メルセデス、BMW、アウディ、フェラーリ、ランボルギーニなど有名海外メーカーのFIA-GT3マシンばかりが目立つGT300クラス。特に今年は各メーカーがGT3マシンを一新。大半のチームがマシンを入れ替えており、レベルもGT500に劣らないくらい激化している。そんな中、「MADE IN JAPAN」で臨む日本車勢はJAF-GT規格とマザーシャシー(MC)規格のマシンが参戦。特に今年のレースを盛り上げているのが#25 VivaC team TSUCHIYAだ。開幕戦と第4戦でポールポジションを獲得し、決勝では2度の表彰台を獲得。明らかに昨年を上回る戦闘力なのだが、それは一体どこから生み出されているのか?職人魂全開のチームを追いかけた。

Photo by Tomohiro Yoshita

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2015年、つちやエンジニアリング「再始動」

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かつてはGT500にも参戦していた名門プライベーター「つちやエンジニアリング」。土屋春雄氏の息子で自身もGT500を始め様々なレースシーンで活躍した土屋武士が今度は代表となり、7年ぶりにSUPER GTの舞台にチームとして帰ってきた。

使用するマシンはGTAが資金が豊富でないプライベーターでも継続して参戦ができるようにと、コスト低減を考慮して発案された「マザーシャシー規格」のマシンの一つ、トヨタ 86 MCで参戦。

このマシンは開発テストの段階から土屋武士も関わっており、実戦投入した初年度から積極的にマシンの戦闘力向上に努めてきた。

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ドライバーは土屋武士と松井孝充のコンビ。参戦1年目からマシンの完成度は非常に高く、第3戦タイでポールポジションを獲得。第6戦SUGOでは終始力強い走りを見せ、現体制での初優勝を成し遂げた。

しかし、世界的に大人気の市販レーシングカー「FIA-GT3マシン」を使うライバルは手強く、シリーズランキングは10位に終わった。

2016年:最大のピンチをチーム全員で乗り越え開幕戦へ

迎えた2016年。チーム体制も変更なく、さらにマシンの熟成を目指していたが、開幕前のテストでアクシデントが発生。左フロントラスペンションのトラブルでコントロールを失いスポンジバリアにクラッシュ。幸いフレームへのダメージはなかったが、このマシンでレースを戦い始めて以来、大きなダメージを負うことになってしまった。

プライベーターでもあるため、すぐに替えのパーツを用意してマシンの修復を行うというのはトップチームと比べると非常に大変な労力を強いられることになる。

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それでも、開幕戦に最高の状態でマシンを持ち込むため、チームは徹夜でマシンを修復し、替えのパーツも手配完了。クラッシュから数日後に開催された富士スピードウェイでの合同テスト2日目に間に合わせた。

そこで得た手応えを胸に開幕戦岡山へ。

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松井が好タイムを記録しQ2進出を決めると、土屋武士がテストでのリベンジと言わんばかりのアタックをみせ1分25秒586のコースレコードを記録。ちょうどFIA-GT3マシンがズラリと並んだ中で「今年はどの外車が開幕戦ポールなのかなあ」という大方を予想を覆すポールポジション奪取を決めた。

約1ヶ月前のクラッシュからチーム全員が不眠不休でマシンを直し、仕上げてきた努力が実った瞬間だった。

決勝も序盤から善戦したものの、一歩及ばず6位という結果に。しかし、そこで得られた手応えと表彰台に立てなかった悔しさが、次のレースで生かされることになった。

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ゴールデンウィークの第2戦ではMC&JAF-GT勢にとっては不利と言われている富士スピードウェイで予選から速さをみせ2番グリッドを獲得。これも岡山を終えてからチームのガレージでセットアップ変更などチーム全員で議論を重ねてきた結果が実ったものだった。

そして500kmで争われる決勝では松井が第1スティントを担当。序盤は順位を落としてしまう苦しい場面も見られたが、そこはプライベーターならではの「チームの団結力」と戦略でカバー。2回目のピットストップでタイヤ無交換作戦を敢行し、順位を回復。3位でチェッカーを受け今季初表彰台を獲得したのだ。

パワー重視のバトルになりやすい富士のレースで表彰台。チーム力や巧みな戦術が光った部分もあったが、やはり昨年から土屋武士を中心に作り上げてきた25号車のトヨタ86MCの戦闘力がトップレベルまで来ているという証拠なのだろう。

2016シーズンは序盤から快進撃が止まらなかったVivaC 86 MC。第4戦SUGOでは、彼らの真の実力が垣間見えるレースとなった。