6月中に梅雨明けするという異例の速さで夏に向かう中、ピーク時には路面温度が50度を超えるという異常な暑さで迎えた全日本ロードレース選手権 Rd.5 ヒート2。立っているだけでも体力を奪われる。そんな厳しいコンディションで戦ったライダー達の結末は、どんなものだったのでしょうか。
まずは、J-GP3クラス決勝レースヒート2
前日に行われたヒート1に続き、真夏の強い日差しが降り注ぐ灼熱の中行われたJ-GP3クラス 決勝レースのヒート2。
スタートを決めてホールショットを奪ったのは、ポールポジションスタートの#3 古市右京 (KTM.ASPIRATION Racing)。
その後を、#62 埜口遥希(56RACING)、#71 小室旭(Team P.MU 7C MIKUNI)と続きます。
そして次々とライダー達が1コーナーに飛び込んでいくも、#15 岡崎静夏(Kohara Racing Team)が立ち上がり時にハイサイドを引き起こし、転倒。
スタート直後というタイミングの悪さも影響し、 #16 高杉奈緒子(41Planning)、#17 野澤秀典(ノザワレーシングファミリー)を巻き込む多重クラッシュとなってしまい、赤旗中断。
レースの周回数は13周となり、再スタートが切られました。
再開後のレースでホールショットを奪ったのは、再び古市。小室、埜口がその後を追いかけます。
そして、古市、小室、埜口の3台が激しく順位を入れ替えるトップ争いを繰り広げ、オープニングラップを制したのは古市でした。
そんな抜きつ抜かれつの激しいバトルを展開しながらレースは進み、トップ集団に残ったのは古市と埜口の2台。
2台が細かく順位を入れ替えながらトップ争いを繰り広げる中、16番グリッドスタートの#61 岡谷雄太(MORIWAKI CLUB)が驚異のジャンプアップを見せ、トップ集団に介入。
そこからチェッカーを受けるまで、3台での激しいバトルを繰り広げ、テールtoノーズの接戦を制したのは、今シーズン3勝目となる岡谷でした。
Motorz注目の♯13長谷川聖 選手(CLUB Y’s & J)の決勝は?
前日の公式予選セカンドベストタイムにより、7番グリッドスタートとなった長谷川選手。
スタートを決め、スムーズに1コーナーに進入していきます。
しかし、1コーナー立ち上がりで岡崎選手がハイサイドを起こし転倒。
それに巻き込まれる形で多重クラッシュが起こり、赤旗中断となりました。
その転倒集団の直後を走っていた長谷川選手は、ギリギリ転倒を回避する形でピットに戻ります。
しかしレースの再スタート時間が決定し、グリッドに付こうとエンジンを始動するところで、電気系トラブルが発生。
エンジンがかからず、サイティングラップはピットスタートとなってしまいます。
そして、ギリギリ再スタートには間に合う形でグリッドに復帰するも、復旧しきれなかった電気系トラブルと、異常とも言える路面温度の高さに対応する為に選択したタイヤの特性に苦しみ、なんとか8位でチェッカーを受ける苦しいレースとなりました。
長谷川選手 決勝レースヒート2終了後コメント(決勝:8位)
ヒート2は、路面温度がめちゃくちゃ高かったので、ハードタイヤを入れさせてもらって、それを朝フリーで履いてみて、特に問題は無さそうだったので決勝もそのまま行く事にしました。
でも、決勝で走ってみると全然グリップしなくて・・・。
使い方が分からなかっただけなのかもしれないのですが(笑)
まだ、自分には使いこなせませんでした。
それと、バイクの電気系がおかしくなって、スタートでエンジンがかからなかったりとか・・・。
ストレートも全然走ってくれなくて、結局またずっと無理する感じのレースになってしまいました。
それでどんどん抜かれて、最後はちょっと追い上げたけど、結局届かず・・・8位でしたっけ?になってしまいました。
次戦のオートポリスは、去年が初走行だったのですが、結構いい感じで走れて、タイムも出たし、決勝もトップ争いが出来たりと、いいイメージばかりなので楽しみです。
そんな長谷川選手に聞いてみた。筑波サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):
①ブレーキングを詰めていくのが楽しい。
②バンクしているので、すぐ向きが変わって楽しい。
③リズム良く切り返せて楽しい。
④どこまででも行けそう。
苦手(赤〇):
①ストレートが短くて、サインボードを見る暇がない。
②ハイサイドをしている人をよく見るから怖い。
③リアのトラクションをかけづらい。
④路面がボコボコ。
筑波サーキットは走るのは簡単だけど、その分タイムを詰めるのが難しいコースだと話してくれた長谷川選手。
灼熱の中、ヒート1・2通して前を走る集団に必死で食らいつき、どんな苦しい状況でも諦めないレースを見せてくれました。
レース内容を見ていると、着実に成長を遂げている長谷川選手。
次戦オートポリスは得意なサーキットという事で、次こそは表彰台!!期待したいと思います。
Motorz注目の♯29鈴木 大空翔 選手(BATTLE FACTORY)の決勝は?
