オート3輪に始まり、商用車や大衆向け乗用車で、トヨタや日産ほど大メーカーでは無いものの、順調に自動車メーカーとしての実績を積んできたダイハツ工業が、初めて販売した軽乗用車が360cc時代の初代フェローでした。堅実かつ保守的な車で、同時期に登場したライバルと比較しても決して目立つ車ではありませんでしたが、これを足がかりにダイハツの軽自動車No.1への道が始まったのです。
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初代ハイゼットに続いて登場した、ダイハツ初の本格軽乗用車、フェロー
戦前からオート3輪や内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)メーカーとして定評のあったダイハツ工業は、戦後も引き続きオート3輪やエンジンメーカーとして、地味ながら戦後日本経済の復興期を支えてきました。
そして、最初は3輪だったトラックもベスタなど4輪トラックやハイラインなどピックアップトラックとなっていき、そして1960年代に入るとコンパーノで800~1,000cc級大衆車にも進出。
もちろん、軽オート3輪ミゼットでお家芸としていた軽商用車にも進出していきます。
初の軽4輪車となったのは1960年発売のL35型初代ハイゼットトラックでしたが、翌1961年にはL35V型ハイゼットバンを発売。
この3ドアボンネットバンが、事実上ダイハツ初の軽乗用車と言ってもよいかもしれません。
ただ、その頃には既にスバル360やスズライト フロンテなど本格的な軽乗用車がデビューしており、ダイハツでも初代ハイゼット後期型、水冷2サイクルエンジンに換装したL36型を発展させた軽乗用車を開発します。
そしてハイゼットはその後S36P(トラック) / S36V(1BOXバン)として型式もL系からS系に代わって独自の発展を遂げることとなり、L系を引き継いだ新型軽乗用車フェローが1966年11月に発売されました。
メカニズム的には堅実で保守的だった初代フェロー
初代フェローが発売された1966年、軽自動車はようやく十分な実用性を確保していたとはいえ、まだまだ動力性能などは貧弱で、「いかに軽く効率よく作るか。」が課題でした。
そのためエンジンは空冷2サイクル2気筒。
駆動レイアウトはエンジンと駆動輪をまとめたFFかRR方式が主流で、空冷2サイクルながらFRだった三菱 ミニカ(初代)やRRながら水冷4気筒だったマツダ キャロル(初代)などは異端ならではの非効率という苦労があったのです。
従って空冷2気筒2サイクルエンジンを搭載したRRレイアウトのスバル360やスズライト フロンテ(2代目)が正解のようにも思えましたが、ダイハツはそれまでの車作りで慣れたオーソドックスなFRレイアウトに、水冷2サイクルエンジンで初代フェローを作りました。
さらにサスペンションにはフロントがダブルウィッシュボーン、リアにもダイアゴナル・スイングアクスルというちょっと凝った4輪独立懸架を採用。
簡素化された自動車としての軽自動車ではなく、小型車をさらにコンパクトにまとめる手法で作った軽自動車として初代フェローを作り、独立トランクを持つ乗用2ドアセダンのほかに3ドア商用バン、ピックアップトラックをラインナップします。
しかし、何も豪華に作ったわけではなく、要は初代ハイゼットの後継を兼ねて乗用モデルもラインナップした、というのが初代フェローの実態であり、それゆえのFRレイアウトでしたが(そのあたりの事情は初代三菱 ミニカも同じ)、軽乗用車としては動力性能不足が泣き所。
水冷エンジンゆえにヒーターの効きは良かったと言われていますが、発売翌年にハイパワー(フェロー23馬力に対し31馬力)のホンダ N360がデビューし、ライバルもパワーアップ競争を始めると、初代フェローはやや出遅れ感が否めませんでした。
プリズムカットや日本車初の角型ヘッドライト
とはいえ、初代フェローの良いところはヒーターの効きだけではありません。
『プリズムカット』と呼ばれたデザインは、同時期の初代日産 シルビアの『クリスプカット』にも通じるものがある、適度に角を落としたイタリアンデザインで、国産車で初めて採用された角目ヘッドライトとともに、国産車離れしたルックスを誇りました。
そして、まだ乗用ハッチバック車など無い時代でしたが、ヒンジを外側に設けて開口部を極力広げたトランクや、トランクやエンジンルームにスペースを取られたにも関わらず大人2名+子供2名ならゆったり、大人4名でも何とか座れるキャビンなど、実用性も高かったのです。
また、一応高性能版『SS』も設定したとはいえパワー競争への参加は2代目へ託されましたが、1970年にモデルチェンジされるまで、初代フェローはスタイリッシュで実用性の高い軽乗用車として堅実にダイハツの足場を築いていったのです。
主要スペックと中古車相場
ダイハツ L37S フェロー スーパーデラックス 1966年式
全長×全幅×全高(mm):2,990×1,285×1,350
ホイールベース(mm):1,990
車両重量(kg):515
エンジン仕様・型式:ZM 水冷直列2気筒2サイクル
総排気量(cc):356
最高出力:23ps/5,000rpm(グロス値)
最大トルク:3.5kgm/4,000rpm(同上)
トランスミッション:コラム式4MT
駆動方式:FR
中古車相場:119万円(各型ほぼ流通無し)
まとめ
まだトヨタ傘下入り(1967年)する以前に開発されたモデルである初代フェローは、トヨタから「ウチの下請け生産以外、乗用車はとりあえず軽自動車に専念を。」というオーダーを得て、ライバルに競争意識をむき出しにするダイハツの面影はまだ見えません。
コンパーノ同様、イタリアンルックに堅実的な実用性を持たせたかと思えば、新規メカニズムも平気で採用してしまう1960年代ダイハツの特徴がよく現れたモデルでした。
後のフェローMAX SSやミラTR-XXほどの過激さは見られませんが、カタログスペック一辺倒となる時代より前のダイハツがどのような理想を持っていたのかが垣間見える、なかなか興味深い1台です。
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