2つの車両規定のクルマが走る全日本ラリーJN5クラス。FIA規定とJAF規定のマシンはどちらが速いのでしょうか?純粋な国産車はヴィッツだけ、海外車勢が多く参戦しバリエーションに富むこのクラスの車両規定や車種を紹介します。
今回はそんな全日本ラリーJN5クラスを紹介します。
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全日本ラリーJN5クラスとは
2015年までとは違い、2016年は「総排気量2,500cc以上2WDのRJ車両」と「FIA グループR規定の2WDのRR車両」で争われます。
プジョー208やシトロエンDS3、アバルト500、ミニクーパー JCW、トヨタ86、トヨタヴィッツGRMNターボと言う全日本ラリー屈指の多彩な車種が参戦しています。
JN6クラスに次ぐ速さを持つクラスであり、SSの特徴や路面状況によっては格上のJN6クラスを凌駕する速さを見せるなど、今最も注目されているクラスと言えます。
2世ドライバーや3世ドライバーの参戦など、元F1ドライバーの参戦など賑わいを見せているのもこのJN5クラスなんです。
JN5クラスの車両規定「RJ」と「RR」
RJ車両
JN5クラスはもちろん、JN4、JN3クラスの車両規定にもなっているRJ車両。
RはRallyのR、JはJAFのJから取られており、JAF登録車両のラリーカーであることが分かります。
改造範囲は狭く、基本的にはJAF登録車両と同一車両型式に設定されている純正部品およびメーカーオプションで、改造および加工の必要なく取り付けられるものであれば使用が認められています。
N1までの改造範囲とまではいきませんが、それに近いという感じです。
当然のことながら、公道を使用するラリーですので、競技車両であれどナンバー取得が義務付けられています。
RR車両
FIAグループR規定に準じて製作されているのがRR車両です。
頭のRはRallyのRで、後ろのRはグループRのRを指しており、WRCの下のカテゴリーであるWRC2やWRC3に参戦する車両のレギュレーションがグループR車両なので、ほぼレーシングカーと言えるような作りをしています。
そんな車両でありながら、日本に輸入してガス検査や予備検査を通し、車検に合格することでナンバー取得することができる(取得しなければならない)ので、まさに公道を走るレーシングカーと言えます。
改造範囲は広く、電子制御のシーケンシャルドグミッションや、油圧サイドブレーキ、軽量化(グループR内のクラスによって違いあり)、アクリルウィンドウの採用、アンチラグシステムの採用など多岐にわたります。
グループR規定とは
グループAとグループNを置き換えるものとして2013年より始まった新しい規定で、グループAとしての車両・変形・改造・追加の公認を受け、さらにグループN及びグループRのための改造・追加の公認が必要とされています。
グループRの中でもR1~R5というグループ分けと、さらには排気量及び過給機の有無によってクラス分けもされていますが、全日本ラリーではR1~R3がRR車両として一括りにされています。
シトロエンDS3の360°動画が凄い!!
ドライバーの操作系はWRカーそのもので、シフトアップはステアリング右手付近にあるレバーを引き、シフトダウンはレバーを押します。
電子制御式ですので、アクセル全開のままクラッチペダルを踏まずにシフトアップでき、またシフトダウン時はアクセルを煽らずともブリッピング(回転合わせ)をしてくれます。
Hパターンのマニュアルトランスミッションと違い、今ギヤが何速に入っているのか分からなくならないよう、ダッシュボードのセンターにインジケーター(表示器)があるのもシーケンシャルミッションの特徴です。
JN5クラス参戦車種
TOYOTA Vitz GRMN ターボ(RJ)
3ドアモデルのトヨタ ヴィッツに、1.5リッターターボエンジンを搭載したRJ規定のヴィッツGRMN。
突出したパワーはありませんが、安定した走りが売りで、大倉聡/豊田耕司組がランキング上位をキープしています
ベース車両スペック
エンジン:直列4気筒1.5リッター 1NZ-FE
レイアウト:FF(フロントエンジン・フロントドライブ)
車体寸法(全長×全幅×全高):3,945×1,695×1,490mm
車体重量:1,070kg(GRMNターボ)
車体価格(税抜):¥2,571,429(GRMNターボ)
MINI COOPER JCW F56(RJ)
日本ではまだ販売台数が少ないミニ クーパー ジョンクーパーワークス。
海外勢ではありますがRJ規定での参戦です。
車両としてはクラス内で重い部類になりますが、大橋逸夫/藤上亘組が安定した速さを見せています。
ベース車両スペック
エンジン:直列4気筒2リッター ターボ
レイアウト:FF(フロントエンジン・フロントドライブ)
