2012年に車両規則の統一契約が締結されてから7年、ついに富士スピードウェイでDTM車両とSUPER GT車両によるレースが開催されます。この歴史的第一歩を見逃さないためにも、注目ポイントをご紹介します。
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そもそもDTMとは?
DTM(ドイツツーリングカー選手権)は、1984年にドイツで誕生したツーリングカーレースです。
中断されていた期間はあるものの、今年で33年目となるこのレースには、ドイツメーカー御三家であるBMW、アウディ、メルセデス・ベンツを中心に、オペルやアルファロメオ、アストンマーティンなど、ヨーロッパの様々なメーカーが参加してきました。
そして2019年シーズンも、BMW、アウディ、アストンマーチンの3メーカーが出場しており、10月6日にホッケンハイムリンクで最終戦を終えています。
レースの形式は、土日それぞれで予選と決勝が行われ、両日ともにおおよそ50分程度のスプリントレースを展開。
ドライバー交代はなく、レギュレーションでタイヤ交換が義務付けられています。
また、オーバーテイクを増やすために、一時的にエンジンパワーが上がるPush to Passシステムや、F1にも採用されているDRSが採用されており、使用回数の制限内でいかにレース中、上手くシステムを使うことが出来るかが重要とされています。
車体とエンジンはクラス1規定を遵守し、タイヤはハンコックタイヤによるワンメイク。日本ではJスポーツで放送されている他、DTMの公式Youtubeチャンネルでも視聴可能です。
統一規定”クラス1”とは
2012年にDTMとSUPER GTの間で、部品のコストを下げること、開発競争による費用高騰を抑えること、参加出来るレースの選択肢を増やすことを目的に車体規格を統一することを決めました。
クラス1と呼ばれるこの統一規格は、エンジンから車体形状まで広い範囲で細かく指定があり、参加メーカーが開発できる範囲がとても狭いことが特徴です。
エンジンは、2リッター直列4気筒ターボエンジンを採用。
NRE、ニッポンレースエンジンと名付けられたこのエンジンは、町中を走っている車と同じような排気量ですが、600馬力以上は出ていると言われており、エンジンの開発領域が広いため、各メーカーはいかに効率よくガソリンを燃焼させてパワーと燃費を両立できるかに、注力しています。
車体は、東レカーボンマジック製のカーボンモノコックが全車共通となっており、そこにメーカー毎のオリジナルボディが被せられています。
とはいえベースの車体形状で大きな差が出ないように、横から見た際の形状が極力おなじになるような拡大や縮小がなされているようです。
DTM×SUPER GT特別交流戦の見どころ
車両規格が統一され、11月23,24日の2日間に渡り、ついに日本の富士スピードウェイでDTMとSUPER GTによる交流戦が開催されることになりました。
そこで、レース形式や注目ドライバーなどを紹介していきましょう。
レース形式
土曜日にレース1、日曜日にレース2が行われ、周回数は55分+1周。
タイヤ交換が義務付けられていますが、ドライバー交代はありません。
タイヤはハンコックタイヤのワンメイクというDTMのレース形式が踏襲されています。
SUPERGTでは通常、2人のドライバーがタッグを組んでいる為、日本側のチームはレース1とレース2でそれぞれ別のドライバーが参加する事になっています。
また、DTM車両特有の装備であるPush to PassとDRSは使用禁止。
そのため、ボディ下部のエアロ開発が許されているSUPER GT車両のほうが、パフォーマンスが高くなると推測されています。
一方で、採用されるハンコックタイヤはSUPER GTで使用されているタイヤとは特性が全く違うと言われており、その点では使い慣れているDTMが有利かもしれません。
このように、スーパーGT、DTMのお互いが長所を持っているため結果として、ある程度均衡した争いになるのではないでしょうか。
DTMチャンピオン レネ・ラスト
2019年DTMチャンピオンのレネ・ラストは、特別カラーのアウディRS5で日本に乗込みます。
レネは2017年にDTMへのフル参戦を開始すると、その年にチャンピオンを獲得。
