2019年シーズンから開催が決定しているアジアロードレース選手権の1000ccクラス『ASB1000』は、ダンロップタイヤのワンメイク供給になることが発表されました。レギュレーションはWSBK併催のスーパーストック1000とほぼ同様の『90%STK1000と同じで、残りはアジアエリアに合わせた仕様』となる模様です。そんな来季に向けて注目を集めるなか、開催された2018年ARRC第3戦!各クラスの魅力とスーパーバイク開催に向けた選手権の展望を調査しに、鈴鹿サーキット国際レーシングコースへ行ってきました。

 

3桁のゼッケンナンバーで走るライダーが多いアジアロードレース選手権。 / Photo by TEIJI KURIHARA

 

 

 『カブ主様』注目!ビジネスバイクの闘い。モンスターマシンUB150

 

本格的なタイヤウォーマーが巻かれたUB150車両。 / Photo by TEIJI KURIHARA

 

アジアロードレースの中で、他カテゴリーとは少し趣の違う魅力があるクラスが『UB150』です。

UBとは”Under Bone Frame(アンダーボーンフレーム)”のことで、いわゆるスーパーカブの形をしているビジネスモデルに近いバイクを使用し、公式レースが行われます。

ベースは、アジア地域で日常の足として使用されている、ホンダ・スーパーカブや、ヤマハ・メイトといった排気量僅か150ccのオートバイなのですが、レギュレーションに沿ってフルチューンが施されており、排気音も開催クラスの中では最も大きく、実際に見るとその迫力と『速さ』に誰もが圧倒される事に!

2018年に開催された、鈴鹿ラウンドでの予選ラップタイムを比較してみると、UNDERBONE150車両が 2分39秒.262に対して、サンデーロードレース『CBRカップ』CBR250RRが2分39秒.640と、250ccのロードバイクを上回るタイムを叩き出す速さです。

マシンの中心部分にガソリンタンクが無い為、ニーグリップが出来ずスクーターレースに似たテクニックを駆使してコーナーリングをするライダー達。

ストレートでスリップストリームを使い合い3~4台並びながら各コーナーに進入していく様子は、全日本選手権などでは見られない光景です。

 

 

アジア各国では、市街地コースや駐車場などでも頻繁にアンダーボーンの地方戦が開催され盛り上がりをみせています。

身近なマシンで参戦可能な為、観客の人気も非常に高く、現地にはこのクラスの職業レーサーが既に多数存在。

ライダー達は真剣そのもので、その熱気とアジア独自のレースの雰囲気は鈴鹿でも十分に味わえます。

 

 人気のプロダクション250バイクでアジアへ武者修行!

 

大混戦のグループでバトルするゼッケン92成田彬人選手(Team HIRO)。 / Photo by TEIJI KURIHARA

 

アジア地域で人気の市販250ccマシンで開催されるのが『ASIA PRODUCTION250cc』で、2015年より開催されており、初代チャンピオンは、今回ワイルドカード参戦の山本剛大選手(トリックスターレーシング)。

ホンダのCBR250RRや、ヤマハのYZF-R25などで争われています。

昨年のチャンピオンチーム、Astra Honda Racing Teamのレーザ・ダニカ・エーレンス選手や、タイYAMAHAのエース、アヌパップ・サルムーン選手など『インドネシア』と『タイ』の若手ライダーが上位を占めハイレベルな走りを披露しています。

こちらもMFJカップJP250クラスと、今回開催のAP250クラスの予選ラップタイムを比較してみました。

2018年のMFJGP、JP250が2分29秒.232に対して、今回のAP250のポールポジションタイムが、2分27秒.013なのでアジアプロダクションが『約2秒』速い結果に!

トップ争いも10台以上で行われることが多く、チェッカーを受ける最後の最後までデッドヒートが毎レース繰り広げられています。

また、アジアロードレース選手権では、各クラス8名の日本人ライダーに対してワイルドカード枠が用意されており、AP250クラスでは、ワイルドカード参戦を果たした6名のライダーの中で成田彬人選手(Team HIRO)がレース2において見事5位入賞となりました。

 

 

人気のプロダクションバイクレースで、アジア各国のライダーと競い合い武者修行が出来るレースは、日本ではこの鈴鹿ラウンドのみ。

多くの日本人ライダーが参戦し、アジア地域での日本人ライダーのレベルが明確になるのがAP250クラスの特徴です。

 

 600ccとは思えない!激しいアジアのトップ争いが勃発するSS600

 

SUPERSPORTS600クラス / (c) Mobilityland Corporation All Rights Reserved.