公式予選のセカンドベストタイムにより、24番グリッドからスタートした鈴木選手。
高すぎる気温と路面温度に苦戦しながらもスタートを決め、順調に周回をこなしていきます。
そして、安定した走りでポジションをキープ。
そのまま、チェッカーを受けるかと思われた12周目に、スタート直後からずっと前を走っていた野澤選手をパス。
上位集団での転倒も有り、15位でチェッカーを受ける粘りのレースを見せました。
鈴木選手決勝レースヒート2終了後コメント (決勝:15位)
気温が高すぎたのでマシンの水温がすごく高くなってしまって、ストレートが少し遅かったんです。
それに焦って、ミスをしてしまって・・・。
最後に1人だけ抜けたけど、もう1人ぐらい抜きたかったです。
昨日のヒート1と少しマシンのセッティングを変えたら、タイヤが滑りにくくなったので、キッチリ体が動かせて路面温度が高い事によるアクシデントには対応できたので、良かったと思います。
次戦のオートポリスは走った事がないので、まずはテストでしっかり走れるようにしたいです。
そんな鈴木選手に聞いてみた。筑波サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):カントを使ってしっかり曲げて行ける。
苦手(赤〇):
①カントがないから滑る。バイクを曲げていけない時がある。
②スピードをイマイチ乗せていけない。
③スピードを殺し過ぎてしまって、立ち上がるスピードが遅くなってしまう。
④スピードが遅くてストレートでのスピードがのらない。
事前テスト、レースWEEKを通して、今回が筑波初走行の鈴木選手。
慣れないコースというだけでなく、異常なほど高温となった路面温度や気温に苦戦した事も、苦手と感じる部分が多くなってしまった要因ではないでしょうか。
そんな筑波サーキットは鈴木選手にとって、休むところがなく体力が必要で、ブレーキをしっかりかけていくコースという印象だと教えてくれました。
続いてJ-GP2クラス決勝レース ヒート2
前日に行われたヒート1に引き続き、ジリジリと痛いくらいに日差しが降り注ぐ灼熱の中行われたJ-GP2クラス 決勝レース ヒート2。
まず、ホールショットを奪ったのは3番グリッドスタートの#44 関口太郎(SOX Team TARO PLUSONE)。
その背後にピッタリと、ポールポジションスタートでヒート1勝者の#4 岩戸亮介(Team高武 RSC)が食い下がります。
そして、関口、岩戸、#70 岩崎哲朗(OGURA CLUTCH with RIDE IN)、#16 作本輝介 (Team高武 RSC)の順でトップグループを形成し接戦を繰り広げるも、3周目に岩戸がトップに立つと、そのまま一気に2位以下とのギャップを広げていきました。
その後、トップの岩戸は独走状態となり、レースは中盤へ。
このままヒート2も岩戸が制するかと思われたレースに動きが。
徐々に関口がトップとの距離を詰め、岩戸をプッシュし続ける激しい展開に!
そして16周目、遂に関口がトップに立つと、そのまま20周を走り切りコントロールラインを通過。
関口、岩戸、作本、岩崎の順でチェッカーを受けました。
Motorz注目の♯71 三原 壮紫 選手(TONE RT SYNCEDGE4413)の決勝は?
7番グリッドからスタートした三原選手。
レース序盤は前を走る#34 榎戸育寛選手(Kohara Racing Team)にピッタリと食らいつき、プッシュし続けるも中々前に出る事ができず苦戦します。
そんなバトルを繰り広げていた9周目、同じ集団を走っていた#10 KUBO KEMINTH (伊藤レーシング)、#64 伊達悠太 (KIMA Racing)にパスされ、一時は10番手までポジションを下げてしまいます。
しかし、その後も諦めることなく安定した走りで、前のマシンを1台1台着実にクリアしていき、8位でチェッカーを受ける強さを見せました。
三原選手 決勝レースヒート2終了後コメント(決勝:8位)
ヒート1よりはスタートが上手く決まったのですが、前に居た榎戸選手を抜くのに手間取ってしまって、先頭集団から離されてしまいました。
なんとか上手く抜けた後のペースアップがイマイチだったかな?というのと、もうちょっとフロントのマネジメントが出来てたら、もっとタイムを上げられたかな?というのが今回の失敗点です。
それを踏まえて、期間は少しあいちゃいますが、オートポリスまでには自分でよく考えて、メカさんとも話をして、その前にある8耐の1000㏄のマシンで、このGP2 の600㏄に活かせる事を勉強して、次はもっといいポジションを狙って行きたいと思います。
そんな三原選手に聞いてみた。筑波サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):1ヘアは自分の中で一番得意で、バイクの向きを変えやすいし立ち上がりに向けてのアクセルが開けやすい。
苦手(赤〇):定常円旋回でバイクのピッチングが作りにくい。
筑波は全日本が開催されるコースの中では一番小さく、細かくバイクの向きを変える必要があるとても体力を使うコースだと教えてくれた三原選手。
それでも、タイヤのライフが終了するレース後半もほとんどアベレージを下げずに走り続ける実力を見せてくれました。
鈴鹿8耐への初参戦も決定し、勢い抜群!