ル・マン24時間の最高峰クラスであるLMP1やGT3カーによって行われるBLANCPAIN GTシリーズにもアウディから参戦経験のあるアウディマイスターです。
アウディからは他に、日本でもお馴染みのロイック・デュバルやブノワ・トレルイエ、2013年DTMチャンピオンのマイク・ロッケンフェラーの合計4台がエントリーしています。
不死鳥 アレッサンドロ・ザナルディ
両足切断の大事故から復活したアレッサンドロ・ザナルディが、日本にやってきます。
アメリカのフォーミュラーレースCARTで圧倒的な速さを見せてチャンピオンを獲得し、F1にも41レース出場したことのある53歳の大ベテラン。
2001年にCARTでの大事故で一命を取りとめたものの、両足切断の重症を負ってしまいます。
しかし、レース復帰を諦めなかったザナルディはBMW協力の下、両手で操作できる特別車両で2003年のWTCCに復帰。
2008年には優勝も経験し、2010年からはハンドサイクルに転向。
ロンドン・パラリンピック、リオ・パラリンピックで金メダルを獲得し、東京パラリンピックにも出場予定です。
また、ハンドサイクルに転向後も、様々なレースへスポット参戦し、BMWの特別車両を操ってきました。
日本で走るのは2009年のWTCC以来となるため、10年ぶりに来日するザナルディの走りに注目です。
また、BMWからは小林可夢偉と、2014年,2016年のDTMチャンピオンであるBMWのエース、マルコ・ヴィットマンの合計3台が参戦します。
ラストランと噂される2019年SUPER GTチャンピオン
今シーズンの最終戦ツインリンクもてぎにて、劇的なレースを見せて見事チャンピオンを獲得したチーム・ル・マン。
脇阪寿一監督に、大嶋和也と山下健太という布陣でシーズン2勝を達成した同チームは来季、トヨタから別メーカーへの移籍、または撤退が噂されています。
また、新鋭気鋭の山下健太は、来季からはWECに専念しSUPER GTには参戦しないのではとの噂も。
そのため、この布陣で走行するのは、今回が最後になるかもしれません。
ラストランが噂されるチャンピオンチームが、DTMを相手にどのようなレースを見せるのか、注目です。
GT300人気チームHOPPY 86 MCラストラン
併催レースとして行われるauto sport Web Sprint Cupは、GT300チームから7台、SUZUKA 10 HOURESから2台、スーパー耐久シリーズから3台の合計12台が参加します。
通常では一緒にレースをすることがない3つのレースからチームが集まる点も注目ですが、最大の注目は今年で使用終了が決まっているマザーシャシーの2台です。
HOPPY 86 MCは2016年のGT300チャンピオンであり、少ない予算の中で知恵と経験を駆使した車両開発、そして勢いのある若手ドライバーの組み合わせで結果を残した、レースファンからの人気も高いチーム。
そんなHOPPY 86 MCですが、今シーズン限りで使用を終了することを発表。
来季は、GT3車両での参戦が決まっています。
また、埼玉トヨペットGreenBraveマークXも、ベース車両のマークXが生産中止となることから、来年以降は別の車両がベースになると言われています。
8月に開催されたSUPER GTフジ500マイルでは優勝を争うスピードを見せていたマークX、そして2016年のチャンピオンマシン86が有終の美を飾れるのか注目です。
まとめ
日本とドイツが手を組んだ、モータースポーツの歴史的な一歩とも言えるDTM×SUPER GT特別交流戦。
タイヤの使い方が鍵を握ると言われているこのレースで、日本勢が地元の意地を見せられるのか、タイヤの使い方を熟知するDTM勢が速さを見せるのか。
DTM勢もシミュレーターでしっかりと事前準備をしており、本気で勝ちに来ています。
さらに、日本勢も来年からは車両が一新されるため、これが最後となるレクサスLC500やMRのホンダNSXは意地でも勝ちたいと考えているはずです。
この土日は是非富士スピードウェイに足を運び、日独のプライドを懸けた熱い戦いを観戦してみてはいかがでしょうか。
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