車体寸法(全長×全幅×全高):3,875×1,790×1,550mm
車体重量:1,250kg(3door JCW)
車体価格(税込):¥3,980,000(3door JCW)
PEUGEOT 208 GTi(RJ)
こちらはRJ規定のプジョー208 GTiで、街のディーラーで買えるモデルです。
ベース車両がほぼそのままなので、1.6リッターのターボエンジンを搭載しています。
クスコレーシングより吉澤哲也/井手土達也組が参戦しています。
ベース車両スペック
エンジン:直列4気筒1.6リッター ターボ
レイアウト:FF(フロントエンジン・フロントドライブ)
車体寸法(全長×全幅×全高):3,975×1,740×1,470mm
車体重量:1,200kg(GTi)
車体価格(税込):¥3,220,000(GTi)
PEUGEOT 208 R2(RR)
前述の208と見た目はあまり変わりませんが、RR規定のプジョー208R2です。
208GTiとは違い1.6リッター自然吸気ですが、電子制御のシーケンシャルミッションからなる走りはWRカーそのものです。
サンクレーシングより柳澤宏至/中原祥雅組が参戦しています。
ベース車両スペック
エンジン:直列4気筒1.6リッター 自然吸気
レイアウト:FF(フロントエンジン・フロントドライブ)
車体寸法(全長×全幅):3,962×1,739mm
車体重量:1,030kg(R2)
車体価格:57,500€(R2コンプリートカー)※架装費、渡航輸送費、各種登録費別途
ABARTH 500 R3T(RR)
見た目可愛らしいフィアット500に見えますが、アバルトブランドで販売されている500で、それをグループR規定車両にしているアバルト500R3Tです。
1.4リッターターボエンジンに電子制御式のシーケンシャルミッションを組み合わせ、見た目にそぐわぬ走りを魅せてくれます。
ムゼオチンクエチェントレーシングチームより眞貝知志/漆戸あゆみ組が参戦しています。
ベース車両スペック
エンジン:直列4気筒1.4リッター ターボ
レイアウト:FF(フロントエンジン・フロントドライブ)
車体寸法(全長×全幅×全高):不明
車体重量:1,080kg(R3T)
車体価格(税抜):¥8,500,000(R3T)※架装費、渡航輸送費、各種登録費別途
CITROEN DS3 R3 MAX(RR)
JN5クラス最速のスペックを誇っているシトロエンDS3 R3-MAX。
1.6リッターターボエンジンに電子制御式のシーケンシャルミッションを搭載しており、グループRのR3Tクラスとしては規定目一杯のスペックとなっています。
通常の全日本戦では関根正人/小坂典嵩組ですが、モントレー嬬恋では新井2世である新井大輝/伊勢谷巧組が参戦していました。
ベース車両スペック
エンジン:直列4気筒1.6リッター ターボ EP6 CDT
レイアウト:FF(フロントエンジン・フロントドライブ)
車体寸法(全長×全幅×全高):3,948×1,715×1,520mm
車体重量:1,080kg(R3-MAX)
車体価格:68,900€(R3-MAX)※架装費、渡航輸送費、各種登録費別途
TOYOTA GT86 CS-R3(RR)
馴染みのあるトヨタ86。元々国産車ではありますが、こちらは海外ドイツにあるトヨタのモータースポーツ部門「Toyota Motorsport GmbH」から輸入しているRR車両のGT86 CS-R3になります。
ですので、当然左ハンドルです。
JN5クラス唯一のFR(フロントエンジン・リアドライブ)ですが、FRラリーカーの独特な動きは必見です。
2016年第5戦洞爺ラリー(北海道)では、元F1ドライバーであり現在はGT500のSaRDチームで活躍しているヘイキ・コバライネン選手が搭乗していました。
モントレー嬬恋では勝田3世となる勝田貴元/足立さやか組が参戦していました。
ベース車両スペック
エンジン:水平対向4気筒2リッター FA20
レイアウト:FR(フロントエンジン・リアドライブ)
車体寸法(全長×全幅):4,240×1,775mm
車体重量:1,080kg(CS-R3)
車体価格:84,000€(CS-R3)※架装費、渡航輸送費、各種登録費別途
まとめ
いかがだったでしょうか?
国内ディーラーでベース車両を購入し、ラリー用の改造を施していくRJ車両と、海外からグループR規定に沿った改造が施されたコンプリートカーを輸入するRR車両で構成されているJN5クラス。
チューニングカー的な要素とレーシングカー的な要素が入り混じる様子は、このクラスならではと言えます。
国際色豊かなJN5クラス、是非一度ご覧になってみて下さい。
他のクラスも是非チェックしてみてください。
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