日本市場でまだ三菱自動車の車種ラインナップが豊富だった1990年代は、国内生産の数車種に加えて、アメリカで生産していたクーペ/カブリオレ『エクリプス』を3代に渡って輸入していました。そして、国内ではさほど存在感を示せなかったものの、後に映画『ワイルド スピード』序盤での活躍と派手な最期で注目を集めたのが2代目です。

 

2代目三菱 エクリプス / Photo by Anthony dela Merced

 

日本へ上陸したアメリカンなスリーダイヤモンド・クーペ

 

2代目三菱 エクリプス / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1990/90_28.html

 

1990年代の特に中盤までの日本車事情といえば、後の環境志向かミニバンSUVオンリー、スポーツカーの新車などがウソのような、ほとんど富裕層にしか買えないレベルのパワー志向、ワイド&ローのスポーツ志向という、『真面目に遊ぶ』事が許される時代でした。

中でも2ドアクーペなどその最たるもので、実用性皆無で燃費は悪く、サーキットに持ち込む訳でも無いのに無駄なパワーを持つなど、カタログスペックとカッコ良さがあればそれでいいというユーザーも多々存在。

凄まじい対米貿易黒字にも後押しされ、日本国内で生産している車種のみならず、国産車ブランドながらアメリカなど海外で生産している車種の輸入も精力的に行われましたが、三菱 エクリプスもそんな1台でした。

何しろ当時の三菱といえば、上からGTO / FTO / ミラージュアスティと3車種もクーペを揃えていたのにエクリプスまで輸入。

しかも国内仕様への適合は最低限で、左ハンドルのまま輸入するという割り切りようで、それは三菱だからというわけでもなく、他メーカー(たとえば初代ホンダ アコードクーペなど)でも、あえて左ハンドルなのがいいとばかりに左ハンドル車を輸入していたので、そういう時代だったとしか言いようがありません。

それは1995年6月に日本でも発売された2代目エクリプスでも勢いは変わらず、フルオープンモデルのスパイダーまで追加。

『アメリカ生まれの陽気なスリーダイヤモンド クーペ』はヒット作とまではいかなかったものの、存在自体が大らかな時代を感じさせる1台でした。

 

4シーターオープン好きにはたまらぬ『スパイダー』を追加

 

2代目三菱 エクリプス スパイダー / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1990/90_28.html

 

2代目エクリプスそのものは7代目ギャランのプラットフォームを使ってクーペ化したもので、ディアマンテをベースとしたGTO、ミラージュをベースとしたFTOの中間に当たります。

パワーユニットも2リッターの4G63ターボ版を搭載しており、初代にあった4WDが日本へ導入されず、2代目でも当初設定された5速MT車が1997年5月にカタログ落ちするなどグレードは絞られていました。

それはFFクーペのターボ車自体がまだ珍しい時代(2代目ロータス エランやクーペ フィアットなど)だったことや、途中から4速ATモデル専売となったこともあって他の国産クーペほどスポーティな扱いはされませんでしたが、販売していたこと自体に意義があったと言えます。

また、1996年5月に追加された、ボタン操作ひとつで開閉10秒の電動ソフトトップを持つ4シーターオープン、『エクリプス スパイダー』の存在でも明らかなように、アメリカンなクーペ/オープンカーを300万円以下の安価で楽しめる車でした。

 

もちろんアメリカではレースで活躍!

 

デイトナ24時間レースに参戦した2代目エクリプス / 出典:https://grassrootsmotorsports.com/forum/grm/outclassed-cars-in-competition/96663/page1/

 

日本では、国内規格のJAF登録公認モータースポーツへ参戦するために必要な『JAF登録車両』に登録していたのが初代のみ。

しかも初代がメジャーなレースやスピード競技へ参戦した記録も無いため、2代目は登録すらされていません。

よって国内モータースポーツでの活躍は無きに等しいのですが、エクリプスの本場アメリカではもちろんそんなことはありません。

パッとした派手な記録こそ無いものの、2代目エクリプスは少なくとも1995年と1998~1999年にデイトナ24時間レースで完走しており、姉妹車の(クライスラー)イーグル タロンとともに軽量ハイパワーFFマシンの1台として活躍しています。

もちろんレースの中にはドラッグレースも含まれ、2代目エクリプス生産終了後の2001年に公開された映画『ワイルド スピード』の第1作序盤では、ポール・ウォーカー演ずるブライアン・オコナー刑事が同車のチューニングカーで公道ドラッグレースに登場。

NX(亜酸化窒素ガスを使ったエンジンの緊急出力増強装置)で派手な加速を見せた後、銃撃により派手に爆発炎上する最期で強い印象を残しましたが、日本ではマイナー車ゆえにそれが三菱車だと気づかない観客の方が多かったかもしれません。

 

主なスペックと中古車相場

 

2代目三菱 エクリプス スパイダー /出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1990/90_28.html

 

三菱 D38A エクリプス スパイダー 1996年式

全長×全幅×全高(mm):4,395×1,745×1,335

ホイールベース(mm):2,510

車両重量(kg):1,430

エンジン仕様・型式:4G63 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ICターボ

総排気量(cc):1,997

最高出力:162kw(220ps)/6,000rpm

最大トルク:299N・m(30.5gm)/2,500rpm

トランスミッション:4AT

駆動方式:FF

中古車相場:39.8万~169.8万円

 

まとめ

 

2代目三菱 エクリプス / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1990/90_28.html

 

三菱にとってみれば、「アメリカでは、こんなにも楽しそうな車を販売しているんだよ!」というイメージアップのために日本でも販売していたような歴代エクリプスでしたが、メディアで取り上げられる時の反応とは裏腹に、実際に購入する人は少なかったようです。

特に2代目エクリプスの場合、ハイパワーターボFF車や途中からのAT専売、4シーターオープンカー(スパイダー)で国産車ブランドなのに左ハンドルのみと『マニアは喜ぶ一方、決して一般受けはしない要素』が満載だったので、致し方ない面もありました。

しかし、新車販売当時の人気は置いておくとして、中古車価格は年式の割になかなかの高値推移であり、本当に好きな人は好きなモデルである事がわかります。

特にスパイダーの中古車など、4シーターオープン好きにはたまらない出物なのでは無いでしょうか?

 

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