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F1のスポンサーを務める事による高い広告効果は有名です。しかし、危険と隣合わせで挑戦的なスポーツを支援する事は、その企業のイメージに沿ったものかどうかという点もスポンサー活動をする上で大切な事実です。そんななか、近年のモータースポーツの世界で多く見られるのがエナジードリンクの広告。もはやモータースポーツと深い関わりを持つ業界として認知されています。では、これまでF1とエナジードリンクメーカーはどのように関わってきたのでしょうか?

©RedBull Content Pool
F1との関係を深めているエナジードリンク業界

©RedBull Content Pool
これまでF1ではタバコや家電メーカー、運送会社など特定の業界から多くのスポンサーが集まることが多々ありました。
その中でも、近年多く見られるのがエナジードリンク業界からのスポンサーです。
しかしエナジードリンクの歴史はまだ浅く、この業界の先駆け的な存在であるレッドブルですら約30年前に創設されたばかりの会社であり、世界的に知られるようになったのはさらに最近のこと。
それにも関わらず近年は多くの人に愛飲され、レッドブルは2017年に世界172カ国で60億缶を超える販売本数を誇るなど、国際的なブランドとして知られています。
この国際的な人気を獲得した要因にはドリンクのプロモーションの方法に気を配り、エクストリームスポーツなど挑戦心を煽るようなスポーツと深く結びつくことで、エナジードリンクのイメージを連想させた事にありました。
その為のプロモーションとして用いられてきたのがモータースポーツで、危険なことにも果敢に挑むドライバーやチームの姿はエナジードリンクのイメージ戦略に沿ったものだったのです。
今やF1に欠かせない存在となったレッドブル

©RedBull Content Pool
エナジードリンク業界で最も早くF1との関わりを持ったのが、その代表格であるレッドブルでした。
彼らとF1の歴史は1995年から始まり、すでに20年以上に渡ってF1との関係を築いています。
現在では自らのチームを所有しトップチームとして活躍しているのはご存知の通りですが、チームを創設した2005年以前はザウバーやアロウズのスポンサーとしてF1と関わっていました。
スポンサー活動を開始した当初はレッドブル・ザウバーと冠スポンサーを務め、後にザウバーがマレーシアの石油会社であるペトロナスとの関係を強めた後にもスポンサー契約を継続。
2005年にジャガーを買収しレッドブル・レーシングを創設、さらにその翌年にはミナルディを買収しジュニアチームのトロロッソを誕生させたのです。

ジュニアチームとして誕生したトロロッソはチーム創設から13年目を迎える。これまで多くの若手ドライバーを輩出してきた。©Pirelli
確かに莫大な資金を要するF1チームの運営は大きな広告効果を望むことが出来ますが、ここまでする必要があるのかと疑問を抱く方もいらっしゃると思います。
しかし、これはレッドブルの経営理念に基づいた考え方なのです。
レッドブルがスポーツと関わりを持つ際には「そのスポーツと力を合わせるのではなく、そのスポーツの一部になる。」というテーマを掲げています。
そのテーマの通り、すでにF1では彼らの存在は大きなものとなっており、成績以上に大きな存在感を放つチームへと成長。
さらに、彼らはF1だけでなくドライバー育成プログラムにおいても高い評価を得ており、多くのドライバーをF1へと送り込んできました。
その支援の幅はジュニアカテゴリーに留まらず、新たな才能を発掘するためレッドブル・カートファイトといった大会を開催するなど、幅広いシリーズと関わりをもっています。
緑の爪痕でお馴染みのモンスターエナジー

マシンにロゴは描かれていないものの、ヘルメットなどから強い存在感を放つモンスターエナジー©Shunsuke Kawai
そして、レッドブルに続いて大きなシェアを誇るエナジードリンクメーカー、モンスターエナジー(Monster Energy)もF1での広告活動を行っています。
彼らも様々なモータースポーツで広告を展開しており、F1では現在4連覇を達成したメルセデスのスポンサーを務めて来季で8年目となりました。
そんなモンスターエナジーが、F1に初めてやってきたのは2009年のこと。
わずか1年限りの参戦でダブルタイトルを獲得したブラウンGPのスポンサーとなったことで、モンスターエナジーのロゴがF1で見られるようになったのです。
しかし、その広告方法はチームを所有するレッドブルとは大きく異なっていて、マシンへにロゴを掲載をしないことがモンスターエナジーの特徴と言えるでしょう。

