ヘリテージカーを扱うエムズバンテックから、伝説のスポーツカー『ACコブラ』を紹介します。コンパクトだけど超マッチョなボディに迫力の7リッターV8エンジンの組み合わせは、見ているだけで圧倒される仕上がりでした。
Photo:Yusuke MAEDA、Text:Yuki Ikeda
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エムズバンテックにマエダが直撃!そこには激レア車が目白押し
今回、Motorz編集部マエダが訪れたのは、群馬県にあるM’s VANTEC(エムズバンテック)。
精密板金やレーザー加工等を用いた特殊部品の開発・製造を主要事業とし、その傍らでヘリテージカーを中心に販売・製作・レストアなどを行なっているショップです。
とくにヘリテージカーのレストアや販売においては非常に有名で、部品が欠品状態になっている車両は自社で部品を作って対応。
ショールームには雑誌や本、テレビでしか見たことがないようなクルマが多数展示されています。
驚かされるのは、ヘリテージカーの台数で、取材時も、約100台が並べられていました。
そのなかにはグループCのプロトタイプレーシングカーから、国宝級の超希少車まで様々なモデルがあり、クルマ好きなら何時間でも居たくなる空間となっています。
特に存在感を放っていたのはアメリカンスポーツカーの伝説的な存在「ACコブラ」で、アメ車好きだけでなく、クルマが好きでも、そうでなくても、見惚れてしまう美しさと迫力がありました。
ACコブラとは
ACコブラは、英国の自動車メーカー『AC Cars(ACカーズ)』のACエースというクルマをベースに、フォード製のV8エンジンを搭載したスポーツカーです。
アメリカ人レーシングドライバー、キャロル・シェルビー氏により考案されたことで、『シェルビー・コブラ』とも呼ばれており、1962年から生産されています。
ACカーズは1970年代後半に倒産しますが、ACコブラの商標はオートクラフト社に譲渡され、以降も生産が継続されました。
しかも、今も当時のACコブラの形や設計を継承した継続生産モデルが存在し、レプリカモデルを新車で購入することだって可能です。
それでも、ACカーズが生産していたオリジナルモデルは非常に価値が高く、現在はオークションにより、1億円以上で取引されるものも珍しくありません。
また、フォードGT40とも縁は深く、Aキャロル・シェルビー氏はそのままフォードへと移籍。
ルマン24時間でフォードGT40に乗り、1966年にフェラーリとドラマチックなトップ争いを繰り広げました。
そのため、2020年1月に公開され映画『フォードvsフェラーリ』に登場するキャロル・シェルビーは、まさにACコブラの立案者その人です。
最もマッチョなMkⅢのボディ!エンジンは7リッターV8OHVのバケモノ
今回、エムズバンテック代表の諸井氏にショールームを案内してもらい、取材させていただいたACコブラは、”427・MkⅢ(マークⅢ)”というモデルです。
正確には、オリジナルの生産終了後に製造された、レプリカモデルとのこと。
ACカーズ時代のオリジナルACコブラMkⅢは1965~1968年の間に生産されたモデルで、ACコブラの歴代モデルであるマークⅠ、マークⅡ、マークⅢのなかで最もトレッドが広く、フェンダー周りはとてもマッチョなデザインで、多くのクルマ好きを魅了させるのも、この曲線美を見れば納得です。
車名の427はフォード製エンジン『427・V8』を示し、排気量が427cu in(立方インチ)すなわち7リッターもあるエンジンをチューニングしたバケモノです。
427エンジンの競技車仕様で、最高速度は298km/h、最大出力492PSを発揮するとされています。
そのため巨大なパワーを受け止める強靭なシャシーが必要で、シャシーが2本の軸をもつラダーフレーム構造となっており、諸井氏は、「アクセルの開度で車体の向きが変えられるほど、パワーがある」と、教えてくれました。
それは、コンパクトながら高剛性なフレームだからこそなせる設計なのでしょう。
運転しにくそうだけど、それでも許せるドライビングシート
運転席は北米仕様のため左ハンドルで、座った時は極度に足が左へ寄せられます。
本来であればフロントのホイールハウスが邪魔になって右側に足がオフセットするのが左ハンドルのイメージですが、ACコブラは着座位置が極端に後ろにあるため、ホイールハウスにはあまり影響しません。
しかし、ミッションのベルハウジングが非常に大きいため、センタートンネルが異常なまでに太くて大きく、その分ペダル類が左側へオフセットされ、乗った時に下半身が左へ寄ってしまいます。
また、ミッションが後ろにある分、シフトレバーは無理やり前へ傾けているため、Hパターンシフトの操作には慣れが必要。
サイドブレーキにいたっては、センタートンネルの助手席側に取り付けられています。
設計が古く、速さだけを狙ったモデルであるため仕方ないところではありますが、メーター周りのデザインは、それらの欠点を完全に許してしまう美しさです。
さらに、タコメーターは右回り、スピードメーターは左回りとなっており、水温計、油温計、ガソリンメーターなどのアナログメーターが、バランス良く配置されているあたりも、クラシックカーの趣を感じます。
まとめ
最後に、両サイドから出ているマフラーは、「これぞACコブラ!!」と思えるチャームポイントですが、乗り降りの際に足に触れると、火傷してしまう可能性大。
ほかにも幌の取り付けが可能ですが、骨組みを組み立ててから張るものなので、相当時間がかかり、雨が降ってから幌を付けようとすれば、終わったころにはずぶ濡れになっていることでしょう。
実用性は皆無。しかも火傷するリスクもあるクルマにもかかわらず、なぜこれほどACコブラは人を惹きつけ、今なおレプリカが製造されるのでしょうか。
それは、美しく力強い造形美とリアタイヤが地面を蹴り飛ばすような強靭なパワー、そして速さと、それを操る達成感にあるのでしょう。
今回の取材のなかで、ACコブラの凄さと、作り上げたキャロル・シェルビー氏の情熱や偉大さを、改めて実感することができました。
エムズバンテック
住 所:〒370-0614 群馬県邑楽郡邑楽町大字赤堀1508-4
電 話:0276-70-2112
FAX:0276-70-2115
URL:http://www.msvantec.com
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