トヨタが初代クラウンことトヨペット クラウンRS型を発売したのと同時に登場した、主にタクシー向け業務用セダン、トヨペット マスターはクラウンの好調から短期間でその役割を終えました。そして、その生産を行っていた関東自動車は、マスターをベースにした商用ライトバン/ピックアップのマスターラインを開発し、それはやがてクラウンバンの始祖となります。

 

初代トヨペット・マスターライン ライトバン(RR17) / 出典:http://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/text/taking_on_the_automotive_business/chapter2/section8/item3_c.html

 

短期間で役目を終えたマスターの商用車版、マスターライン

 

初代トヨペット・マスターライン ピックアップ シングルシート(RR16)  / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/catalog/60015663B/pageview.html#page_num=0

 

1955年1月にトヨタが発売したトヨペット クラウンRS型(初代クラウン)は、フロントサスペンションにダブルウィッシュボーン独立懸架を採用するなど、画期的な国産本格乗用車として歴史に残る存在となりましたが、最初は、成功するのかトヨタ社内でも不安視する声がありました。

特に乗用車需要の大半を担うタクシー業界では、かつてトヨペット SA型乗用車(1947年発売)で当時の日本の国情に合わないメカニズムを採用してしまった結果、タクシー業界からの評判を落とした苦い経験もあり、慎重さを求められたのです。

 

マスターラインのベースとなったトヨペット・マスター(RR) 出典:http://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/text/taking_on_the_automotive_business/chapter2/section8/item3_c.html

 

そこでクラウンRS型と並行して、トヨペット スーパーRHK型(1953年発売)のボディを架装していた関東自動車工業(現在のトヨタ東日本)で、スーパーRHK型の構造とクラウンRS型のパワーユニットをミックスしたようなトヨペット マスターRR型を開発。

クラウンRS型とマスターRR型は同時発売され、当初は双方とも売れ行きが芳しくなかったものの、次第にクラウンが操縦性・快適性・耐久性を併せ持つ名車とタクシー業界からも高い評価を受けた一方、メカニズム的には旧弊なマスターの必要性は無くなっていきました。

1955年12月には自家用車向けクラウン デラックスと事業車向けクラウン スタンダードを販売。

マスターは1956年11月で生産を終え、わずか1年10ヶ月の短命モデルとなります。

 

初代トヨペット・マスターライン ライトバン(RR17) / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/catalog/60015663B/pageview.html#page_num=0

 

なお、クラウンRS型には後にステーションワゴンモデルが追加されるものの、コロナベースの『コロナライン』(1958年発売)のようにライトバンやピックアップモデルは無かったことから、積載性と快適性を両立した商用モデルが求められていました。

関東自動車工業のマスター用生産設備を活かす意味合いも兼ね、マスターからやや遅れて登場させたライトバン/ピックアップモデルが『マスターライン』です。

 

乗用車並の快適性と積載性を両立した初代マスターライン

 

初代トヨペット・マスターライン ピックアップ シングルシート(RR16) / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/catalog/60015663B/pageview.html#page_num=0

 

『マスターライン』はマスターが早期にその役割を終えたので慌てて開発されたというわけではなく、マスターが発売された年、1955年9月にはシングルシート3人乗りの『マスターライン ピックアップPR16型』と6人乗りライトバン『同ライトバンPR17型』を発売。

翌1956年8月にはダブルシート6人乗りの『マスターライン ピックアップダブルシートPR19型』が発売されています。

(各モデルの発売時期はトヨタ自動車75年史「トヨペット・マスターRR型の開発」より)

ちなみに、その年の11月にはマスターの生産が終わっているので、関東自動車ではマスターからマスターラインへと生産を切り替えた形になっていますが、それでも生産力に余剰があったようで、ボディパネルはさらにトヨペット トラックRK23型(後の初代スタウト)にも転用されました。

 

初代トヨペット・マスターライン ピックアップ ダブルシート(RR19) / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/catalog/60015663B/pageview.html#page_num=0

 

マスターラインそのものは、基本的にマスターのシャシーを強化してライトバン/トラックボディを載せたもので、メカニズムは初代クラウンRS型とも共通。

そのため、まだシリンダーの摩耗でシリンダーをボーリング(掘り直ししてオーバーサイズピストンを組む)するのが当たり前だった時代に、『タクシー用のクラウンで20万km、ボーリング無しで走行』)とR型エンジンの耐久性もアピールポイントでした。

商用車としては最大積載量がトラック1.5t積み/ライトバン1.25t積みのスタウトや、後に登場するコロナラインの500kgとは中間に当たるピックアップ750kg積み/ライトバンおよびダブルピックアップ500kg積み。

3速コラムシフトのためフロント3人乗車が可能で、1列シートピックアップなら3名、2列シートピックアップ/ライトバンなら6名乗車が可能と乗用車並の乗車定員や内外装の快適性を持っており、ファミリーカーとしての使用にも耐えました。

もちろん元はトラック同様頑丈なラダーフレームシャシーに前後リーフリジッド サスペンションと今から見ればスパルタンですが、どのみち当時の乗用車でもフルモノコック 独立懸架サスペンションなどは少なく無かったので、さしたる問題ではありません。

むしろ乗用車同様の商用車離れした内外装が大いに好まれ、1959年3月にクラウンRS型のマイナーチェンジ版(S20系)をベースとする2代目マスターラインへモデルチェンジするまで生産は続けられています。

 

主なスペックと中古車相場

 

初代トヨペット・マスターライン ライトバン(RR16・トヨタ博物館所蔵) / COPYRIGHT©TOYOTA AUTOMOBILE MUSEUM

 

トヨタ RR17 トヨペット・マスターライン ライトバン 1955年式

全長×全幅×全高(mm):4,275×1,670×1,600

ホイールベース(mm):2,530

車両重量(kg):1,235

エンジン仕様・型式:R 水冷直列4気筒OHV8バルブ

総排気量(cc):1,453

最高出力:40kw(55ps)/4,400rpm(※グロス値)

最大トルク:103N・m(10.5gm)/2,600rpm(※同上)

トランスミッション:コラム3MT

駆動方式:FR

中古車相場:皆無

 

まとめ

 

初代トヨペット・マスターラインのメカニズム / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/catalog/60015663B/pageview.html#page_num=0

 

マスターラインはクラウンRS型の『保険』として開発、短命に終わったマスターをベースとした商用車でしたが、ライトバンやピックアップトラックとしてはむしろ成功作でした。

当時、欧米では乗用車をベースに商用バンやピックアップトラック化するのが流行しており、日本でもプリンス スカイウェイ(スカイラインの商用車版)などが登場しましたが、マスターラインはその先駆け的存在です。

トラックベースで乗用車を作っていた時代から、乗用車ベースでトラックやバンを作るという発想の転換は、1990年代までの乗用車ベースライトバンまで続き、ピックアップトラック化などは今でもカスタムの手法として存在しています。

もっとも、1959年にはトラックと異なり乗用車的な乗り味が求められたため、S20系クラウン(初代のマイナーチェンジ版)をベースとしてフロント独立懸架サスペンション化、内外装もクラウン同様とした2代目へ進化。

トヨペット マスター系のシャシーとメカニズムは乗用車としても商用車としても長生きできずに4年ほどで消え、戦後草創期のトヨタが作ってきた前後リーフリジッドサスペンション・固定車軸でトラックベース乗用車の歴史は、初代マスターラインが最後となりました。

 

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