+6MTの設定があったスプリンターカリブの生産終了(2002年6月)とともにトヨタのテンロクスポーツは消滅。

それに先立ってレビトレも消えていたわけですが、この時代のライバル達と同様、手頃な後継車が無かったために長く使われていきます。

2010年代に至るまで愛用されるくらいなら、需要があるのだから新型を作れば売れるのに、と思ってしまうのは古い90年代スポーツに共通しますが、それだけ安全性能や環境性能、コスト管理の面で、当時は今に比べ大らかで自由だったかということ。

もし、現在要求される基準を全て満たした上でAE111レビトレのような車を作ったとして、果たして今の86 / BRZより安く販売できるかと思うと、FFレビトレ最強のAE111の中古車が軽自動車の高級モデルより手頃な価格で買える今は、案外いい時代なのかもしれません。

 

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