レッドブルがマシンに企業名を掲載するなか、モンスターエナジーはマシンにロゴが掲載されたことが無い。広告戦略としてレッドブルとは異なったアプローチを見せている。©Pirelli
彼らのロゴはドライバーのヘルメットのみに限られ、これまでルイス・ハミルトンやニコ・ロズベルグ、さらにはミハエル・シューマッハなど名ドライバーの頭部にお馴染みのロゴが掲載されました。
また、ヘルメットの他にはドライバーの使用するドリンクボトルも、彼らの大切な広告スペースとなっています。
このように大々的な広告を行うレッドブルとはアプローチの方法が全く異なりますが、わずかなスペースを活用し上手く広告効果を生み出しているブランドと言えるでしょう。
さらに2017年からはメルセデスに所属するルイス・ハミルトンと個人的なスポンサー契約を交わし、彼をモチーフにした特別仕様のドリンクを発売。
また、こうした遊び心はF1だけでなくMotoGPライダーのバレンティーノ・ロッシをモチーフにしたこともあり、サーキットの外でもモータースポーツへの関与が見られました。
新生ロータスへの支援を行ったバーン

フロントウィングに描かれるburn
/ 出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kimi_Raikkonen_2013_Malaysia_FP1.jpg
コカ・コーラ社が販売したエナジードリンク、”バーン”(Burn)もF1で見られたエナジードリンクブランドとして知られています。
2013年から4年間に渡ってロータスのスポンサーを務め、マシンの翼端板などに炎を模した彼らのロゴが掲載されました。
コカ・コーラ社は様々な商品をブランド化し、そのスポーツに見合った商品を掲載することが多く、F1ではエナジードリンクであるバーンのブランド名でスポンサー活動を行っています。
初めて彼らのロゴが掲載されたマシン”E21″はキミ・ライコネンとロマン・グロージャンによってドライブされ、シーズンを通して計14回もの表彰台を獲得。
その為マシンだけでなくレーシングスーツに刻まれていたロゴの露出も多く、モンスターエナジーと同様に小さな掲載スペースで高い効果を生み出すかと思われました。
しかし、その翌年以降は3年間で表彰台はわずか1度と苦しい戦いを強いられ、チームの戦闘力が衰退すると共にバーンの露出頻度も激減してしまったのです。
2016年にロータスがルノーへ売却されると、それに伴ってバーンはF1から撤退。
他社と比べてF1でのブランド戦略が上手くいかず、2016年に報じられたエナジードリンクのシェアではレッドブルとモンスターエナジーが快進撃を続けるのに対し、バーンは大きな差をつけられることになってしまいました。
F1での広告活動はコカ・コーラ社にとってこれが初の試みだったこともありますが、他のエナジードリンクメーカーと比較しても話題性を持続させることは難しかったようです。
まとめ
エナジードリンクメーカーにとってのF1は、彼らの挑戦心をアピールをする場所としてとても適していると言われています。
危険と隣合わせのなかライバルや自分と戦う選手たちを支援することは、イメージ戦略に重点を置くエナジードリンク業界に沿ったものであり、同時に多くの人の目に触れるところでもありました。
そういったメリットが重なったこともあり、今ではF1と深い関わりを持っています。
少し前にはタバコ業界のようにエナジードリンクの広告活動についても批判的な意見が寄せられることもありましたが、現在のFOM(フォーミュラ・ワン・マネージメント)の方針で、今後もその活動を見ることが出来そうです。
いつも大胆なパフォーマンスを見せることが多く、サーキット内外でレースを盛り上げてきた彼らが、今後どのような活動を見せてくれるのか、楽しみなところです。
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