22年にわたり販売され、『走るシーラカンス』と呼ばれたデボネアも、ついに2代目へとモデルチェンジを迎える日がやってまいりました。1986年8月に発売された2代目は、V6エンジンやクオリティの高いVIPカー要素をアピールするかのように『デボネアV』へと改称。目立つ存在では無かったものの、伝説的レア車として記憶される『デボネアAMG』を生んだことで、自動車史に残る存在となりました。
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2代目デボネアはV6エンジン搭載のVIPカー『デボネアV』として登場
1960年代の車としては保守と革新の同居する斬新なデザインで登場した初代デボネアですが、さすがに1980年代になると古さは隠せず一般的な需要は激減しました。
しかし、むしろカルトカー的な人気でファンを得る存在となっていったのです。
とはいえ三菱自動車と関連の深い企業向け社用車、あるいは高級乗用車としての需要も考えればいつまでもそのままとはいかず、1986年2月に初のモデルチェンジを受けて2代目が誕生しました。
それも、VIPなどを意味する『V』を冠した『デボネアV』として発表され、本格高級乗用車としての作り込みを徹底。
新開発でデボネアVに初搭載された6G72型3リッターV型6気筒エンジンは、その後DOHC版やGDI版も登場し、GTO用は低回転から当時の国産車屈指の大トルクを発揮するDOHCツインターボ版も登場するなど、多数の三菱車や提携していたクライスラー車に搭載されました。
ヒュンダイやクライスラーのおかげで成立したデボネア
もっとも、デボネアVが誕生した背景は三菱単独ではなく、当時提携していたヒュンダイでも同クラスの高級車を求めており、その国際戦略車開発担当として三菱が指名されたという事情がありました。
特に初の大型車グレンジャーをソウルオリンピックが開催される1988年まで販売したいヒュンダイの期待は大きいもので、最初から需要の少ないことがわかっていたデボネアは三菱単独では生まれえず、ヒュンダイ抜きでは1代限りで終わっていたかもしれません。
とはいえ大型高級車用のマルチシリンダー大排気量エンジンを持たないという問題もあり、エンジンラインナップが直列4気筒のみになるところでしたが、折良くクライスラーから3リッターV6エンジン供給依頼が来たため、これを転用できました。
また、ボディ各部はボリューム感ある角ばった形状で、当時のギャランΣからプラットフォームを流用した高級車としては一般的とは言えない5ナンバーサイズFF車に、3ナンバークラスの大型高級乗用車としての快適性や積載性を確保する必要性があった事からデザインが決まります。
しかしこれは、決してバランスのいいデザインでは無いと評価されることもありましたが、1989年に自動車税制が改正されて3ナンバー車への高額な自動車税が無くなるまでは当たり前のデザインであり、発売当時の感覚では違和感まで感じるものではありませんでした。
むしろ当初から人気車というわけでは無かったデボネアVを見かけること自体が少なかったので、「おっ!あれは珍しくもデボネアVか?!」という意味で、見かけると目に留まる車だったのは確かです。
驚きのAMGチューンで伝説的存在!『デボネアAMG』
発売当初から、高級車として高い評価を得にくいFF車というハンディもあって、韓国国内でのヒュンダイ グレンジャーはともかく、日本国内では『珍しい車』扱いだったデボネアVですが、1台のスペシャル・デボネアによって歴史に深く刻まれる車となります。
それが驚きのAMGチューン、『デボネアAMG』でした。
実は当時の三菱は、メルセデス・ベンツ車のチューンで定評があり、既に事実上メルセデス・ベンツの純正ワークスチューン的存在だったAMG(現在のメルセデスAMG)にチューニングの監修を依頼し、デボネアの他にギャランAMGなども制作していました。
そして自然吸気仕様の2リッター直4エンジン4G63型をAMG監修でチューニングするなど本格的だったギャランAMGに対し、デボネアAMGは外観のAMGルックやサスペンションチューニングが主。
それも大型メッキグリルが威厳を主張するデボネアに、ある意味では非常に良く似合うカクカクした専用の前後バンパー、フロントグリル、リアスポイラーといったガンダム的エアロパーツが与えられ、リアフェンダーに輝く『AMG』の文字とともにデボネアVをスポーティかつ精悍に仕上げましたが、それだけではありません。
アルミホイールやステアリング、デュアルテールパイプに至るまでAMGデザインで、タイヤサイズは3000スーパーツーリングの195/70R14から205/60R15へと変更。
他グレードではメーカーオプションの電子制御サスペンションを装着したほか、フロントクロスメンバーの補強や、フロントサスペンションロワーアームブッシュを強化するなど、タイヤ変更による足回りのチューニングも行われました。
(※後に通常グレードもタイヤが変更されたため、各部補強や強化は1989年10月のマイナーチェンジまで。)
その中でも特筆すべきは、1987年7月のマイナーチェンジ頃までエアロパーツはAMGで製造したものを日本に空輸・装着していた事で、デボネアAMGの初期型ユーザーは自慢できるポイントです。
主なスペックと中古車相場
三菱 S12AG デボネアV 3000ロイヤルAMG 1989年式
全長×全幅×全高(mm):4,860×1,725×1,425
ホイールベース(mm):2,735
車両重量(kg):1,510
エンジン仕様・型式:6G72 水冷V型6気筒SOHC12バルブ
総排気量(cc):2,972
最高出力:110kw(150ps)/5,000rpm
最大トルク:230N・m(23.5kgm)/2,500rpm
トランスミッション:4AT
駆動方式:FF
中古車相場:18万~119.9万円
まとめ
VIP(要人)、VICTORY(勝利)、VANTAGE(優越)、VERTEX(頂点)、そしてV6エンジン搭載からその名に『V』を付加したデボネアV。
それ自体は決して目立つ存在ではありませんでしたが、デボネアAMGによって『伝説的なレア車、ネタ車』の話題になる時には常連車となり、長く語り継がれる存在となりました。
なお、韓国ヒュンダイとの関係で三菱が高級乗用車をラインナップするという状況はこの後も続き、3代目デボネアやその次の初代プラウディア / ディグニティを生み出していくことになるのです。
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