1994年からシリーズ戦として本格的にスタートした全日本GT選手権(以下:JGTC)。現在のスーパーGTよりも”GTカー”色がより強く、様々な特徴を持ったマシンたちが王座を狙って熾烈なバトルを繰り広げていたシリーズです。街中で見かけるスポーツカーに巨大なワイドフェンダーとウィングを装着し、市販エンジンを極限までチューニングして搭載したGTマシンに誰もが熱狂していきました。今回はJGTC歴代チャンピオンを抜粋してご紹介しつつ、その後スーパーGTへと繋がっていく各マシンの変貌に触れていただこうと思います!
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1994年 Korg Kegani Porsche
JGTC初年度GT2クラス(現GT300)のシリーズチャンピオンは小幡栄選手が駆るコルグ ケガニ ポルシェ!
当時のGT2クラスはプライベーター専用と言ってもいい様相で、他カテゴリーからの転用や、ショップ独自で開発したマシン等が主流でした。
そんな中でポルシェ勢はカレラカップ出場車をJGTC用にアレンジして参戦。
開幕2連勝を飾ったケガニレーシングがその後も2ケタポイントを連取して、見事シリーズチャンピオンに輝きました。
それにしても「ケガニ ポルシェ」ってユニークな名前ですよね。
ちなみに、ケガニの由来は、チームオーナーでサザンオールスターズのパーカッションの野沢秀行さんが、自身のあだ名が「毛ガニ」だったことから「Kegani-Racing」という名前でチームを結成したそうです。
その他にも、当時は「あめんぼうシルビア」や「欧州車販売の外国屋スカイライン」等、おもしろいエントリー名のマシンがたくさん出場していたんです!
1995年 欧州車販売の外国屋スカイライン
前年に接戦の末ランキング2位となった外国屋スカイラインが1995年シリーズチャンピオンを獲得。
開幕2連勝からのチャンピオン獲得は、前年のケガニポルシェと同様のパターンです。
この年のGT2クラスにはDTMから転用されたBMW M3や993型に進化したポルシェも参戦していたのですが、そんな中でも2世代前のR31型スカイラインでシリーズチャンピオンを獲得してしまう石橋義三選手は驚異的です。
ちなみに外国屋スカイラインは元々グループAで活躍したカルソニックスカイラインを転用したマシンだとか。
1996年 Taisan Starcard RSR
1996年からクラス分けがGT500・GT300となります。
それまでGT1クラスにポルシェを投入していた名門タイサンが、満を持してGT300に乗り込んできました。
しかもそのマシンはポルシェ本社がタイサンのために試作したプロトタイプだったのです。
前年にGT1クラスを走った993GT2をベースとして、6連スロットル搭載の3.8リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンに換装(通常のGT2はターボ仕様)。
これは後年になって発売される993RSRに酷似したスペックであり、事実上のプロトタイプであると言えます。
鈴木恵一/新田守男 組の駆るタイサン スターカード RSRはシーズンを通して他車を圧倒。
文句無しのシリーズチャンピオン獲得となりました。
1997年 RS☆R Silvia
レーシングプロジェクトバンドウのJGTC参戦初年度となった1997年。
参戦台数が大幅に増加してきたGT300クラスにS14型シルビアを投入しました。
織戸学/福山英朗 組が駆るRS☆Rシルビアは開幕戦でいきなり優勝し、その後も5連続表彰台を獲得。
対してライバルであるタイサンスターカードRSR(前年度チャンピオン)も2勝を挙げており、シーズン終盤にかけて猛追します。
お互いに100Kg近いウェイトハンデを積載した状態で臨んだ最終戦、タイサンが2位表彰台を獲得して見事チャンピオン・・・かと思われましたが、なんと1点差でシルビアが逃げ切りシリーズチャンピオンを獲得しました!
このあたりから日本車優勢の時代がやってきます。
1998年 Tsuchiya MR-2
1996年からMR-2で参戦を続けていた土屋エンジニアリング。
3年目となる1998年はマシンの熟成が進み、大躍進を遂げます。
ドライバーは超ベテラン鈴木恵一選手と新進気鋭のサラブレッド舘信吾選手のコンビ。
エンジンは市販車同様に2リッター直列4気筒の3Sターボ。
開幕戦で初優勝を飾ると、開催された6戦中5勝を挙げる激速ぶりを発揮しました。
手が付けられない速さというのは、きっとこういう事を指すのではないでしょうか。
他の国産勢も力を付けてきた中、なんと2位にダブルスコアを付けてしまう圧倒的な展開でシリーズチャンピオンを獲得!
1999年 Momocorse A’pex MR-2
1999年のチャンピオンもなんとMR-2!
しかも前年チャンピオンの土屋エンジニアリングの手による車両です。
新型S15シルビアが3勝を挙げて速さを見せつけましたが、MR-2もコンスタントにポイントを稼いで食らいつく展開となり、決着は最終戦までもつれ込みました。
レース後半にブレーキトラブルが発生したザナヴィARTAシルビアを後目に、新田守男/高木真一 組のMR-2が3位表彰台を獲得。
これにより新田守男選手が1ポイント差で2位をかわし、MR-2に2年連続シリーズチャンピオンをもたらしました。
10年続いたJGTCを5年ほど振り返ってみました。
次のページでは2000年以降のマシン、GT400と言われたあのマシンも登場します!