現在ワールドスーパースポーツ世界選手権(WSS)に参戦中!Kawasakiのワークスライダーとしても活躍したレーシングライダー”渡辺 一樹”。彼は何を想い、どのように今の場所まで登り詰め、どこに向かって走っているのでしょうか。
渡辺 一樹:プロフィール
プロフィール
名前:渡辺 一樹 (KAZUKI WATANABE)
生年月日 : 1990.10.2
血液型 : O型
出身地 :山梨県
身長 : 170cm
体重: 68kg
参戦カテゴリー:ワールドスーパースポーツ世界選手権(WSS)
所属チーム: TEAM GO ELEVEN KAWASAKI
レース戦歴
全日本ロードレース選手権(GP250)
2007年:Team Danke Racing(ヤマハ・TZ250) ランキング11位
2008年:RACING TEAM森のくまさん 佐藤塾(ヤマハ・TZ50) ランキング8位
2009年:COLT & SJ-R (ヤマハ・TZ250) ランキング4位
全日本ロードレース選手権(J-GP2)
2012年:RS-ITOH & ASIA (KAWASAKI・ZX-6R) ランキング1位
全日本ロードレース選手権(JSB1000)
2013年:Team GREEN (KAWASAKI・ZX-10R) ランキング7位
2014年:Team GREEN(KAWASAKI・ZX-10R) ランキング7位
2015年:Team GREEN(KAWASAKI・ZX-10R) ランキング3位
2016年:Team GREEN(KAWASAKI・ZX-10R) ランキング6位
スーパースポーツ世界選手権(WSS)
2017年:Team Go Eleven Kawasaki (KAWASAKI・ZX-6R) 参戦中
常に世界を目指して走り続けてきた渡辺選手は全日本で活躍する裏側で、2010年、ロードレース世界選手権(Moto2クラス)第13戦アラゴンGP以降の参戦シートを獲得するも、結果が残せず解雇。
翌2011年は、スペイン選手権(CEV)のMoto2クラスへの参戦を目指すも資金面などの問題により断念。
そんな紆余曲折を経て、遂に今シーズンWSSへのシリーズ参戦を実現させました。
それは、決して簡単な道では無かったと思います。
現在も世界で走り続ける為に、前だけを見て走り続けている渡辺選手の想いを実際に聞いてきました。
渡辺一樹:インタビュー
バイク、そしてレースとの出会い
ーーー バイクに乗り始めたきっかけを教えてください。
父親が元々モトクロスのレースをしていて、と言っても現役時代は知らないんですけど・・・。
自分には兄弟が上に2人いて、その2人が結構早い段階でバイクに乗っていたのを見ていて。
ふとしたタイミングで、小学校4年生ぐらいの時に「ちょっと乗ってみる?」ってなって。
そこで試しに乗ってみたら、「スッゲー楽しい乗り物だな。」ってイメージがついたんですよ。
で、その記憶だけが強く残ってたけど、その後ちょっと期間があいて・・・。
中学校2年、14歳の時に改めて自分の親にお願いしました。
「バイクに乗らせてくれ。」って。
そこからバイクとの生活がスタートしました。
ーーー レーシングライダーを目指したきっかけは?
自分の中で、「バイクに乗ったら、それは誰かと競う事。」というイメージがあって。
それは、元々父親がレースをやっていたという事もあるし、TVでもたくさんそういう映像を見てたし、バイク=誰かと競う乗り物という風に思っていたので、「街乗りする!」というような感覚は全然なかったですね。
速く走る為に、バイクのキャリアがスタートしたんです。
ーーー 一番最初に憧れたライダーは?
強く誰かに憧れるという事が、あんまり無いんですよね。
ミニバイクからロードレースにステップアップするような時期になって、ワールドグランプリをたくさん見るようにもなって、という辺りで原田哲也さんに憧れはありました。
すごく冷静で、しっかりとバイクの事を分析しつつ、レースでは熱い面も見せる。
そんなライディングスタイルに憧れていました。
ーーー 現在憧れているライダーは?
