歴史的名車は名車であるがゆえにいつか甦る。過去のモチーフと最新の技術を融合してというのは、歴史ある欧米メーカーが先行していた話で、オリジナリティを発揮するには第2次世界大戦後10年たってからの日本では、なかなか難しいものがありました。それでも長く車を作っていれば、そんな名車の1台や2台はあるものです。初代トヨペット・クラウンをモチーフとしたトヨタ・オリジンも、そんな古くて新しい名車リメイクの1台でした。

 

トヨタ オリジン / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60001521/index.html

 

 

国内生産累計1億台突破を記念したトヨタの原点回帰

 

トヨタ・オリジン / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/toyota-origin-2000-jcg11.html

 

2000年7月、トヨタは『国内自動車生産累計1億台達成記念事業』として、初代トヨペット・クラウンをモチーフにした記念車を1,000台限定で生産。

これを『オリジン(起源)』と名付けて、同年11月から発売することを発表しました。

そんなトヨタは第2次世界大戦前からトラックや乗用車を作っており、戦後もトヨペットSAをはじめいくつかの乗用車を作ってはいました。

しかし、それらはトヨタ自動車工業が作ったエンジン/シャシーに関東自動車工業(現在は数社で合併してトヨタ東日本)など下請けメーカーで作ったボディを架装するという方式で、すべてをトヨタが作ったとは言い難いものだったのです。

 

再現を目指したのは、初代トヨペット クラウン / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/toyota-origin-2000-jcg11.html

 

しかしそうした習作を経て、いよいよトヨタが全てを開発し、組み立てる国産本格乗用車クラウンが1955年に発売。

それを『起源』として、現代の技術で再現してみせようとしたのがオリジンでした。

もちろん、初代クラウン当時とは自動車のサイズも保安基準も何もかもが異なり、そのまま全てを再現できるとは限りません。

当時トヨタは既に1996年、ピックアップトラックのハイラックスをベースとした戦前のトヨダAA型再現モデル、トヨタ クラシックを限定販売していましたが、今度はラダーフレーム上に再現ボディを載せるのではなく、モノコックボディの乗用車からの挑戦です。

しかし、当時のトヨタには現代版クラウンとも言うべき、ある意味では初心にかえった小型プレミアムセダンという格好の素材がありました。

 

ベースはプログレ、初代クラウンの特徴を再現し、組み立てや塗装など随所に光る職人技

 

トヨタ オリジン / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/toyota-origin-2000-jcg11.html

 

その素材となったのが、1998年に発売されたプログレです。

プログレは2.5リッター、または3リッターの直6エンジンを搭載するため排気量が既に5ナンバー枠に収まっておらず、無理に5ナンバーボディに収める必要が無い中、あえての5ナンバーサイズで小型プレミアムセダンという提案を行った車でした。

既に大型化・スポーティ化が進んでいた当時のクラウンより、サイズ的にも精神的にもよほど初代クラウンに近い車と言え、プログレ自体のコンセプトも好評でしたが、まさにいつかオリジンを作るベースとなるため生まれてきたような車だったのです。

 

ベースとなった小型プレミアムセダン・プログレ / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60012500/

 

プログレをベースに前後のデザインは初代クラウン風に再現され、さすがにボディサイズの違いで間延びした感はあるものの、むしろ『現在の技術で初代クラウンを作っていたら』という車になりました。

特筆すべきは初代クラウン最大の特徴とも言える観音開きドアがしっかり再現されていたことで、和装の結婚式の際に髪を文金高島田に結った花嫁を乗せられるよう、ルーフの高さにもゆとりを持たせられていれば、満点だったのが惜しいところ。

しかし高級感演出のため、センチュリーと同品質の塗装がなされたほか、一体プレス成形の難しい部分は分割成形して職人の手作業により継ぎ目を無くす接合技術を駆使。

チリ(隙間)の少ない組付けや各部の立て付けなども職人技で高品質を確保して、本革や本木目が贅沢に使われた内装と合わせ、姿形というより初代デビュー当時の『クラウンの価値観』を再現した仕上がりになりました。

それでいて装備面では2000年当時にふさわしい最新装備がしっかりと施され、プログレの3リッターエンジンはそのままで近代的な動力性能を持っていたので、まさに『古くて新しい贅沢な車』が誕生したのです。

 

主なスペックと中古車相場

 

トヨタ オリジン / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/toyota-origin-2000-jcg11.html

 

トヨタ JCG17 オリジン 2000年式

全長×全幅×全高(mm):4,560×1,745×1,455

ホイールベース(mm):2,780

車両重量(kg):1,560

エンジン仕様・型式:2JZ-GE 水冷直列6気筒DOHC24バルブ

総排気量(cc):2,997

最高出力:158kw(215ps)/5,800rpm

最大トルク:294N・m(30.0kgm)/3,800rpm

トランスミッション:4AT

駆動方式:FR

中古車相場:249万~438万円

 

まとめ

 

トヨタ オリジン / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/toyota-origin-2000-jcg11.html

 

オリジンはベースとなったプログレNC300が350万円という時期に、700万円と2倍の新車価格でしたが、高品質内外装やオリジンだけのために特別に復活した観音開きドアを考えれば、むしろ非常に安価だったかもしれません。

当時のトヨタ系全販売チャンネルで販売され、記録によれば、2000年5月から2001年4月までの間に1,073台が旧関東自動車で生産されたとあるので(トヨタ自動車75年史|国内工場概況|関係会社(トヨタ100%出資会社)-トヨタ自動車東日本株式会社)、実際には限定1,000台+α程度が販売されたようです。

かなり存在感のある車なので、街で見かけるとふりかえらずにいられませんが、そこで目が離せなくなるのは、デザインだけでなくその仕上がりの非凡ぶりゆえかもしれません。

まさにトヨタがその偉大なる生産台数記録を記念するのにふさわしい1台だったので、次に同じような記念車が出た時にも、どんな車種が選ばれるのか、またその仕上がりも、今から楽しみです。

 

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