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やたら速い”走る掃除機”出現
ウイングが他チームにも真似されると当然アドバンテージが奪われ、そこで”イノベーター”ジムは更なるアイディアを思いつきます。
彼が目をつけたのは、「バキュームクリーナー」の原理でした。
理科の時間で習った「パスカルの原理」を覚えていますか?
地上には常に1気圧の大気圧があって、真空状態の場所を作ると外部から大気圧で均等に押されます。
これは吸盤が張り付く仕組みそのものなのですが、掃除機の場合はファンが空気を常に吸いだすことで、掃除機のノズル内部が真空状態になり、地面に押さえつけられる…ということになります。
もうお分かりですね?
ジムは同じ仕組みでクルマを地面に押さえつける為に、サイドスカートを垂らして車体下を密閉、さらにはスノーモービル用のエンジンで駆動する2基の巨大なファンを装着したシャパラル2Jを実戦投入。
後部ファンを使って車体下の空気をぐんぐん吸って負圧を生じさせ、文字どおり地面に吸い付いて走るクルマを作ってしまったのです。
これは恐るべき速さを見せ、驚異的なダウンフォースは異次元のコーナリングスピードを生み出しました。
ところが大きな問題…というより案の定、ファンが“掃除機の如く”後方に撒き散らすダストや小砂利で、他チームからクレームが入り、その上「速過ぎる」という理由でレギュレーションに「空力パーツは可動してはいけない」というルールまで追加。
ファンカー技術は結果を残すことなく、お蔵入りとなってしまったのでした。
「いいえ、冷却ファンです」
こうして失われたファンカーのテクノロジーですが、その8年後…ジムに勝るとも劣らない鬼才の手により、まさかの復活を果たしてしまいます。
コーリン・チャップマンが生んだウイングカー(次回にて詳しくご紹介予定です)が驚異のイノベーションを生み、車体下部をウイング形状に成型することで、猛烈なダウンフォースを生じさせることが定石となりつつあった1970年代後半。
ブラバムのエンジニアだったゴードン・マレーは、このウイングカーの優位性を知りつつ、しかしアルファロメオ製の大きな水平対向エンジンはフロア下を理想的なウイング形状にするのに不利で、頭を悩ませていました。
そこで、「何かでダウンフォースを補えないかな…」と行き着いた答えが、車体後部にファンをつけて空気の抜けを良くするアイディアだったのです。
しかし!前述の通り「空力パーツは動いてはダメ」というルールは健在です。
マレーはこのファンは冷却ファンである、という建前のもとBT46Bを設計し、FIAのレギュレーションを持ってなんと弁護士に相談。
そこで書面を作ってもらい、ファンが「冷却用の電動ファンです」ということを証明するその文書をFIAに提出すると、あろうことか「合法」の裁定が出てしまうのです。
こうして1978年のスウェーデンGPに現れたBT46Bは驚異的な速さで優勝。
しかしシャパラル2J同様に、他チームから「砂利が危ないし、ずるい」と抗議が殺到し。わずか1戦1勝という成績のみを残し、冷却ファンカーもお蔵入りとなってしまいました。
まとめ
今回は速く走る為の邪魔者でしかなかった空気を「ウイング」という形で初めて味方につけ、更に過激なアイディアでクルマを地面に押し付ける「ファンカー」までをご紹介しました。
空力による効果は非常に大きいと同時に、それが失われたときに大きな危険を伴います。
しかし条件が揃ったときの圧倒的なコーナリングスピードは、ルールで禁止されたからといって諦められるものではありません。
その結果、ファンやウイングといった「単体」ではなく、シャシーとボディの形状を工夫して「全体」でダウンフォースを得よう、という試みに発展していくことになるのです。
偶然が生んだ大いなる発明は、レーシングカーの速さを劇的に高める、危険な“麻薬”だった…のかもしれませんね!
さて次回は「魔法のような力」で地面に張り付くグラウンド・エフェクトカーの登場です。ぜひお見逃しなく!
ダウンフォースとともにあらんことを…
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