今年も一足早くシリーズがスタートしたWRC(世界ラリー選手権)。1月19日~22日まで行われたモンテカルロ・ラウンドでトヨタが見事2位表彰台を獲得しました!路面凍結もあり、コースオフするマシンが続出し最初から最後まで波乱続きだった今回のラリー。トヨタの活躍を中心に、各SSで何が起きていたのか?どこよりも詳しく、じっくり振り返っていきます。

©︎Red Bull Content Pool

Day1:SS1でアクシデント発生

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通常のラリーでは3日間で各SSが割り振られますが、19日の夜に始まったDay1。最初のSS1でアクシデントが発生します。

ヘイデン・パッドン(ヒュンダイ)がコース途中でクラッシュしマシンが横転。そこに観客が巻き込まれてしまいました。すぐにヘリコプターで病院に緊急搬送。治療が行われましたが、まもなく亡くなられました。

詳しい事故原因については主催者を中心に調査が行われていくと思われますが、立ち入り禁止エリアに観客がいたことで巻き込まれてしまったのではないかという話が多数上がっています。

今回はギャラリーが多く、最終日のSS16でも適切ではないエリアに観客が多くいて、安全確保ができないためステージがキャンセルされるという事態も発生しました。

これにより、SS1はキャンセルに。パッドンは翌日からの走行を取りやめ、モンテカルロ戦の撤退を決定しました。

Day1の順位は残るSS2で決められ、ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)がトップ。トヨタ勢はユホ・ハンニネンが3番手、ヤリ=マティ・ラトバラが9番手につけました。

 

Day2:前年王者のオジェがまさかのスタック!

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いよいよ本格的にラリーが始まっていったDay2。最初のステージとなったSS3で前年王者のセバスチャン・オジェ(M-SPORT)が足元をすくわれます。

Day1では2番手につけ、着実にトップ奪還に向けてペースを上げていたところ、コース途中の右ヘアピンに差し掛かったところで凍った路面でコントロールを失い脱輪。さらに雪に捕まってスタックしてしまいました。

ギャラリーの手を借りてラリーに復帰しますが、40秒もタイムロス。総合8番手まで後退します。昨年までは、フォルクスワーゲンで圧倒的な強さを見せていたオジェですが、雪が積もって、一部は凍結もしているという難しいコンディションに手を焼いている様子でした。

しかし、今年のラリー・モンテカルロの本当の波乱は、ここから始まりました。

 

総合2番手のミークがリタイア、トヨタのハンニネンもクラッシュ

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続くSS4では、総合2番手につけていたクリス・ミーク(シトロエン)が、わずかにラインを外れてしまい岩壁にマシンのリア部分をヒット。これで自走不可能となり、デイ・リタイア。その後、Day3でも不運が重なり最終的にリタイアを余儀なくされます。ミークにとっては散々なラリー・モンテカルロとなってしまいました。

ここまで3番手をキープしていたトヨタのハンニネンも、滑りやすい路面の餌食になってしまいます。SS5のヘアピン手前で止まりきれずにコース脇の木に激突。マシンのフロント部分を壊してしまい、こちらもデイ・リタイアを余儀なくされました。

トヨタにとっては表彰台圏内をキープしていた1台が脱落してしまいますが、着実に4番手をキープしているラトバラが後半に向けて見どころを作ってくれることになりました。

 

Day3:優勝確実と思われていたヌービルにも悲劇が…

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Day2を終えての上位は以下のとおり。

1:ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)

2:セバスチャン・オジェ(M-SPORT)+45.1秒

3:オット・タナク(M-SPORT)+45.4秒

4:ヤリ=マティ・ラトバラ(トヨタ)+2分09秒

5:ダニエル・ソルド(ヒュンダイ)+2分57秒

ライバルのトラブルやアクシデントを尻目に、ヌービルは順調にトップをキープ。Day2ではSS4~6までトップタイムを記録。Day2終盤からDay3にかけてオジェがペースを取り戻して追い上げにかかりますが、SS12終了時点で51秒のリードを確保。このままのペースで進んでいけば、開幕戦勝利も確実だろうと言われていました。

ところが、今年のモンテカルロは魔物が棲んでいるかのように次々と波乱が起こり、その手は彼にも及ぶのです。

SS13の折り返しにあたる13.8km地点でわずかにラインを外した時に右リアタイヤがコンクリートブロックにヒット。これでサスペンションにダメージが及び緊急ストップすることに。その場で修復作業を行いますが、約30分以上ロスしてしまい、優勝争いから脱落してしまいました。

ヌービルによると「左のスローコーナーでリアがスライドして、約20cmほどラインがワイドになってしまった。そこでコンクリートブロックにヒットしてサスペンションが壊れてしまった」とのこと。

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前年チャンピオンのオジェを抑えて、安定した走りを見せていただけに非常に残念な結果となってしまいました。しかし、ヌービルを始めヒュンダイ勢は確実にパフォーマンスアップを果たしている様子。第2戦以降でどんな活躍を見せてくれるのか、楽しみですね。

このアクシデントにより、トップにオジェが返り咲き、堅実な走行に徹してきたラトバラが3番手に浮上。トヨタが復帰初戦で表彰台という可能性が再び見えてきました。

 

Day4:最終日でまさかの逆転劇!ラトバラが2位を獲得!

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最終日のDay4は4つのSSが用意され、合計54kmと短いステージ構成。注目はやはりトヨタが開幕戦で表彰台を獲得できるか。

2番手のタナクとは1分33秒差、4番手のクレイグ・ブリーン(シトロエン)とは1分26秒差がついており、ラトバラとしては着実に残りのステージを走りきることに徹しますが、最後の最後でチャンスが訪れました。

SS14でタナクのマシンにトラブルが発生。エンジンの不調でパワーダウンしてしまったのです。わずか5.5kmのショートステージで12秒もロスしてしまいました。のちに調べた結果、2気筒しか機能していない状態。走行は可能ですがペースダウンしてしまうことは確実だったのです。

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タナクはSS15へ向かう途中で応急処置を行いますが、定められたサービスパークタイム以外のマシン修復はドライバーとコ・ドライバーで行わなければいけないため、完全修復はできません。

さらに作業が長引きSS15のスタートが5分遅れることに。これで50秒(スタート遅延1分につき10秒)加算ペナルティを課せられてしまいました。

一方のラトバラは、最終ステージまで見据えてペースをコントロール。SS15終了時点でついに逆転し2番手に浮上しました。

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これで、一気に優勝のチャンスも見えてきたのですが、SS16は先述の通りキャンセル。最終のSS17は雪が降り無理に攻めれるコンディションではなくなったため、確実に走り切ることに。

ポジションをしっかりと守りきってフィニッシュし、18年ぶりにWRC復帰を果たしたトヨタに、見事2位表彰台をもたらしたのです。

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なお優勝はオジェ。モンテカルロ優勝は4回目、通算39勝目をマーク。3位には、トラブルで手負い状態だったタナクが渾身の走りを見せ、そのポジションを守り抜きました。

注目のWRC復帰戦で見事な結果を手にしたトヨタ。現状の「ヤリスWRC」のパフォーマンスを見るとライバルに優っているとは言いにくい状況ですが、マシンもどんどん熟成されるでしょうし、今後の活躍から目が離せませんね。

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