普段のスプリントレースとは違う、過酷な8時間の耐久レースを経て、オートポリスでは是非表彰台に上がる姿を見せもらいたいと思います。
Motorz注目の♯7 石塚 健 選手(will-raise racing RS-ITOH)の決勝は?
前日に行われた公式予選のセカンドベストタイムにより、9番グリッドスタートとなった石塚選手。
スタート後の波にのまれ、1度は11番手までポジションを下げるも、集団に必死に食らいつきます。
そして、周回を重ねるごとに着実に前との距離を詰め、安定した走りで10位でチェッカーを受けました。
石塚選手 決勝レースヒート2終了後コメント(決勝:10位)
決勝レースのヒート2が終わりました。結果としては10位でチェッカーでした。
昨日転倒してしまった原因の追求とその反省をしっかりとして、最低限チェッカーを受けれたという事は良かったと思います。
まだまだ目指している位置でのレースはできず、前回の怪我から流れが変わってしまって悔しいレースだったのですが、後半戦に向けてここから再スタートだと思って頑張ります。
今回のレースWEEKは、怪我の影響で走れるかどうか微妙だったところから始まったので、しっかり走る事が出来たのは本当に良かったのと、新たに感じた自分の弱さと課題をしっかり見つめなおして後半戦は優勝できるように頑張っていきたいと思います。
そんな石塚選手に聞いてみた。筑波サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):①ブレーキングからの向き替えが得意。
②うまくゼブラをカットして、1ヘアに向けてラインを取るのが得意。
苦手(赤〇):自分の車体にうまく合わない所。切り返しが重く、理想からワンテンポ遅れる。
筑波サーキットは、流れるようにコーナーが続く、比較的ショート目のコースだと話してくれた石塚選手。
今回は、前戦からの怪我をかばいながらのレースとなってしまいましたが、ここからが巻き返し!
怪我を完治させて、後半戦ではいつもの勢いのある走りを見せてもらいたいと思います。
Motorz注目の♯31 豊島 怜 選手(DOG FIGHT RACING・YAMAHA)の決勝は?
予選ではマシントラブルによる転倒で、アタックするタイミングを逃してしまった豊島選手。
18番グリッドからのスタートでしたが、スタート直後の1コーナーで一気に16番手までポジションを上げます。
そして順調に周回を重ねた6周目に、前日と同じミッショントラブルが再発してしまい、最後尾に。
転倒は免れたものの、そのまま何とか走り切る形で17位でレースを終える悔しい結果となりました。
豊島選手 決勝レースヒート2終了後コメント(決勝:17位)
ヒート2は18番グリッドからのスタートで、昨日みたいにスタートが決まればよかったのですが、ごく普通のスタートで・・・。
スタート直後にポジションは上げれたのですが、レース中盤ぐらいに1コーナーでまたミッション系のトラブルが出てしまって。
ミッションを新品にしたのにこのトラブルが出たという事は、僕の操作も悪いんだと思うんですけど、それで最後尾まで落ちてしまって・・・。
そこから追い上げのレースになってしまいました。
今回順位はすごく悪かったのですが、2レースとも走り切って、得られるものもすごくあったし、かなりいい経験になって良かったです。
次戦のオートポリスは全く走行経験がないので、この3戦で学んだ事を活かして、もっと前について行けるように頑張ります!!
そんな豊島選手に聞いてみた。筑波サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):切り返しのステップワークに自信があるから。
苦手(赤〇):左コーナーでカントがあるところは珍しく、なかなか攻略できない。
筑波サーキットは簡単に見えて、走ってみるとテクニカルで癖のあるコース。
そんなコースレイアウトに苦戦し、マシンにもトラブルを抱えた状態で諦める事なく走り切った豊島選手。
今年はトップライダーになる為の勉強の年!
少しでも前のライダーに食らいついて盗めるスキルは全て盗むと向上心剥き出しの姿勢に、応援せずにはいられません。
次戦オートポリスでの走りにも期待したいと思います。
まとめ
どこにでもいるような年相応の普通の無邪気な少年たちが、ヘルメットを被った瞬間プロのレーシングライダーとなる。
そして、どんなに辛いコンディションでも、どんなに不利な状況でも諦める事なく1つでもポジションを上げてのチェッカーを目指して走り切る。
そんな自分との闘いとも言えるロードレースの世界で、物心がつくか付かないかという幼少期から戦い続けているライダー達。
この少年達から見える世界は、いったいどんなものなのか。
それが、少しでも多くの人に伝えられたら嬉しいです。
次戦は、9月1・2日のオートポリス!是非、応援してくださいね。
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