 

2000年からアジアロードレース選手権のメインクラスとなったのが『SUPERSPORTS600cc』で、『ホンダ CBR600RR』、『ヤマハ YZF-R6』、『カワサキ ZX-6R』など日本でも人気のある600ccスーパースポーツで争われています。

2011年に藤原克昭氏(現Kawasaki Racing Teamコーチ・アジア統括)、2012年には清成龍一選手、2015年には高橋裕紀選手などの世界で実績のある日本人ライダーが参戦し王座を獲得。

2018年シーズンに”マレーシア人初のMotoGPフル参戦ライダー”となったハフィス・シャーリン選手もSS600で育ったライダーの一人です。

オーストラリアのアンソニー・ウェスト選手、日本からは伊藤勇樹選手、マレーシアのアズラン・シャー・カマルザマン選手や、タイのケミン・クボ選手など、各国を代表するような形でライダーが参戦しているこのクラスはアジアのロードレースの頂点に位置します。

イコール・コンディションに近いレギュレーションで行われている為、毎レース600ccクラスとは思えない程の激しいトップ争いが勃発。

今回の鈴鹿ラウンド・レース2においても最終ラップの最終シケインまで激しいトップ争いが行われ、1位から10位までが二秒以内に収まるという驚きのレース結果に!

 

 

第2戦オーストラリア・レース2で見事優勝を果たした伊藤勇樹選手(YAMAHA Racing Team ASEAN)は、鈴鹿ラウンドでのレース1・2共に4位入賞を獲得し、今後一層期待のかかる日本人ライダーです。

 

サーキットに舞う『やまとなでしこ』注目のナデシコライダー参戦!

 

ゼッケン79 小椋華恋選手(PRO POWER ASIA DOG FIGHT Racing)/ Photo by TEIJI KURIHARA

 

AP250クラス開幕戦で初優勝を飾った、ムクラーダ・サラプーチ選手(A.P.Honda Racing Thailand)やARRC併催のサンデーロードレースで勝利した高杉奈緒子選手(41プランニング)等、最近のロードレース界では他のスポーツと同様に”女性”の活躍が目立つようになってきました。

MFJカップJP250に参戦中のライダーで、豪快なラィディングフォームで観客を魅了しているのが小椋華恋選手(PRO POWER ASIA DOGFIGHT Racig)。

そんな彼女がARRC鈴鹿ラウンドで念願のAP250に出場を果たし、レース2における中位グループの激しい先頭争いを繰り広げ、日本のファンを楽しませてくれました。

レース後にアジアロードレース選手権に対するコメントを頂けたので、こちらでご紹介致します。

 

画像提供:小椋華恋選手

 

ARRC 鈴鹿ラウンド予選22位
レース1  19位 レース2 18位

コメント】

今回ワイルドカード枠としてARRCに参戦する機会を頂き、AP250クラスで戦ってきました。

結果は「ポイントは取りたい!」と挑んだ今回でしたが、アジアのレベルは私の想像より遙かに高いものでポイントには届かず19位、18位と終わってしまいました。

しかし、今回学ぶものは、すごく多かったです。

今回のAP250はJP250のレースと違い、給料が発生するライダー達の戦いの場です。

レースに対する考え方、取り組み方。レースに対する想いの違いを凄く感じました。

セッティング、ライティングはもちろん、気持ちの面でも学ぶことは凄く多かったです。

まだまだ、セッティングや私自身の伸び代が見えたので、次戦のSUGOと筑波が楽しみです。

これからも見て頂いている皆様が『面白い!』と思えるレースをして行きたいと思っています。

沢山の応援メッセージ、お声がけありがとうございました!

2018/06/09            小椋華恋

https://ameblo.jp/karen-24/ ⬅小椋選手ブログ『華恋日記』

 

まとめ

 

YAMAHA Philippines Racing Team / Photo by TEIJI KURIHARA

 

2019年シーズンより、アジアロードレース選手権の最高峰クラスとしてスタートする『ASB1000』。

その背景には、アジア諸国の二輪車販売台数が大きく関係していると考えられています。

日本の新車二輪の販売台数は、1982年の年間328万台をピークに減少傾向で、最近では年間40万台を切り、ピーク時の約1/10にまで落ち込んでしまってるのが現状です。

これに対して、アジア諸国の新車販売台数は、2016年の資料によるとインドネシア年間590万台、タイ170万台、フィリピンで115万台と各国が驚くべき数値の年間販売台数を記録しています。

従来、アジア地域ではアンダーボーンクラスのベースとなっている排気量110cc~150ccクラスのバイクがメインで販売されていて、同じくAP250のベース車両である250ccクラスも人気がありシェアを伸ばしていました。

しかし2012年頃からヤマハR1、R6などのスーパースポーツが販売されているインドネシアを例に取ると、徐々に125cc以上の販売台数が増えてきて、現在では『リッターバイク』や『600cc』の購入希望者が、増加傾向にあると発表されています。

また、今回調査してわかったきた事のひとつに、日本のオートバイメーカーが、巨大なアジアマーケットをどう捉えてモータースポーツの分野において今後どう歩んで行くのか?という問題があります。

その答えがアジアロードレース選手権に対する各メーカーの参戦体制の強化、そして最高峰クラス”1000cc化”に繋がっている様な気がしました。

2019シーズンからのアジアロードレース選手権1000ccクラス開催で、日本のライダーや日本のコンストラクターによるASB参戦や、純アジアチームによるアジア人ライダー同士での鈴鹿8耐ストッククラス参戦など様々な波及効果も大いに期待できると思います。

 

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