車のパーツで、「デファレンシャルギア」や「LSD」という単語を聞いたことはありませんか? 何故これらの装置を付ける必要があるのでしょうか。今回はそんな「デフ」と「LSD」の役割を解説します。

ギア 歯車

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「デフ」がなければクルマは走れない!

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%AE%E5%8B%95%E8%A3%85%E7%BD%AE#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Differentialgetriebe2.jpg

「デファレンシャルギア」は、日本語だと「差動歯車装置」と呼ばれており、「2箇所の動きの差を検出、またはその動作に違いを付ける」働きがあります。

車がコーナーを曲がる時は、内輪と外輪の移動距離が違うので、左右のタイヤの回転数には差(いわゆる”内輪差”)が生じます。

コーナー外側のタイヤを多く回し、内側のタイヤの回転を抑えるように内輪差を調整するのがデフの役割です。

しかしこのデフには欠点があり、滑りやすい路面で片側がスリップした場合、もう片方のタイヤには駆動力が掛からなくなってしまうのです。

特に、スポーツ走行時など、コーナリングの際に強い横Gがかかると、クルマは内側のタイヤが浮いてしまう事もあります。

そうなると内側のタイヤは空転し、路面に接地している外側のタイヤにも駆動力が掛からなくなってしまうので、車が前に進みません。

このようなことを回避するために装着される装置が、「LSD」です。

「LSD」はコーナリング時に必須の装置

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Limited-slip_differential#/media/File:Audi_quattro_AWD_system.jpeg

「LSD(リミテッド・スリップ・デフ)」は文字通り、「デフの働きに制限を掛ける装置」です。

この装置には、コーナリング時に片輪が浮き気味になったとしても、接地している側のタイヤにしっかりと駆動力を掛ける役割があります。

それにより、コーナリング中に片方のタイヤが浮き気味の状態でも、アクセルを踏んでコーナーを抜けることや、両輪が空転している状態を維持するドリフト走行が可能となるのです。

LSDの種類

出典:https://www.cusco.co.jp/catalog/lsd/syasyubetsu_type.html

LSDは、いくつかのタイプに分類でき、想定される走りの種類によって、仕組みが異なるものが装着されています。

以下、主なLSDの種類です。

トルセン式

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メンテナンスの必要がなく、専用オイルを必要としないLSDです。

多くの種類の歯車を組み合わせ、デフの働きを効果的に制御します。

ちなみに”トルセン”とはトルクセンシングの意味から名付けられています。

ビスカス式

© Nissan 2019

ビスカスカップ式LSDのデフ内部にはシリコンオイルが満たされており、内輪差が発生し、回転差により、プレートとサイドギアによるシリコンオイルの攪拌が発生。

攪拌によるシリコンオイルの熱膨張から生まれる抵抗で、デフの働きを抑えるLSDです。

ヘリカル式

出典:https://www.cusco.co.jp/catalog/brands/quaife.html

ヘリカルギアと呼ばれる歯車を使い、デフの働きを抑えるLSDです。

駆動力が掛かっている際に効果を発揮し、LSDの中でも比較的マイルドな効き方をします。

機械式(多板クラッチ式)

出典: https://www.cusco.co.jp/catalog/lsd/type-rs.html

複数枚のプレートを圧着させることによって、デフの働きを抑えます。

また幅広いセッティングができ、効かせ方は、以下の3つの中から選択可能です。

  • 1WAY:アクセルオン時に作用し、扱いやすい。FF車向き
  • 1.5WAY:アクセルオン時に作用するだけでなく、オフ時も働く。FR車向き
  • 2WAY:アクセルオン、オフ問わず作用し、常時効いている。

電子制御式

出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/technology/library/ayc.html?intcid2=innovation-technology-library-ayc

車に取り付けられたセンサーから情報を受け取り、駆動力の調整をコンピューターで行うLSDです。

LSDはどんな車に取り付けられるの?

トヨタ86/ 出典:http://toyota.jp/86/

LSDは両輪の駆動力の配分を調整する装置なので、おもにスポーツ走行を前提とした車に装着されています。

たとえば『トヨタ 86』だと、ベースグレードのG(6MT)ではオプションでLSDを装着でき、GT・GT Limitedでは標準でLSDが装備されています。

日産の『GT-R』でもシリーズ車には全て「1.5wayメカニカルLSD」が標準で装着されており、同社の『シルビアS15 スペックR(MT) 』もLSDは標準装備です。

このことから見てもわかるように、スポーツカーの多くにはLSDが搭載されています。

そのため、ファミリーカーやミニバンにLSDが付いていることはほとんどなく、オプションで選ぶことができないばかりか、社外品でも装着可能なLSDはあまり存在しません。

つまりLSDは、ハードな走りを追求する車にのみ装備される装置だと言えるでしょう。

LSDのデメリット

出典:http://www.jdm-option.com/pr_CUSCO/lsd.html

スポーツ走行でのコーナリング時に役立つLSDですが、デメリットも存在します。

車体内側のタイヤには多く負荷が掛かるので、タイヤが少し減りやすくなるのです。

また両輪の回転差を制御する装置なので、車を前へ進ませようとする働きが強くなり、ドライバーによっては少し曲がりにくいと感じることも。

そしてLSDはスポーツ走行のコーナリング時に最も効果を発揮するので、一般道ではあまり活躍する機会はありません。

装着するにも費用が掛かるので、用途に合わせてLSDを装着するか否かを、検討すると良いでしょう。

まとめ

デフは何気なく車を運転している時でも活躍しており、安定した走行のためには必須の装置です。

またLSDもそんなデフの働きを制御し、安定したコーナリングに役立つ装置なので、スポーツ走行の際には必要不可欠。

そんなデフとLSDは、まさに「縁の下の力持ち」の存在だと言えるでしょう。

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