今ですか。
今は、ある程度自分のライディングスタイルが出来上がってきてるというのもあるし、自分自身を作り上げていかなきゃいけないという気持ちもあるので、あまり誰かに憧れていると言う事はないんですが・・・。
ここ4年間はずっと柳川(明)さんと一緒にレースをしてきたので、柳川さんはもちろんこの世界にいるので、バイクに乗ったら速いのは当たり前なのですが、バイクを降りた後もすごくプロフェッショナルだし、人としてすごくいい人で。
何だか安っぽく聞こえてしまうかもしれませんが、そういう面もしっかりと持ったライダーなので、こういうライダーになりたいという指標はあります。
家族がバイク競技をしていた事により、幼い頃から『当たり前』にそこにあったバイク。
そして、バイクに乗るという事は、誰かと競う事。
”渡辺一樹”は、レーシングライダーになりたいという夢を持つ事が当然と言っても過言ではない程、自然にバイク競技に触れてきた。そんな環境に生まれ育ったのです。
最速への夢
ーーー 現在の目標はなんですか?
現在WSSで戦っているので、レースはいつでもどんな場所でやっていても、勝つことを目的にやっています。
さっきも言いましたが、バイクのキャリア自体がそういうものだと思ってスタートしているので当然、今シーズン中というか、なるべく早い時期に表彰台なり優勝ができるようにというのが目標ですね。
ーーー 最終目標はありますか?
今、あんまり具体的に2年後、3年後の目標を立てられる環境に無いという事もあるんですけど、元々昔から世界で走りたいという気持ちはあって。
その中で、より具体的な目標は、もちろんレース自体は勝つためにやっているんですけど、それは目標ではなくて普通だと思ってやっているので・・・。最終目標って何かあるかな?
速く走れればそれでいいんですよね。
舞台がどこかという事よりも、最終的に世界最速という意味ではMotoGPに行きつくかもしれないんですけど、自分が今よりどんどん上手くて速いライダーになれればそれが一番いいのかなって。
それが最終的にMotoGPに繋がればいいし、それが結果的にSuperBikeになるかもしれないし、それはなってみないと分からない部分ですけど・・・。
より上手く、より速くなりたいです。
ーーー バイクレースはお金がかかると思いますが、レース参戦にあたり資金はどうしていますか?
たくさんの応援してくれる皆さんのおかげで、ここまでレースがやってこれました。
本当に、周りの人たちに助けられて、やっとレースができています。
なので、資金をどうしてるかと言うと、そう言った応援してくれている人からの資金で何とか走れてるという所です。
ーーー レースを辞めようと思った事はありますか?
何回もあります。
一番それを考えたのは、2011年。
自分のキャリアの中で、丸々1年全く走らずに終わってる年があるんですけど、その期間はもうバイクに乗る事は無いだろうなという気持ちで過ごしていました。
そのシーズン自体も開幕直前まで、多分このチームで走れるだろうという事は決まっていて、スポンサーさんにも資金をサポートしてもらう約束をもらっていて、そのシーズンに挑む予定だったのが、色々あって無くなってしまって。
それ以上レースを続ける事が、難しくなって。
まあ、当然1年走ってない=走るチャンスが無かったので、きっとこれでレースキャリアが終わるんだろうなって自分の中では思ってました。
ーーー それでも辞めなかったのは何故ですか?
何もできなかった次の年、RS-ITOHというKawasaki系チームの監督が全日本ロードレース選手権のJ-GP2クラスで走るチャンスをくれたんです。
色々なタイミングが合ったというのもあると思うけど、自分もこれがラストチャンスだと思ってその1年を戦ったのが結果的にシリーズチャンピオンという最高の結果で終わる事ができたので、監督のおかげですね。全部。
夢はどこで走るかではなく、誰よりも速く走れるライダーになる事。
自分との戦いを続けた結果、その力量に応じた舞台が開けていくはず。
そう信じて走り続ける事で1度は諦めかけた夢を取り戻し、現在の場所まで一気に駆け上がって行ったのです。
現実の世界
ーーー ファクトリーとプライベーターの違いは何ですか?
そこを表現するのは難しいんですけど・・・。
ファクトリーチームと言うのは、例えば「こういうモノが欲しい。」と言えば、それが有るのがファクトリーチームなので、そういう意味では、レースを戦う上では一番いい環境になるのかな?と思うんですけど、じゃあ、プライベーターはそういうチャンスが全く無いのかというと、逆にパーツが豊富に無い分、知識を絞り出してレースをするので、全く取る方法が違うんですよ。
そこで、結局目指している所は同じなので、その上で試行錯誤する方法が変わってくる点が一番大きな違いじゃないかと思います。
ーーー バイク以外に趣味はありますか?
・・・。バイク以外の趣味。
それを聞かれるといつも困るんですよね。
趣味って言うほど一生懸命やれないけど・・・息抜き程度で音楽を聞いたり、自転車に乗りに行ったりはするけど、それが趣味かって聞かれると・・・ただスイッチがオフになるだけで、それを楽しむためにやっている感じじゃないんですよ。
ーーー レースや大事な事の前に必ずやることはありますか?
あんまりゲン担ぎをする方ではないんですよね。
ただ、出かける前に家の掃除は必ずしていきます。
やはりレースは危険を伴うので、ここに帰ってこれないかもしれない。
ずっとそれを考えている訳ではないけど、生活感がある状態でレースに行って、死んじゃったとかなった時に、必ず誰かがそこを片付けなきゃいけないじゃないですか。
それは親だったり兄弟だったり、というのを考えた時があって。
そういう場合、もういない人の居た痕跡がある場所を片付けるのってすごく辛いと思うんですよ。
だから、少しでも生活感を無くした状態で出かけます。
それは、自分の中の覚悟という意味でも有るし、自分が死ぬことによって家族の負担にならないようにしたい。
ーーー 今シーズンの意気込みは?
現在ハード面での環境が揃ってなかったりと苦しい部分はあるのですが、それでも毎レースごとに積み上げていけているので、もう少し時間が必要かもしれませんが、確実に今シーズン表彰台に乗れるように、まず勝てるようにならなければいけないと思っています。
ーーー 現在レーシングライダーを目指している若者へ一言
楽しくバイクに乗るのが一番!
楽しく乗れば上手くもなるし、自然とバイクも自分の体に馴染んでくるので、考えすぎずにまずバイクを楽しむこと。
それを大事にして欲しいかな。
その上で、レースで上を目指すなら楽しむためにどうするかというのを考えればいいと思います!
いちばん大事なのはバイクを楽しむという気持ち。
それはワークスライダーという、日本でトップレベルと言っても過言ではない場所でレースを経験したからこそ言える言葉ではないでしょうか。
そして、自分がバイクを楽しむ為にどうするか。
考えた結果が、現在のWSSという世界への挑戦だったのです。
まとめ
バイクに乗ること=レースという環境からバイクキャリアをスタートさせ、何度も絶望を経験しながらも、バイクを楽しむことだけを考え続けた渡辺選手。
現在のモータースポーツ業界では、レースを続けるという事自体、簡単な事ではありません。
それは、才能や実力の問題だけではなく、資金面やタイミングなど全てが大きく影響するからです。
多くのレーシングライダー達が夢半ばで離脱していく世界で、目の前に転がり込んできた最後のチャンスをつかみ取り、日本のトップでレースを戦ってきました。
そして現在は、世界という自身の夢の舞台で挑戦を続けています。
そんな、渡辺選手の戦いを、是非応援してくださいね。
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